EVH 5150 III 100S 6L6とは?名機サクッと解説

EVH 5150 III 100S 6L6は、Eddie Van Halen(エディ・ヴァン・ヘイレン)がFender社傘下のEVHブランドとともに開発した、100Wのオール真空管ギターアンプヘッドです。2007年に登場したEVH 5150 IIIシリーズのなかでも、「100S(100 Stealth)」はエディ自身が実際のツアーで使用していたカスタム改造を反映した最上位モデルです。6L6パワー管(アメリカ製アンプに多く使われる真空管。締まった低音とクリアな高音が特徴)を4本搭載し、メタル・ハードロック・プログレッシブなど幅広いヘヴィ系ジャンルで圧倒的なハイゲインと粒立ちの良さを両立させます。一言で表すなら、「エディ・ヴァン・ヘイレンのツアー仕様がそのまま手に入る、現代最高峰のシグネイチャーアンプ」——Peavey 5150とは別物の、3チャンネル設計のEVH独自サウンドが詰まった一台です。

【注意】EVH 5150 III 100Sには6L6版EL34版の2種類があります。EL34(英国製アンプに多く使われる真空管。ミッドレンジが豊かでブリティッシュな音色が特徴)を搭載したEL34版は、より太くルーズな低音と甘いミッドが特徴です。本記事で扱うのは6L6パワー管を搭載したEVH 5150 III 100S 6L6のみです。

名機サクッと解説

「よく見るけど詳しいこと知らないなぁ…」
そんな名機を端的に知って、より楽しむための試みです。

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EVH 5150 III 100S 6L6の主な特徴とスペック

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項目仕様
メーカーEVH(Fender社傘下・アメリカ)
発売年2007年(EVH 5150 IIIとして)。100S Stealthモデルはエディのツアー改造を反映した後継モデル
出力100W RMS
パワー管6L6(アメリカ製アンプに多く使われる真空管。締まった低音とクリアな高音が特徴)×4
プリ管12AX7(プリアンプ用の真空管の一種。音色や歪みキャラクターの主な決め手となる)×8
チャンネル数3(Green: クリーン / Blue: クランチ / Red: リード)
各チャンネルのコントロールGain、Low、Mid、High、Volume、Presence(超高域)がチャンネルごとに独立。リアパネルにResonance(低域の応答を微調整)が共通
整流方式ソリッドステート整流(固体素子による整流。タイトで素早いレスポンスを実現)
インピーダンス出力4Ω / 8Ω / 16Ω 切替対応
その他バイアス調整ポート、エフェクトループ、ダイレクトアウト、4ボタンフットスイッチ付属
形状ヘッドアンプ(スピーカーキャビネット別売り)。Stealth(ステルス)仕様の黒い外観

100Sの「S」はStealth(ステルス)を意味し、標準の100Wモデルよりもエディのツアー向けカスタム仕様が反映されています。Greenチャンネル(クリーン)は清澄でわずかにコンプレッションがかかった音色、Blueチャンネル(クランチ)は増強されたゲインと低〜中域の明確さ、Redチャンネル(リード)はさらにゲインが増し、Lowコントロールの可変範囲が拡大されてソロ向けの歪みがより引き出しやすくなっています。リアパネルのResonanceノブで低域の量感と締まりを細かく調整できる点も、ライブやスタジオでの音作りに役立つ特徴です。

EVH 5150 III 100S 6L6に関するエピソード

EVH 5150 IIIは、2004年にEddie Van HalenがPeavey社との契約を終了したのち、Fender社のスコッツデール工場で新たに開発されました。エディは回路設計から完成品の検証まで一貫して関与し、2007年NAMMショーで発表されました。従来のPeavey 5150とは無関係の、シャーシ・トランス・回路すべてを一新した完全新設計のアンプです。

品質検証において、エディが行った「クラッシュテスト」は伝説的です。発売承認前の数日間、ギターをアンプに接続した状態で全コントロールを最大にし、フィードバックループを5150スタジオ中に鳴り響かせたまま放置しました。最悪の使用状況に耐えられるか実証するためで、共同開発者のMatt Bruckは当初火災を心配したといいます。しかしアンプは問題なく動作し、エディの設計への確信が裏付けられました。

