Diezel VH4とは?名機サクッと解説

ドイツの職人が「自分のために作った」アンプが、気づけば世界中のプロフェッショナルたちを虜にしていた。それがDiezel VH4(ディーゼル ブイエイチフォー)の物語です。1994年に登場したこの100Wヘッドアンプは、クリーンから超高ゲインまでをカバーする4チャンネル設計で、ハードロックやメタルはもちろん、スタジオ録音からライブパフォーマンスまで幅広い場面で活躍します。「1台で4台分の表情を持つアンプ」とも言われるほど懐が深く、一度そのサウンドを体験したギタリストがリピーターになりやすいことでも有名です。

名機サクッと解説

「よく見るけど詳しいこと知らないなぁ…」
そんな名機を端的に知って、より楽しむための試みです。

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Diezel VH4の主な特徴とスペック

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項目内容
出力100W
チャンネル数4チャンネル独立(Clean / Crunch / Mega / Lead)
パワー管(真空管の種類のひとつで、アンプの出力を担う部分)KT77(ビーム四極管。EL34と互換性があるが、よりタイトでクリアなサウンドが特徴)× 4本
プリ管(信号を増幅・音色を形成する部分)12AX7 × 7本
エフェクトループシリアルループ、パラレルループ、チャンネルインサート × 4(各チャンネル専用)
EQチャンネルごとにGain / Bass / Middle / Treble、グローバルでPresence(4kHz)/ Deep(90Hz)
MIDIコントロールMIDI In / Thru対応。フットスイッチは別売
パワー管保護機能各パワー管に個別のヒューズとフォルトインジケーター(故障検知ランプ)
サイズ74 × 28 × 30 cm
重量21 kg
発売年1994年(現在も同設計で生産継続中)
製造国ドイツ(バート・シュテーベン)

各チャンネルの性格はそれぞれ独立しており、まるで4台の異なるアンプを使い分けるような感覚で切り替えができます。Cleanチャンネルは低ゲインで「Diezelスパークル」と呼ばれる透明感のあるクリーントーンを出し、ゲインを上げるとHiwattに似たロバストなサウンドに変化します。CrunchチャンネルはヴィンテージクリーンからAC/DC的なリズムサウンドまで対応。MegaチャンネルはDiezel独自のタイトでヘヴィなリズムサウンドを担い、Leadチャンネルはさらに高ゲイン・高コンプレッションで伸びやかなリードサウンドを作り出します。

Diezel VH4に関するエピソード

VH4の誕生は1994年、ドイツ・バート・シュテーベンでギタリストでもあるPeter Diezel(ペーター・ディーゼル)の「純粋な不満」から始まりました。当時市場に出回っていたアンプのサウンドに納得できなかった彼は、完全に「自分のために」理想のアンプを設計します。試作品をスタジオに持ち込むと、周囲のギタリストたちが次々に「自分にも作ってくれ」と頼み込み、気がつけば量産せざるを得ない状況になっていました。「最初は一台だけ作るつもりだった」というエピソードは、Diezelのウェブサイトにも記されています。

VH4を語るうえで外せないのが、ToolのギタリストAdam Jonesです。彼は「ブルーフェイス」と呼ばれる初期型のDiezel VH4を長年のメインアンプとして愛用しており、Toolの代名詞でもあるあの重厚でオルタナティブな音壁は、VH4のMegaチャンネル(Channel 3)が核になっています。彼のセッティングでは、Bassを限界近くまで上げ、MidsをフルにしてTrebleを中程度に設定するという独特のアプローチが知られており、まるでコンクリートの壁が揺れるような低音の存在感を生み出しています。

Billy Corgan(Smashing Pumpkins)は1999年〜2000年頃にVH4を入手し、バンド復帰後の2007年アルバム『Zeitgeist』(ツァイトガイスト)に使用。後にそのアンプヘッドを手に入れた人物への手紙で「このヘッドはZeitgeistのアルバム用アンプだ」と直接確認しています。同アルバムの「Doomsday Clock」や「Tarantula」などで聴けるあの分厚く攻撃的なギターサウンドの背景には、VH4の存在があります。

Metallicaのフロントマン、James Hetfieldもツアーリグにまず複数台のVH4を組み込み、DiezelのサービスエンジニアによればMegaチャンネルとLeadチャンネルを主に使用していることが確認されています。Matthew Bellamy(Muse)はVH4をライブリグの核として取り入れ、Glastonbury 2016などの大型公演では複数台のDiezelヘッドをステージに並べていたことが記録されています。

