EVH 5150 III 100S EL34とは?名機サクッと解説

EVH 5150 III 100S EL34は、Eddie Van Halen(エディ・ヴァン・ヘイレン)がFender社傘下のEVHブランドとともに開発した、100Wのオール真空管ギターアンプヘッドです。2007年に登場したEVH 5150 IIIシリーズのなかでも、「100S(100 Stealth)」はエディ自身が実際のツアーで使用していたカスタム改造を反映した最上位モデルで、EL34パワー管(英国製アンプに多く使われる真空管。ミッドレンジが豊かでブリティッシュな音色が特徴)を4本搭載したバージョンです。6L6版に比べて低域が太くルーズで、ミッドが甘く艶やかなサステインが際立つ音色が特徴であり、メタル・ハードロック・クラシックロックなど幅広いヘヴィ系ジャンルで「ブリティッシュ寄りの5150サウンド」を求めるプレイヤーに人気があります。一言で表すなら、「Marshall的や甘さと5150の攻撃性を融合させた、EL34ならではの艶やかなハイゲインアンプ」——6L6版とは異なる、温かみとサステインを重視したもう一つの100Sです。

【注意】EVH 5150 III 100Sには6L6版EL34版の2種類があります。6L6(アメリカ製アンプに多く使われる真空管。締まった低音とクリアな高音が特徴)を搭載した6L6版は、よりタイトで粒立ちの良い音色が特徴です。本記事で扱うのはEL34パワー管を搭載したEVH 5150 III 100S EL34のみです。

名機サクッと解説

「よく見るけど詳しいこと知らないなぁ…」
そんな名機を端的に知って、より楽しむための試みです。

CONTENTS

EVH 5150 III 100S EL34の主な特徴とスペック

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項目仕様
メーカーEVH(Fender社傘下・アメリカ)
発売年EVH 5150 IIIとして2007年。100S Stealthモデルはエディのツアー改造を反映した後継モデル。EL34版は6L6版と並行して展開
出力100W RMS
パワー管EL34(英国製アンプに多く使われる真空管。ミッドレンジが豊かでブリティッシュな音色が特徴)×4
プリ管12AX7(プリアンプ用の真空管の一種。音色や歪みキャラクターの主な決め手となる)×8
チャンネル数3(Green: クリーン / Blue: クランチ / Red: リード)
各チャンネルのコントロールGain、Low、Mid、High、Volume、Presence(超高域)がチャンネルごとに独立。リアパネルにResonance(低域の応答を微調整)が共通
整流方式ソリッドステート整流(固体素子による整流。タイトで素早いレスポンスを実現)
インピーダンス出力4Ω / 8Ω / 16Ω 切替対応
その他バイアス調整ポート、エフェクトループ、ダイレクトアウト、4ボタンフットスイッチ付属
形状ヘッドアンプ(スピーカーキャビネット別売り)。Stealth(ステルス)仕様の黒い外観

100Sの「S」はStealth(ステルス)を意味し、標準の100Wモデルよりもエディのツアー向けカスタム仕様が反映されています。EL34版は6L6版と同じ3チャンネル構成ながら、パワー管の特性により低域が太くルーズになり、ミッドが甘く艶やかなサステインが加わります。Greenチャンネル(クリーン)は清澄で温かみのある音色、Blueチャンネル(クランチ)ではEL34の特性が特に顕著に現れ、ブリティッシュ寄りの太いクランチが得られます。Redチャンネル(リード)はハイゲインながら、6L6版よりもオーバートーンが豊かで「歌う」リードトーンが特徴です。

EVH 5150 III 100S EL34に関するエピソード

EVH 5150 III EL34版の開発には、エディ自身の強い意向が反映されています。エディは若き日に使用した1968年製Marshall Super Lead(EL34搭載)のトーンが、Van Halenの最初の6枚のアルバムにおける伝説のサウンドの核であったことを熟知していました。Guitar Aficionadoのインタビュー(2017年)で、エディは「作り上げたのは、私がこれまでプレイした中で最高のEL34アンプだ」「EL34のオーバートーンとアタックは、他の何物によっても再現できない」と語り、EL34の音色に対する確信を示しました。