Eddie Van Halen(Van Halen)は、EVH 5150 IIIの開発者その人であり、2007年以降のツアーと2012年のアルバム「A Different Kind of Truth」のレコーディング・ライブで5150 IIIを使用しました。100Sモデルは、まさに彼が最後期にツアーで使っていた設定を再現したものです。クリーンからクランチ、リードまで3チャンネルを自在に使い分け、タッピングやフレーズの粒立ちを際立たせるサウンドを生み出しました。

Wolfgang Van Halen(Mammoth WVH)は、父エディのEVH 5150 III 6L6版を継続して使用しています。Premier Guitarのリグランダウンなどで確認でき、5150 IIIをベースにしたセットアップで、Mammoth WVHのハードロック・メタルサウンドを構築しています。父の遺した機材とサウンド哲学を引き継いだ象徴的な存在です。

EVH 5150 III 100S 6L6と共に使用される機材

EVH 5150 III 100S 6L6と共に使用されるキャビネット

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キャビネット名搭載スピーカー定番とされる理由
EVH 5150 III 4×12 ストレートキャビネットCelestion G12 EVH 20W(EVH専用設計のスピーカー)×45150 IIIヘッドの純正キャビネット。G12 EVHの明るいトップエンドと低域の張り出しが5150 IIIのサウンドと一体化し、「あの音」を再現する際の直球の選択肢
EVH 5150 III 2×12キャビネットCelestion G12H 30W Anniversary(EVH専用バリエーション)×250Wヘッドや小規模ライブ向けのコンパクトな純正ペアリング。同じG12H系の音色傾向を保ちながら、軽量で運びやすい
Mesa/Boogie Rectifier 4×12キャビネットCelestion Vintage 30×4多くのメタルプレイヤーが5150 IIIとMesaキャビを組み合わせる。重厚なlow-midが加わり、5150 IIIの攻撃的な歪みが一段と迫力を増す定番の組み合わせ

EVH 5150 III 100S 6L6と共に使用されるエフェクター

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エフェクター名役割定番とされる理由
Ibanez Tube Screamer(TS808 / TS9)ブースター(アンプの前段で信号を軽く歪ませて押し上げる)5150 IIIのRedチャンネルは単体でも十分タイトな低音を出すが、Tube Screamerのミッドブーストを加えることで「音の芯がさらに締まり、ミックスに埋もれにくい」モダンメタルトーンが得られる。ユーザーフォーラムでも定番セッティングとして推奨される
Boss NS-2 / ISP Decimator(ノイズゲート)ハイゲイン時に発生するバックグラウンドノイズの除去100SのRedチャンネルをフルゲインで使うとヒスノイズが目立つため、演奏していない瞬間の雑音をカットするノイズゲートは実質的な必需品とされる
MXR EVH 5150 Overdrive5150系サウンドのペダル化・ブースターEVHブランドが5150 IIIの Leadチャンネルを参考に開発したオーバードライブペダル。アンプのクリーンチャンネルや他アンプに繋いで5150風の歪みを手軽に呼び出せる

EVH 5150 III 100S 6L6の兄弟機・派生機

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モデル名特徴・違い
EVH 5150 III 100W(標準モデル)100Sの発売前のオリジナル100Wモデル。100Sよりゲインとチャンネル特性が控えめ。クリーンチャンネルが100Sより「スタンダード」な仕上がり
EVH 5150 III 100S EL34パワー管を6L6からEL34に変更した版。6L6版より低域が太くルーズで、ミッドが甘くブリティッシュ寄りの音色。Blueチャンネルでの差が特に顕著
EVH 5150 III 50W 6L6出力を50Wに抑えた小型版。100Sと比較すると低音量でのヘッドルームが狭く、大音量では「100Sほど大きく太い低域が出ない」という声が多い。寝室練習や小規模ライブ向け
EVH 5150 III 50W EL3450W版のEL34搭載モデル。6L6版よりBlueチャンネルが太く甘い。50W×2種類のうち「ブリティッシュ寄り」を選びたい場合の選択肢
EVH 5150 III LBX-S(15W)ランチボックス型の15Wヘッド。アッテネーター搭載で小音量でも歪みを楽しめる。100Sの音色傾向をコンパクトに凝縮した「持ち運び版」