Diezel VH4と共に使用される機材

Diezel VH4と共に使用されるキャビネット

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キャビネット名搭載スピーカー定番とされる理由
Diezel 412RV(4×12インチリアロード型キャビネット)Celestion Vintage 30VH4に最もよく合う「純正ペア」として知られる。リアロード構造がミッドレンジを豊かにし、VH4の中域の密度を最大限に引き出すとフォーラムで繰り返し言及されている
Diezel 412F(4×12インチフロントロード型キャビネット)Celestion G12K-100より中立的でブライトなサウンド。V30と比較してクリーンチャンネルに有利で、レンジの広い録音環境で選ばれることが多い
Marshall 1960A/B(マーシャル 1960シリーズ)Celestion Vintage 30 / G12T-75Adam Jonesが実際にVH4と組み合わせているキャビネットのひとつ。British系の鳴りがVH4のジャーマンサウンドと対比的に混ざり合い、独特の奥行きが生まれる
Mesa/Boogie Rectifier 4×12Celestion Vintage 30Adam Jonesのリグで確認されているもう一つの組み合わせ。Rectifierキャビの重低音がVH4の締まったローエンドと融合し、Toolサウンドのダークな土台を作り出す

Diezel VH4と共に使用されるエフェクター

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エフェクター名役割定番とされる理由
ISP Decimator(アイエスピー デシメーター)/ ノイズゲート全般ノイズ除去VH4はハイゲイン時のノイズが少ないアンプとして評価されているが、チャンネルインサートにノイズゲートを刺し、チャンネルごとに独立してノイズ管理をするのがプロの定番。特にMega/Leadチャンネルで多用される
MXR Micro Amp / クリーンブースター全般ゲインブースト・ソロ音量アップAdam Jonesのリグでも確認。VH4はペダルへの反応が良く、クリーンブーストでチャンネルの個性をさらに引き出せる。ブーストを前段に置くことでゲイン感よりも「押し出し感」を増幅できる
グラフィックEQ / パラメトリックEQ(DOD、MXRなど)チャンネルごとの音色微調整チャンネルインサートに挿すことでチャンネルごとに異なるEQカーブを設定可能。特定のレコーディングシーンやライブ会場に合わせたフレキシブルな音作りに活用される
Cry Baby / ワウペダル全般音域強調・表現Adam Jonesをはじめ多くのVH4ユーザーがグローバルループに挿入。VH4の高い解像度がワウの「しゃべり感」を際立たせる
BOSS DD-3 / テープエコー系ディレイ空間演出・厚み付けVH4のシリアルループまたはグローバルループに接続。VH4自体がタイトな乾いた音作りのため、適度なディレイで空間的な奥行きを補うのが定石とされている

Diezel VH4の兄弟機・派生機

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モデル名主な違いどんな人向けか
Diezel Herbert(ハーバート)3チャンネル・180W出力・KT77 × 6本。VH4よりさらに高いゲイン量を持ち、メタル特化寄りのキャラクター。横山健(Ken Yokoyama)など日本のロック/パンクギタリストにも支持されているより激しいハイゲインサウンドが欲しい人、よりモダンメタル寄りな音を求める人
Diezel VH4S(ブイエイチフォー エス)VH4と同じ4チャンネルプリアンプを持ちながら、パワーアンプがステレオ2系統(各45〜80W)に分割された派生機。ステレオエフェクターを最大限に活かした立体的なサウンドメイクが可能ステレオリグを組みたい人、空間系エフェクターを多用するスタジオユーザー
Diezel VHX(ブイエイチエックス)VH4の回路を継承しながらも、デジタルエフェクターやアッテネーター(音量を下げながら真空管を適切に動作させる機能)を内蔵した現代版。「ルームでの小音量演奏にも対応」というVH4にはない利便性を持つ自宅練習や小規模スタジオでもDiezelサウンドを求める人、オールインワンリグを組みたい人
Diezel VH2(ブイエイチツー)2チャンネル構成のコンパクト版。VH4のChannel 3(Mega)とChannel 4(Lead)の要素を1台に凝縮した設計で、シンプルにハイゲインチャンネルだけを使いたいユーザー向けリグをシンプルに保ちたいハイゲインプレイヤー

