
Mesa/Boogie JP-2C(メサ・ブギー ジェイピー・ツーシー)は、アメリカのアンプメーカーMesa/Boogieが2016年に発売したオール真空管ギターアンプです。プログレッシブ・メタルバンドDream Theaterのギタリスト、John Petrucciとの30年以上に及ぶ協力関係のもとで生まれた、Mesa/Boogie初の「生産数無制限」のシグネチャーモデルです。その設計の核心には、1980年代に高ゲイン界の聖杯と称された名機「Mark IIC+」の回路があり、Petrucciが長年の試行錯誤で求め続けた「あのサウンド」を現代の利便性と組み合わせた一台です。プログレッシブ・メタルやテクニカル・ロックを筆頭に、複雑なコードワークからニュアンス豊かなリードプレイまでを1台で完結させたいプレイヤーにとって理想的な選択肢であり、「ギターアンプの到達点」とも称される圧倒的な完成度が最大の魅力です。
「よく見るけど詳しいこと知らないなぁ…」
そんな名機を端的に知って、より楽しむための試みです。
Mesa/Boogie JP-2Cの主な特徴とスペック
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発売年 | 2016年(NAMM 2016にて発表) |
| 出力 | 60W または 100W(グローバルスイッチで切替。60W時は2本のパワー管を使用、100W時は4本全てを使用) |
| パワー管 | Mesa 6L6(真空管の種類のひとつ。アメリカンサウンドの代表格で、中低域に豊かさとパワーがある)× 4本 |
| プリアンプ管 | Mesa 12AX7 × 5本 |
| チャンネル数 | 3チャンネル / 5モード |
| チャンネル1 | Mark IIC+ Cleanモード(Mark IIC+のリズムチャンネルを踏襲したクリーン専用チャンネル) |
| チャンネル2・3 | Mark IIC+ Gain または Shredモード(各チャンネルにそれぞれ2モードを搭載) |
| Shredモード | チャンネル2・3に搭載された追加モード。ゲインの重なり方が変化し、より高密度のハーモニクス(音の倍音成分)が得られる。MIDIで切替可能 |
| Mid/Boostノブ | チャンネル1専用の特殊コントロール。1〜5の位置では通常のミッドレンジ・トーンコントロールとして機能し、5〜10の位置ではバリアブル・ゲインブースト(段階的な甘い倍音のオーバードライブ)として機能する。1つのノブで2つの役割を持つ独自設計 |
| グラフィックEQ | 独立した5バンド・グラフィックEQ × 2基(EQ1とEQ2)。各チャンネルへの割り当てや、フットスイッチ切替も可能。Mark Series初の2基搭載 |
| 整流方式 | シリコンダイオード整流(ソリッドステート固定。レスポンスが速くタイトなサウンド特性) |
| リバーブ | チャンネルごとに独立したコントロールを持つ、全真空管式ロングタンク・スプリングリバーブ(フットスイッチ対応) |
| エフェクトループ | フル・バッファードシリーズ・チューブFXループ(MIDI切替対応) |
| MIDI | チャンネル1・2・3、EQ1・EQ2、Shred、リバーブ、FXループを個別にMIDI制御可能。256プリセットロケーション搭載 |
| CabClone | 内蔵キャビネットシミュレーター兼ダイレクト・レコーディング出力。Closed Back、Open Back、Vintageの3種類のキャビネット・シミュレーションを選択可能。アンプ本体の負荷回路(ロードボックス)を内蔵しているため、スピーカーなしでの使用も可能 |
| スピーカー出力 | 16Ω × 1、8Ω × 1、4Ω × 2 |
| フットスイッチ | 3×2の6ボタン・フットスイッチ付属(チャンネル1・2・3、リバーブ、グラフィックEQ1・EQ2) |
| 冷却方式 | ファン冷却 |
| バイアス | メンテナンスフリーの固定バイアス(真空管交換時のバイアス調整が不要) |
| 重量 | 約18kg(40ポンド) |
| 寸法 | H 23.5cm × W 47.6cm × D 27.6cm |
| 製造 | カリフォルニア州ペタルマにてハンドワイアリング(手作業による配線)で製造 |
| ラインナップ | アンプヘッド、ラックマウントヘッド、1×12コンボ |
「JP-2C」という型番の「JP」はJohn Petrucciのイニシャル、「2C」はMark IIC+の「IIC+」から来ています。Mark IIC+を「ギターアンプの頂点」と信じてやまないPetrucciが、現代の機能と組み合わせてゼロから作り直したアンプ、という意味が込められています。整流方式がシリコンダイオード固定なのは、Petrucciが「常に速く正確なレスポンス」を求めた結果であり、Dual Rectifierのような「選択できる整流器によるサグ感(たわみ感)」は意図的に排除されています。