EVH 5150 III 100S 6L6のモデリング

モデリングとは、実機アンプの音色や挙動をデジタル技術で忠実に再現したもので、本物のアンプを持ち歩かなくてもそのサウンドを手軽に使えるようにした機能です。EVH 5150 III 100S 6L6は、主要なモデリング機器に収録されています。

EVH 5150 III 100S 6L6のQUAD CORTEXにおけるモデリング

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種別モデル名元となった実機
AmpEV101IIIS Blue 6L6 100WEVH® 5150 III® 100S® 6L6(Blueチャンネル)
AmpEV101IIIS Red 6L6 100WEVH® 5150 III® 100S® 6L6(Redチャンネル)
Cabinet412 EV Straight G12 00sEVH® Straight with Celestion® G12EVH drivers

EVH 5150 III 100S 6L6のFractal Audio Systemsにおけるモデリング

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種別モデル名元となった実機
Amp5153 100W Stealth GreenEVH 5150 III 100S(Green=クリーンチャンネル)
Amp5153 100W Stealth BlueEVH 5150 III 100S(Blue=クランチチャンネル)
Amp5153 100W Stealth RedEVH 5150 III 100S(Red=リードチャンネル)
Cabinet4×12 5153 StealthEVH 5150 III 4×12 Straight(Celestion G12 EVH 20W搭載)

Fractal Audioの5153 100W Stealthモデルは、EVH 5150 III 100Sに直接対応しています。ファームウェア23.03以降で導入され、標準の5153モデルに比べゲイン増強とDepth(Resonance相当)による低域調整が可能です。

EVH 5150 III 100S 6L6のKemperにおけるモデリング

Kemperはアンプをプロファイリング(実機をそのまま取り込む)する機器のため、収録内容はファクトリーリグや市販プロファイルパックに依存します。公式ファクトリーリグのリストにEVH 5150 III 100S 6L6に相当するリグ名は確認されていません。Rig Exchangeや商用プロファイルで、コミュニティ・サードパーティによるEVH 5150 IIIプロファイルが提供されています。

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種別モデル名(RIG NAME)元となった実機
Amp現行の公式ファクトリーリグには収録されていません

KemperのFactory Rigsはアンプとキャビネットを1つのリグにまとめた形式で収録しており、キャビネット単独のエントリは存在しません。EVH 5150 III 100S 6L6のトーンを手軽に使いたい場合は、Rig Exchangeや商用プロファイルパックの利用を検討してください。

EVH 5150 III 100S 6L6のLINE6 HELIXにおけるモデリング

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種別モデル名元となった実機
AmpEV Panama BlueEVH 5150III 100 [6L6] Blueチャンネル
AmpEV Panama RedEVH 5150III 100 [6L6] Redチャンネル
Cabinet4×12 Cali V304×12″ MESA/Boogie 4FB V30

LINE6 HELIXでは商標上の理由から「EV Panama」という独自名称を使用しています。EV Panama Blue・RedはともにEVH 5150III 100の6L6版をベースとしており、100S Stealth専用モデルは収録されていませんが、音色傾向は近いとされています。EVH 5150 III専用キャビネットは収録されていないため、相性の良いキャビネットを掲載しています。「4×12 Cali V30」はMesa/Boogie系4×12とVintage 30の組み合わせで、5150 IIIユーザーの間で広く使われる定番ペアリングです。

EVH 5150 III 100S 6L6の使用アーティスト

海外のアーティスト

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アーティスト名音楽スタイル使用時期・関連アルバム
Eddie Van Halen(Van Halen)ハードロック・シュレッド。超絶技巧のギターワークと革新的なサウンドメイクで世界中のギタリストに影響を与えたレジェンド2007年〜2020年 /「A Different Kind of Truth」(2012年)のレコーディング・ツアーでEVH 5150 IIIを使用。100Sは彼のツアー仕様を反映したモデル
Wolfgang Van Halen(Mammoth WVH)ハードロック・メタル。父エディの遺志を継ぎ、多様な楽器をこなすマルチプレイヤーMammoth WVHのレコーディング・ライブでEVH 5150 III 6L6版をメインアンプとして使用(Premier Guitarリグランダウン等で確認)