Diezel VH4のモデリング

モデリングとは、実機アンプの音色や挙動をデジタル技術で忠実に再現したもので、本物のアンプを持ち歩かなくてもそのサウンドを手軽に使えるようにした機能です。以下では主要なモデリング機器におけるDiezel VH4の収録状況を紹介します。

Diezel VH4のQUAD CORTEXにおけるモデリング

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種別モデル名元となった実機
AmpD-Cell H4 Ch1Diezel VH4(Channel 1 / Clean)
AmpD-Cell H4 Ch2Diezel VH4(Channel 2 / Crunch)
AmpD-Cell H4 Ch3Diezel VH4(Channel 3 / Mega)
AmpD-Cell H4 Ch4Diezel VH4(Channel 4 / Lead)
Cabinet412 D-Cell Front V30 ’04Diezel 4×12フロントロード(Celestion Vintage 30搭載)

Diezel VH4のFractal Audio Systemsにおけるモデリング

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種別モデル名元となった実機
AmpDIZZY V4 BLUE 2Diezel VH4(ブルーフェイス / Channel 2 Crunch)
AmpDIZZY V4 BLUE 3Diezel VH4(ブルーフェイス / Channel 3 Mega)
AmpDIZZY V4 BLUE 4Diezel VH4(ブルーフェイス / Channel 4 Lead)
AmpDIZZY V4 SILVER 2Diezel VH4(シルバーフェイス / Channel 2 Crunch)
AmpDIZZY V4 SILVER 3Diezel VH4(シルバーフェイス / Channel 3 Mega)
AmpDIZZY V4 SILVER 4Diezel VH4(シルバーフェイス / Channel 4 Lead)
AmpDAS METALLDiezel VH4(回路図ベースの旧モデル)
Cabinet4×12 Dizzy V30 57 A1 MLDiezel 4×12フロントロード(Celestion Vintage 30搭載)
Cabinet4×12 Dizzy K100 57 B1 MLDiezel 4×12フロントロード(Celestion G12K-100搭載)

Diezel VH4のKemperにおけるモデリング

Kemperはアンプをデジタルでモデリングするのではなく、実機の音をプロファイリング(実際に収録)する機器です。アンプとキャビネットを1つのリグ(RIG)にまとめた形式で収録されており、キャビネット単独のエントリは存在しません。

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種別モデル名元となった実機
AmpDiezel VH 4Diezel VH4(Diezel 4×12キャビネットと組み合わせたリグ)
AmpTAF – Diesel VH 4 Ch 3Diezel VH4(The Amp Factoryによるプロファイル / Channel 3 Mega)

Diezel VH4のLINE6 HELIXにおけるモデリング

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種別モデル名元となった実機
AmpDas Benzin MegaDiezel VH4(Megaチャンネル)
AmpDas Benzin LeadDiezel VH4(Leadチャンネル)
Cabinet4×12 XXL V30ENGL XXL 4×12(Celestion Vintage 30搭載)

Diezel VH4専用キャビネットはLINE6 HELIXに収録されていないため、フォーラムでの調査に基づき相性の良いキャビネットを掲載しています。「4×12 XXL V30」はドイツ系ハイゲインアンプ(ENGL)のキャビネットで、Das Benzinとのペアとしてコミュニティで広く推奨されています。

Diezel VH4の使用アーティスト

海外のアーティスト

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アーティスト名音楽スタイル使用時期・アルバム等
Adam Jones(Tool)プログレッシブ・メタル。複雑なリズムと重厚なリフを組み合わせた独自のスタイル1990年代〜現在にわたり初期型「ブルーフェイスVH4」をメインアンプとして継続使用。Toolの代表作『Lateralus』(2001年)や『10,000 Days』(2006年)などのサウンドに直接貢献している
James Hetfield(Metallica)ヘヴィメタル。タイトで攻撃的なリズムギターとパワフルなリフが特徴2000年代のツアーリグにVH4を複数台組み込んで使用。DiezelのサービスエンジニアによりMegaチャンネルとLeadチャンネルの活用が確認されている
Billy Corgan(The Smashing Pumpkins)オルタナティブロック。重厚に多重録音されたギターサウンドが特徴1999〜2000年頃にVH4を入手し、2007年アルバム『Zeitgeist』に使用。Corganが「これはZeitgeistのアルバムヘッドだ」と自ら確認している
Matthew Bellamy(Muse)プログレッシブ・ロック/アリーナロック。壮大なスケールとテクニカルなプレイが共存するスタイルライブリグのコアとして長年使用。Glastonbury 2016など大型フェスに複数台のDiezelヘッドを投入。スタジオ録音ではVox AC30と組み合わせることも多い