Mesa/Boogie JP-2Cに関するエピソード
John Petrucciとの縁は、彼がニューヨーク州ロングアイランドで10代を過ごしていた頃にさかのぼります。地元の音楽店を訪れた際、年上の尊敬するギタリストに「本当のギターアンプを試したいなら、Boogieを弾いてみろ」と言われ、初めてMesa/Boogieに触れた瞬間、「部屋の隅々まで魔法のような音で満たされた」と後に自ら語っています。その一音がPetrucciの「音の探求」の出発点となり、やがてDream Theaterのすべてのスタジオ・ライブアルバムに、何らかのMesa/Boogieアンプが使われ続けることになります。
JP-2Cの開発は、Petrucciが長年憧れ続けたMark IIC+の「完全な現代版リイシュー(復刻版)」を作るという目標から始まりました。Mark IIC+は1980年代に生産された伝説的なアンプですが、中古市場では法外な価格がつき、コンディションもまちまちで、現代のライブで使いこなすには機能面での限界もありました。Mesa/Boogieの創業者Randall SmithとPetrucciは、オリジナルのMark IIC+と全く同じ回路基板・トランスを使いながら、そこに「現代のプロが実戦で必要とするすべての機能」を追加することを決意します。「Holy Grail(聖杯)を超えた」とPetrucciが表現するほど、その結果に自信を持った一台が2016年のNAMMショーで発表されました。
2016年に発表・発売されたJP-2Cは、その年にリリースされたDream Theaterの34曲に及ぶ大作コンセプトアルバム『The Astonishing』のレコーディングに全編使用されました。Petrucciは「このアルバムは完全にJP-2Cだけで録音した」と明言しており、JP-2Cのデビュー作品として、そのサウンドの多彩さと完成度を世に示しています。クリーンから極限のハイゲインまでを1台でまかなっているにもかかわらず、アルバム全体を通して音のキャラクターに一貫性があることが、プロのレコーディングエンジニアからも高く評価されました。
Mesa/Boogie JP-2Cと共に使用される機材
Mesa/Boogie JP-2Cと共に使用されるキャビネット
| キャビネット名 | 搭載スピーカー | 定番の理由 |
|---|---|---|
| Mesa/Boogie Traditional 4×12(トラディショナル・ストレート) | Celestion Vintage 30(英国製70W仕様)× 4 | John Petrucci自身が長年愛用しているキャビネット。JP-2Cの設計者本人が選んだ組み合わせであり、Fractal AudioのCEO Cliff Chaseも「Petrucci V30 Mix」IRとして専用収録しているほど。ミッドレンジに密度があり、JP-2Cのハイゲインサウンドの輪郭をクリアに保つ。 |
| Mesa/Boogie Rectifier Standard 4×12 Slant(レクティファイアー・スタンダード・スラント) | Celestion Vintage 30 × 4 | Recto系の大型キャビネットで、サウンドの前方への飛びが良い。Angel VivaldiがJP-2Cと合わせて使用している組み合わせで、大規模なライブステージ向けの組み合わせとして定番。Traditionalよりもローミッドにボリュームがあるためヘビーなリフとの相性が良い。 |
Mesa/Boogie JP-2Cと共に使用されるエフェクター
| エフェクター名 | 役割 | 定番の理由 |
|---|---|---|
| Ibanez Tube Screamer TS9 / Maxon OD808(チューブスクリーマー系オーバードライブ) | フロントエンドブースト・低音域の整理 | JP-2Cの前身であるMark IIC+の頃から続く定番アプローチ。GainをゼロにしてVolumeを上げるだけで使うことで、低音域を整理しつつ中域に芯を加える。ハイゲインチャンネルのレスポンスがより締まり、速弾きやタイトなリフの粒立ちが向上する。 |
| TC Electronic PolyTune(チューナーペダル) | チューニング | John Petrucci自身のペダルボードで確認されており、複数弦を同時にチューニングできるポリフォニックチューナーは複雑なチューニングを使うプログレ系プレイヤーに特に重宝される。 |