日本のアーティスト

EVH 5150 IIIは国内のスタジオやメタル・ハードロックシーンで広く認知されています。ただし、EVH 5150 III 100S 6L6をメインアンプとして確認できる著名な邦楽アーティストについては、現時点で信頼できる情報源からの裏付けが取れていないため、ここでは記載を省略します。

EVH 5150 III 100S 6L6の特徴と注意点

特徴

  • 3チャンネルすべてが実用的で高品位:Green(クリーン)は清澄でわずかにコンプがかかった音色、Blue(クランチ)はリズムに適したゲインと低〜中域の明確さ、Red(リード)はフルボリュームのハイゲインまで一貫して扱いやすい。Peavey 5150のRhythmチャンネルが「クリーンとして使いにくい」と指摘されていたのに対し、5150 IIIはクリーンから歪みまで汎用性が高いと評価される
  • Tube Screamerなしでも十分タイトな低音:フォーラムでは「5150 IIIは単体で低音が締まっており、TSなしでもモダンメタルに使える」という声が多数あります。Peavey 5150ほどブースターに依存しない設計です。一方、TSを併用するとさらに芯が締まり、ミックスに埋もれにくいトーンが得られます
  • 100Sならではのゲイン増強と低域調整:Blue・Redチャンネルのゲインが標準モデルより増強され、RedチャンネルのLowコントロールの可変範囲も拡大。リアパネルのResonanceで低域の量感と締まりを細かく調整できるため、会場やキャビネットに合わせた音作りがしやすい
  • スタジオ録音での映えの良さ:「マイクを通すと驚くほど整って聴こえる」「ミックスに埋め込みやすい」というプロデューサーやエンジニアの声がフォーラムで見られます。モダンメタル・ハードロックのスタジオ標準機として人気が高い

注意点

  • ハイゲイン時のノイズが多い:Redチャンネルをフルゲインで使うと、演奏していない間の「シャー」というヒスノイズが目立つという報告がrig-talk等に多く見られます。ノイズゲートの導入は実質的な必需品と考えておくべきです
  • ストックJJ管は「こもり気味」との評判:フォーラムでは「純正のJJ管だと音がこもって聞こえる。NOS( New Old Stock=製造済み在庫のヴィンテージ管)に変えると劇的に良くなる」という声が繰り返し登場します。音に満足できない場合は真空管の交換を検討する価値があります
  • 100Wゆえの音量と重量:「巨大で重いヘッド」「小音量では本領を発揮しにくい」という指摘があります。寝室練習や小規模会場では50W版やLBX-Sの検討も有効です
  • 「Peavey 5150」「EVH 5150 III」の混同に注意:中古市場や楽器店で「5150」と書かれていても、Peavey製(2チャンネル、1992年〜2004年)とEVH製(3チャンネル、2007年〜)はまったく別のアンプです。購入・試奏の際はメーカー名とチャンネル数を必ず確認してください

まとめ

EVH 5150 III 100S 6L6は、Eddie Van Halenのツアー仕様をそのまま凝縮した、3チャンネルすべてが実用的で高品位なハイゲインアンプです。6L6パワー管による締まった低音と粒立ちの良さ、100Sならではのゲイン増強とResonanceによる低域調整、そしてクリーンからリードまで一貫して使いやすい設計——これらはいずれも現代のメタル・ハードロックプレイヤーにとって色褪せない魅力となっています。

「Eddie Van HalenやWolfgangのようなハイゲインを追求したい」「3チャンネルでクリーンから歪みまで一本でカバーしたい」「Tube Screamerなしでもタイトなメタルトーンが欲しい」という方には特におすすめです。実機は約2,600ドル(日本国内の実売は要確認)で入手可能であり、QUAD CORTEX・Fractal Audio・LINE6 HELIXにも高品位なモデリングが収録されています。ぜひその「エディのツアーサウンド」を、実機またはモデリングで体験してみてください。

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この記事を書いた人

趣味はギター、カメラ、料理。
好きなものはメタルコア、ビール、CAPCOM、FROMSOFTWARE。

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