Diezel VH4の特徴と注意点

特徴

  • 4チャンネル各独立インサートループ:チャンネルごとにエフェクターを挿入できるインサートループを4系統装備。たとえば「Megaチャンネルだけにノイズゲートを適用し、Cleanチャンネルにはリバーブを挿す」というプロ的な音の管理が1台で実現できる。これは同価格帯の競合アンプと比較しても突出した機能で、複雑なリグを組むプロが特に評価する点として繰り返し言及されている
  • タイトで彫刻的なハイゲインサウンド:MesaのRectifierシリーズがローエンドを豊かに膨らませるのに対し、VH4のハイゲインチャンネルはタイトに締まった低音と輪郭のはっきりした中域が特徴。「1音ずつ粒が見える」と表現されることが多く、ダウンチューニングや速いリフでも音が団子にならないとフォーラムで高く評価されている
  • ノイズが非常に少ない:ハイゲインアンプとしては異例なほどバックグラウンドノイズが少ない。Diezelは回路内に大きめのグリッドストッパー(ノイズ抑制部品)と板コンデンサーを配置することで帯域幅を絞り、ヒスノイズを抑えている。これはFractal Audioのエンジニアがフォーラムで技術的に解説しており、「Diezelは極めてフィルタリングの効いた設計」と説明されている
  • 独自の「Diezelスパークル」クリーン:Cleanチャンネルのサウンドは”スパークル”と”チャイム”という言葉で繰り返し表現される透明感があり、ハイゲインアンプのクリーンとしては別格と評価されている。Hiwattに似たロバストな太さも持ち、クリーン音を重視する録音エンジニアからも支持されている理由のひとつ

注意点

  • MIDIフットスイッチが付属しない:チャンネル切り替えはMIDI経由が前提の設計で、フットスイッチは標準付属していない。実際の運用にはDiezel Columbus MIDIスイッチャーや他社のMIDIコントローラーを別途購入する必要があり、ペダルボードのコスト・複雑さが増す。初心者には敷居が高い点としてフォーラムで繰り返し言及されている
  • 「好き嫌いが分かれる」アンプである:VH4は「一度好きになるとやめられないが、最初は冷たくてインスパイアされないと感じる」と評されることが多い。特にハムバッカーとの相性が前提になっており、シングルコイルや低出力ピックアップを使うと本来の魅力が伝わりにくい場合がある。フォーラムでは「VH4は付き合い方を知らないと化けない」という声が散見される
  • 生産ロットによる個体差・音の違い:VH4は30年以上にわたり製造されており、「ブルーフェイス(初期型)」「シルバーフェイス(中期型)」など複数のバージョンが存在する。同じVH4でも購入した時期によってゲイン特性やコンプレッション感が異なる場合があり、中古市場での購入時は年代確認が必要とされる。これはツアー機材を揃える際に同一バージョンを揃えるプロのあいだでも気にされる点

まとめ

Diezel VH4は「ハイゲインアンプの最高峰」と呼ばれながらも、実際には4チャンネルのオールラウンドプレイヤーです。ToolやMetallicaのような重厚なプログレッシブ・メタルを目指す人はもちろん、SpumpkinsやMuseのようにスタジオで幾重にもギターを重ねる録音志向のプレイヤーにも支持されてきた背景がそれを物語っています。チャンネルインサートを活用した精密な音作りや、ドイツ製ならではの職人的なビルドクオリティ、そして30年間変わらない設計継続という信頼感——これらすべてが揃うことで、VH4は「一生もの」を探しているギタリストの候補に挙がり続けています。もし試奏の機会があれば、まずMegaチャンネル(Channel 3)を弾いてみてください。あの「タイトでメキメキと締まる歪み」が自分のプレイにフィットすると感じたなら、きっと長い付き合いになるはずです。

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この記事を書いた人

趣味はギター、カメラ、料理。
好きなものはメタルコア、ビール、CAPCOM、FROMSOFTWARE。

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