| Dunlop Cry Baby / Jim Dunlop Wah(ワウペダル) | 表情付けのモジュレーション | Petrucciはリード演奏時にワウを多用することで知られており、JP-2Cのハイゲインリードサウンドと組み合わせると、ヴォーカルライクな「歌う」サウンドが得られる。クリーンチャンネルでのファンキーなプレイにも有効。 |
| Digitech Whammy(ピッチシフター) | ピッチ変化・ハーモニー付加 | Petrucciのシグネチャーサウンドのひとつ。JP-2Cのリードチャンネルと組み合わせることで、アーミングでは不可能な大幅なピッチシフトや平行移動ハーモニーが得られる。Shredモードの高密度なゲインサウンドと組み合わせると特に際立つ。 |
| ISP Decimator / Boss NS-2(ノイズゲート) | ハイゲイン時のノイズ除去 | Mark IIC+系の回路はゲインが極めて高く、ノイズが乗りやすい。特にShredモード使用時にはノイズゲートが実質的に必須とされており、フォーラム上でも多くのJP-2Cユーザーがノイズゲートの使用を推奨している。 |
| TC Electronic Nova Delay / Strymon Timeline(ディレイ) | リードサウンドへの空間付加 | JP-2Cのエフェクトループに入れるのが定番。アンプのプリアンプ部での歪みにディレイが干渉しないため、クリアな空間感が得られる。Petrucciはツアーリグではラックマウントのデジタルディレイを使用することが確認されている。 |
Mesa/Boogie JP-2Cの兄弟機・派生機
| モデル名 | 主な違い |
|---|---|
| Mesa/Boogie Mark IIC+(マーク・ツー・シープラス) | JP-2Cの設計の基となったオリジナル機。1980年代に製造された伝説的なアンプで、現在は生産終了。同じ回路・同じトランスを持ちながら、JP-2Cのような2基のグラフィックEQ、MIDI、CabClone等の現代機能はなく、音作りはよりシンプル。中古市場では状態の良い個体は非常に高値がつく。「JP-2Cはこれの現代版完全復刻」と位置付けられる。 |
| Mesa/Boogie Mark V(マーク・ファイブ) | Mark Seriesの多機能フラッグシップ。3チャンネル × 各3モードの計9モードを搭載し、EL34への真空管切替やパワーアンプのクラス選択なども可能。JP-2Cが「IIC+のサウンドに特化してシンプルに絞り込んだ設計」であるのに対し、Mark Vは「多彩な選択肢を持つ多機能版」というキャラクターの違いがある。 |
| Mesa/Boogie Mark V:35(マーク・ファイブ・サーティファイブ) | Mark Vの機能を25W/35Wのコンパクトな出力に絞ったスタジオ向けモデル。クラブサイズのライブやホームスタジオでMark Seriesのサウンドを扱いやすくした弟分。 |
| Mesa/Boogie JP-2C 1×12 Combo(コンボタイプ) | JP-2Cのすべての機能をそのまま1×12インチのコンボアンプ(アンプとスピーカーが一体型)に収めたモデル。重量は約27kgとヘッドよりは重くなるが、キャビネットを別途用意する必要がないため機動性が高い。搭載スピーカーはCelestion V30。 |
Mesa/Boogie JP-2Cのモデリング
モデリングとは、実機アンプの音色や挙動をデジタル技術で忠実に再現したもので、本物のアンプを持ち歩かなくてもそのサウンドを手軽に使えるようにした機能です。以下の各デバイスにJP-2Cのモデリングが収録されています。
Mesa/Boogie JP-2CのQUAD CORTEXにおけるモデリング
| 種別 | モデル名 | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Amp | CA John’s 2C Ch1 | Mesa/Boogie JP-2C(チャンネル1 / クリーン) |
| Amp | CA John’s 2C Ch2 | Mesa/Boogie JP-2C(チャンネル2 / クランチ〜ゲイン) |
| Amp | CA John’s 2C Ch3 | Mesa/Boogie JP-2C(チャンネル3 / ハイゲイン・リード) |
| Cabinet | 412 CA Trad A V30 ’92 | Mesa/Boogie Traditional 4×12 Angled(Celestion Vintage 30搭載) |