Jason Hook(Five Finger Death Punch)は、2018年時点でEVH 5150IIIS EL34をライブのメインアンプとして採用したことで知られています。複数の競合アンプを比較したうえで選定し、「素晴らしく分厚く、リッチなサウンド」「望ましいハーモニクスとタイトな低域、そして優れたクラリティ」「最高のクリーンチャンネルのひとつ」と評価しています。5FDPの重厚なメタルサウンドにおいて、EL34版の太いミッドと艶やかなサステインがフィットしている証左です。

Dave Davidson(Revocation)は、EVH 5150 III 50W EL34をメインアンプとして使用しています。Rig Rundownで「本当に気に入っている音じゃなければ使わない」と述べ、Redチャンネルをリフとソロの両方で愛用していることが確認できます。テクニカルメタル・デスメタルにおいて、EL34版の粒立ちとミッドの明瞭さが複雑なフレーズに適していると評価されています。

EVH 5150 III 100S EL34と共に使用される機材

EVH 5150 III 100S EL34と共に使用されるキャビネット

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キャビネット名搭載スピーカー定番とされる理由
EVH 5150 III 4×12 ストレートキャビネットCelestion G12 EVH 20W(EVH専用設計のスピーカー)×45150 IIIヘッドの純正キャビネット。G12 EVHの明るいトップエンドがEL34の甘いミッドと相性が良く、「あの音」を再現する際の直球の選択肢
EVH 5150 III 2×12キャビネットCelestion G12H 30W Anniversary(EVH専用バリエーション)×250Wヘッドや小規模ライブ向けのコンパクトな純正ペアリング。EL34版の温かみを保ちながら、軽量で運びやすい
Mesa/Boogie Rectifier 4×12キャビネットCelestion Vintage 30×4多くのメタルプレイヤーが5150 IIIとMesaキャビを組み合わせる。V30の重厚なlow-midがEL34の太いミッドと相乗効果を生み、迫力のある歪みを得られる定番の組み合わせ

EVH 5150 III 100S EL34と共に使用されるエフェクター

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エフェクター名役割定番とされる理由
Ibanez Tube Screamer(TS808 / TS9)ブースター(アンプの前段で信号を軽く歪ませて押し上げる)EL34版は6L6版より低域がルーズなため、Tube Screamerのミッドブーストで「芯を締める」用途に使われることが多い。モダンメタルでは定番セッティング
Boss NS-2 / ISP Decimator(ノイズゲート)ハイゲイン時に発生するバックグラウンドノイズの除去100SのRedチャンネルをフルゲインで使うとヒスノイズが目立つため、演奏していない瞬間の雑音をカットするノイズゲートは実質的な必需品とされる
MXR EVH 5150 Overdrive5150系サウンドのペダル化・ブースターEVHブランドが5150 IIIのLeadチャンネルを参考に開発したオーバードライブペダル。アンプのクリーンチャンネルや他アンプに繋いで5150風の歪みを手軽に呼び出せる

EVH 5150 III 100S EL34の兄弟機・派生機

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モデル名特徴・違い
EVH 5150 III 100S 6L6パワー管をEL34から6L6に変更した版。EL34版より低域が締まり、ミッドがすっきりしたアメリカン寄りの音色。粒立ちが良く、モダンメタルでは6L6版を選ぶプレイヤーも多い
EVH 5150 III 100W(標準モデル)100Sの発売前のオリジナル100Wモデル。100Sよりゲインとチャンネル特性が控えめ
EVH 5150 III 50W EL34出力を50Wに抑えたEL34版。100Sと比較するとチャンネルごとの独立コントロールが限定的なモデルもある。寝室練習や小規模ライブ向け
EVH 5150 III 50W 6L650W版の6L6搭載モデル。EL34版より締まった低域が特徴
EVH 5150 III LBX-S(15W)ランチボックス型の15Wヘッド。アッテネーター搭載。100Sの音色傾向をコンパクトに凝縮した「持ち運び版」