JP-2C専用キャビネットは収録されていないため、相性の良いキャビネットを掲載しています。412 CA Trad A V30 ’92はJohn Petrucciが実際に使用するMesa Boogie Traditional 4×12(アングルタイプ、Vintage 30搭載)をモデルにしており、JP-2Cとのペアリングとして定番とされています。
Mesa/Boogie JP-2CのFractal Audio Systemsにおけるモデリング
| 種別 | モデル名 | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Amp | USA JP IIC+ Green | Mesa/Boogie JP-2C(チャンネル1 / クリーン・グリーンチャンネル) |
| Amp | USA JP IIC+ Yellow | Mesa/Boogie JP-2C(チャンネル2 / クランチ・イエローチャンネル) |
| Amp | USA JP IIC+ Red | Mesa/Boogie JP-2C(チャンネル3 / ハイゲイン・レッドチャンネル) |
| Cabinet | 4×12 PETRUCCI V30 MIX | Mesa/Boogie Traditional 4×12(Celestion Vintage 30搭載、John Petrucci実機キャビネットを収録) |
Fractal AudioはJohn Petrucci本人のキャビネットを実際に収録した専用IR「4×12 PETRUCCI V30 MIX」をファクトリーキャビネットとして収録しています。Fractal AudioのCEO Cliff Chaseが「Petrucciのマイキングを忠実に再現した、やや暗めのIR」と説明しており、アンプの高音域コントロールで補正しながら使用することが推奨されています。Axe-Fx IIIでのみ収録されているJP-2C専用モデルであり、旧世代(Axe-Fx II等)には存在しません。
Mesa/Boogie JP-2CのKemperにおけるモデリング
KemperはアンプをモデリングではなくプロファイリングKemper(実機の音を直接収録する技術)する機器です。Mesa/Boogie JP-2Cのプロファイルは、現行のKemper Factory Rigsには収録されていません。Kemper Rig ExchangeやChoptones等のサードパーティが提供する商用プロファイルパック(「Bogie JPC2」等)を利用することで、JP-2Cのサウンドを入手できます。
Mesa/Boogie JP-2CのLINE6 HELIXにおけるモデリング
Mesa/Boogie JP-2Cは、LINE 6 HELIXの現行ラインナップには収録されていません。HELIXに収録されているMesa/Boogie系モデルの中では、同じMark Seriesに属する「Cali IV Lead」(Mesa/Boogie Mark IVリードチャンネルをベースにしたモデル)がサウンドキャラクターの点でJP-2Cに最も近い代替として挙げられます。
Mesa/Boogie JP-2Cの使用アーティスト
海外のアーティスト
| アーティスト名 | 音楽スタイル | 使用時期・アルバム |
|---|---|---|
| John Petrucci(Dream Theater) | プログレッシブ・メタル。複雑な変拍子と精緻なテクニックを組み合わせ、ヘビーなリフから叙情的なリードまでを同じライブセットでこなすスタイル。 | JP-2Cのシグネチャーアーティスト本人。2016年のアルバム『The Astonishing』を始め、以降のすべてのDream Theaterのレコーディング・ライブでメインアンプとして使用。Mesa/Boogie公式での使用が確認されている。 |
| Angel Vivaldi | インストゥルメンタル・プログレッシブ・メタル。超絶技巧を駆使したメロディアスなリードプレイが特徴。ギタリストとしての表現力を前面に出したスタイル。 | Mesa/Boogie公式「Tone Sessions」動画において、JP-2CとRecto 4×12 Standard Slantとの組み合わせで使用していることが確認されている。 |
日本のアーティスト
現時点で信頼できる情報源からの裏付けが取れていないため記載を省略します。
Mesa/Boogie JP-2Cの特徴と注意点
特徴
- 「聖杯」と呼ばれたMark IIC+の回路を、現代のプロが実戦で使えるレベルに進化させた唯一のアンプ:オリジナルのMark IIC+はランダムな製造ばらつきや経年変化があり、同じモデルでもコンディションが大きく異なる問題がありました。JP-2Cは同じ回路・トランスを使いつつ、製造精度を現代基準に引き上げることで「Mark IIC+の理想的な状態のサウンド」を安定して得られるようにしています。フォーラムでは「IIC+の音をついに手に入れた気がした」という声が繰り返し見られます。