EVH 5150 III 100S EL34のモデリング

モデリングとは、実機アンプの音色や挙動をデジタル技術で忠実に再現したもので、本物のアンプを持ち歩かなくてもそのサウンドを手軽に使えるようにした機能です。EVH 5150 III 100S EL34は、一部のモデリング機器に専用モデルとして収録されています。

EVH 5150 III 100S EL34のQUAD CORTEXにおけるモデリング

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種別モデル名元となった実機
AmpEV101IIIS Blue EL34 100WEVH® 5150 III®S EL34(Blueチャンネル)
AmpEV101IIIS Red EL34 100WEVH® 5150 III®S EL34(Redチャンネル)
AmpEV101IIIS EL34EVH® 5150 III®S EL34
Cabinet412 EV Straight G12 00sEVH® Straight with Celestion® G12EVH drivers

EVH 5150 III 100S EL34のFractal Audio Systemsにおけるモデリング

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種別モデル名元となった実機
Amp5153 100W Stealth Green / Blue / RedEVH 5150 III 100S(6L6版ベース。Tube TypeパラメータでEL34相当に変更可能)
Cabinet4×12 5153 StealthEVH 5150 III 4×12 Straight(Celestion G12 EVH 20W搭載)

Fractal Audioの5153 100W Stealthモデルは、実機のEVH 5150 III 100Sに相当します。専用のEL34 100Sモデルは収録されていませんが、アンプブロックのTube TypeパラメータをEL34に変更することで、太いミッドと艶やかなサステインをシミュレートできます。

EVH 5150 III 100S EL34のKemperにおけるモデリング

Kemperはアンプをプロファイリング(実機をそのまま取り込む)する機器のため、収録内容はファクトリーリグや市販プロファイルパックに依存します。公式ファクトリーリグには「EVH 5150 III」のリグが複数存在しますが、6L6版とEL34版が区別された名称では掲載されていません。Rig Exchangeや商用プロファイルで、コミュニティ・サードパーティによるEVH 5150 III EL34のプロファイルが提供されている場合があります。

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種別モデル名(RIG NAME)元となった実機
AmpEVH 5150 III(ファクトリーリグ。6L6版/EL34版の区別なし)EVH 5150 III

KemperのFactory Rigsはアンプとキャビネットを1つのリグにまとめた形式で収録しており、キャビネット単独のエントリは存在しません。EL34版のトーンを確実に得たい場合は、Rig Exchangeや商用プロファイルで「EL34」を明記したプロファイルを探すことをおすすめします。

EVH 5150 III 100S EL34のLINE6 HELIXにおけるモデリング

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種別モデル名元となった実機
AmpEV Panama BlueEVH 5150III 100 [6L6] Blueチャンネル
AmpEV Panama RedEVH 5150III 100 [6L6] Redチャンネル
Cabinet4×12 Cali V304×12″ MESA/Boogie 4FB V30

LINE6 HELIXでは商標上の理由から「EV Panama」という独自名称を使用しています。EV Panama Blue・RedはともにEVH 5150III 100の6L6版をベースとしており、EL34 100S専用モデルは収録されていません。EL34版の艶やかなサステインや太いミッドを再現したい場合は、EQやディレイで近似するか、QUAD CORTEXの利用を検討してください。EVH 5150 III専用キャビネットは収録されていないため、相性の良いキャビネットを掲載しています。「4×12 Cali V30」はMesa/Boogie系4×12とVintage 30の組み合わせで、5150 IIIユーザーの間で広く使われる定番ペアリングです。

EVH 5150 III 100S EL34の使用アーティスト

海外のアーティスト

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アーティスト名音楽スタイル使用時期・関連アルバム
Jason Hook(Five Finger Death Punch)メタル・ハードロック。重厚なリフとメロディックなリードが特徴2018年頃よりEVH 5150IIIS EL34をライブのメインアンプとして使用(EVH公式ブログのインタビューで確認)
Dave Davidson(Revocation)テクニカルデスメタル・スラッシュメタル。複雑なフレーズとプログレッシブな構成で知られるEVH 5150 III 50W EL34をメインアンプとして使用(Premier Guitar Rig Rundown等で確認)

日本のアーティスト

EVH 5150 IIIは国内のスタジオやメタル・ハードロックシーンで広く認知されています。ただし、EVH 5150 III 100S EL34をメインアンプとして確認できる著名な邦楽アーティストについては、現時点で信頼できる情報源からの裏付けが取れていないため、ここでは記載を省略します。

EVH 5150 III 100S EL34の特徴と注意点

特徴

  • EL34ならではの甘いミッドと艶やかなサステイン:6L6版に比べてピーク帯域が上がり、リッチで温かみのある音が出る。中高域が充実し、ハードロック向けの「気持ちの良い」トーンが得られる。フォーラムでは「EL34版はソロが歌う」「ミッドがクリーミーで深みがある」という声が繰り返し見られます
  • Blueチャンネルでの差が顕著:EL34版のBlueチャンネルは、6L6版より太く甘いクランチが特徴です。ブリティッシュ寄りの歪みを求めるプレイヤーには、6L6版よりEL34版のBlueが好まれる傾向があります
  • エディ自身が「最高のEL34アンプ」と評価:開発者であるエディ・ヴァン・ヘイレンが「これまでプレイした中で最高のEL34アンプ」と公言しており、EL34のオーバートーンとアタックの再現性に対する設計の確かさが窺えます
  • 3チャンネルすべてが実用的:100Sシリーズ共通で、Green(クリーン)からRed(リード)まで高品位に使い分け可能。Jason Hookは「最高のクリーンチャンネルのひとつ」と評価しています

注意点

  • 6L6版より低域がルーズになりやすい:EL34の特性上、低域が太く広がるため、「モダンメタルで求められるタイトな低音」には6L6版の方が適しているという声がフォーラムにあります。ダウンチューニングやタッピング多用時には、Tube Screamerでミッドブーストして芯を締めるセッティングが推奨されます
  • ハイゲイン時のノイズ:Redチャンネルをフルゲインで使うと、演奏していない間のヒスノイズが目立つという報告があります。ノイズゲートの導入は実質的な必需品です
  • 100Wゆえの音量と重量:「巨大で重いヘッド」「小音量では本領を発揮しにくい」という指摘は6L6版と同様です。寝室練習や小規模会場では50W版の検討も有効です
  • モデリング機器でのEL34版対応が限定的:QUAD CORTEXにはEL34専用モデルが収録されていますが、LINE6 HELIXは6L6版ベースのEV Panamaのみ。Fractal AudioではTube Typeパラメータでの近似が可能です。EL34版のトーンをモデリングで再現したい場合は、機器の選択肢がやや限られます

まとめ

EVH 5150 III 100S EL34は、Eddie Van Halenが「最高のEL34アンプ」と称した、甘いミッドと艶やかなサステインが特徴のハイゲインアンプです。6L6版がタイトで粒立ち重視のモダンメタル向けであるのに対し、EL34版はブリティッシュ寄りの温かみと歌うようなリードトーンを追求したもう一つの選択肢です。

「Marshall的な甘さを5150に足したい」「Blueチャンネルで太く甘いクランチが欲しい」「ソロが歌う艶やかなリードトーンが欲しい」という方には特におすすめです。Jason HookやDave Davidsonのように、メタル・ハードロックの第一線で採用されている実績もあり、実機は約2,600ドル前後で入手可能です。QUAD CORTEXにはEL34専用の高品位モデリングが収録されているため、まずはモデリングでその「甘い5150」を体験してみてください。

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この記事を書いた人

趣味はギター、カメラ、料理。
好きなものはメタルコア、ビール、CAPCOM、FROMSOFTWARE。

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