- 2基の独立した5バンド・グラフィックEQによる精密なサウンドコントロール:Mark Series初の2基搭載。EQ1をクランチチャンネル用、EQ2をリードチャンネル用に独立して設定できるため、チャンネルごとに全く異なるEQ設定を呼び出せます。「パラメトリックEQでは難しい細かい帯域の調整がグラフィックEQで直感的にできる」という声がBoogieフォーラムで多く見られます。
- Shredモードによるゲインの「質感の変化」:単にゲインを上げるのではなく、倍音の重なり方そのものが変化するモードです。通常のGainモードが「コシのある押し出し感」だとすれば、Shredモードは「より高密度で圧縮感の強い壁のようなサウンド」という評価がユーザーから繰り返し見られます。MIDIで即座に切り替えられるため、曲中での使い分けが実用的です。
- 内蔵CabCloneによりスピーカーなしで実用的なダイレクト録音が可能:Closed Back・Open Back・Vintageの3種のキャビネットシミュレーションを選べるだけでなく、アンプの負荷回路(ロードボックス)も内蔵しているため、スピーカーに接続しない状態でも安全にアンプを駆動しながら録音できます。「宅録でも本格的なアンプサウンドが手軽に録れる」という声がレビューサイトに多く見られます。
- MIDI対応の徹底により、複雑なプリセット管理が1台で完結:チャンネル、EQ1・EQ2のオン/オフ、Shred、リバーブ、エフェクトループまですべてがMIDI経由でプログラム可能。ライブで多彩なサウンドを使い分けるプロの現場でも「必要な機能がすべて本体に収まっている」ため、外部スイッチャーへの依存を最小限にできます。
注意点
- チャンネル1のMid/Boostノブの挙動が直感に反しやすい:1〜5の位置では通常のミッドレンジコントロールとして機能しますが、5を超えると突然ゲインブーストに切り替わる設計です。「ミッドを少し上げようとしたら、急にゲインが乗ってきてびっくりした」という声がフォーラムで繰り返し見られます。このノブはクリーンチャンネルの表現力の核心部分でもあるため、慣れるまでの学習コストがかかります。
- シリコンダイオード整流固定のため、Dual Rectifierのような「サグ感」は得られない:整流器の選択ができないため、レスポンスは常にタイトでシャープです。Dual Rectifierで「真空管整流器のたわみ感(弾いた時の緩やかな立ち上がり)」に慣れたプレイヤーには、「JP-2Cは弾いた瞬間の反応が速すぎる・固すぎる」という感想を持つ人もいます。意図的な設計ですが、Dual Rectifier系のサウンドを期待すると全く異なるキャラクターに感じるでしょう。
- ゲインが高すぎるため、ローゲインやジャズ・クリーンの用途には向かない:JP-2Cはあくまでプログレッシブ・メタルを前提とした高ゲイン特化の設計です。クリーンチャンネルは優秀ですが、FenderのブラックフェイスアンプやVoxのAC30のような「コードを弾いたときの煌めき」や「鈴なりのクリーン感」とは根本的に音の方向性が異なります。フォーラムでは「クリーンは良いが、ジャズには向かない」という声が多く見られます。
- 60W/100Wの切替はグローバル設定であり、リアパネルでの操作が必要:Dual Rectifierのようにフロントパネルで簡単に切り替えられる設計ではなく、リアパネルのスイッチを操作する仕様です。ライブ中に素早く出力を変えることはできないため、使用環境に合わせて事前に設定しておく必要があります。「小さいスタジオで60Wで使いたいが、切り替えが手間」という声がユーザーから見られます。
まとめ
Mesa/Boogie JP-2Cは、「ギターアンプの頂点」と長年語り継がれてきたMark IIC+のサウンドを、現代のプロが実戦で使える形に完成させた一台です。John Petrucciが30年以上の経験を注ぎ込んだ設計思想は、「クリーンからShredまでを1台で完結させる」という究極のシンプルさに凝縮されています。「あの透明感のある、液体が流れるような滑らかなリードサウンドを出したい」「Dream Theaterのようなダイナミクスの幅を持った演奏をしたい」「テクニカルなプレイをより表現豊かに聞かせたい」という方には、これ以上ない選択肢と言えるでしょう。価格や重量の面でのハードルはあるものの、一度その音を体験すれば「なぜPetrucciが30年間Boogieを使い続けているか」が体感としてわかる、そんな説得力を持ったアンプです。
