
Mesa/Boogie Lone Starは、10W/50W/100Wのマルチワット切り替えに対応したオール真空管のギターアンプです。2004年にMesa Engineeringが発表し、現在は生産終了となっています。
Mesa/Boogie Lone Star(メサ・ブギー・ローンスター)は、2004年にアメリカ・カリフォルニアのMesa Engineeringが発表した、10W/50W/100Wのマルチワット切り替えが可能なオール真空管ギターアンプです。テキサス・ブルースやクラシック・ロックを想定した設計で、Mesa/BoogieのDual RectifierやMarkシリーズとは一線を画す「クリーンからクランチ、そして適度なドライブまで」を一台でカバーする汎用性の高さが特徴です。Fender系の輝くクリーンと、Marshall風の温かみあるクランチを両立させたいギタリスト、あるいはAndy Timmonsのような繊細なリードトーンからブルージーなクランチまで幅広く求めたいプレイヤーに最適です。一言で表すなら、「テキサスサイズのクリーンとクランチを、小音量から大音量まで自在に操れる万能型ブティックアンプ」——Mesaが「これまでで最も素晴らしいクリーン、クラシック・ブレイクアップ、ハイゲインを一台で」と謳った、生産終了後も根強い人気を誇る一台です。
「よく見るけど詳しいこと知らないなぁ…」
そんな名機を端的に知って、より楽しむための試みです。
主な特徴とスペック
スペック面の要点は、チャンネルごとに10W/50W/100Wを切り替えられるMulti-Wattと、6L6とEL34を選べるパワー部です。ハンドワイヤードで製造されたオール真空管アンプです。
| メーカー | Mesa Engineering(米ペタルーマ) |
|---|---|
| 発売年 | 2004年(NAMMショーでStilettoと同時発表) |
| 出力 | 10W / 50W / 100W(Multi-Watt™で切り替え) |
| パワー管(出力管) | 6L6 × 4本(EL34への切り替えも可能) |
| プリ管(前置増幅管) | 12AX7 × 5本 |
| 整流管 | 5U4(真空管整流)× 1本 |
| 整流方式 | Recto Tracking™によるデュアル整流 |
| チャンネル数 | 2チャンネル / 3モード |
| チャンネル1 | Clean(クリーン)のみ |
| チャンネル2 | Clean または Drive を切り替え可能 |
| EQ(イコライザー) | 各チャンネルに独立した6系統のEQ・音量 |
| リバーブ | オール真空管ロングスプリングリバーブ |
| エフェクトループ | バッファード直列ループ |
| Solo機能 | フットスイッチで切り替え |
| インピーダンス出力 | 4Ω × 2、8Ω × 1 |
| 製造方法 | ハンドワイヤード(手配線) |
| フォーマット | ヘッド、ラックマウント、1×12/2×12コンボ |
| 重量(ヘッド) | 約19.5kg(43 lbs) |
| 備考 | 現在生産終了(Discontinued) |
2004年のNAMMショーでは、Lone StarとStilettoが同時に発表され、「テキサス・ブルースとクラシック・ブリティッシュ」の2台として紹介されました。
パワー管の6L6は、真空管の種類のひとつです。アメリカ製アンプに多く使われ、タイトでパンチのある音色が特徴です。バイアススイッチでEL34に切り替えることもできます。プリ管の12AX7は、ギターアンプに最も多く使われる増幅用真空管です。
整流方式はRecto Tracking™(特許技術)によるデュアル整流です。10Wモードは真空管整流、50Wモードは真空管またはシリコンダイオードを選択でき、100Wモードはシリコンダイオード整流になります。
チャンネル2のDriveは、MesaのVintage Cascading Gain(ヴィンテージ・カスケード型ゲイン)です。Thick / Normal / Thickerのボイシングスイッチが付いています。EQは各チャンネルに独立したGain、Treble、Mid、Bass、Presence、Masterがあり、チャンネル2にはDrive Levelとボイシングスイッチが追加されています。
リバーブにはBright/Warmのトーン切り替えが付いています。エフェクトループはバッファード(緩衝回路付き)の直列式で、Send Levelコントロールが付いています。トゥルーバイパスも可能です。Solo機能は、チャンネル切り替えと合わせて全体の出力レベルをブーストします。
エピソード
2004年、Mesa/Boogieは「テキサス・ブルースとクラシック・ブリティッシュ」というコンセプトで、Lone StarとStilettoの2台を同時に発表しました。Lone Starはテキサス・ブルースを、Stilettoはブリティッシュ・ロックをそれぞれターゲットにした設計です。Lone Starの開発にあたり、Mesaは「ヴィンテージとモダンのブティックアンプから期待されるトーンと汎用性を、妥協なく超える」ことを目標に掲げ、「これまでで最も素晴らしいクリーン、クラシック・ブレイクアップ、ハイゲインを一台で」と謳いました。
テキサス出身のブルース・ロックギタリスト、Quinten Hope(クインテン・ホープ)は2004年からMesaの熱心なユーザーで、2枚目のアルバム「Start of a New Day」のレコーディングでLone Starを初めて使用しました。彼はライブやスタジオでLone StarとStiletto Deuceを組み合わせ、クラシックな英国製とアメリカ製のトーンを両方キャプチャするセットアップを構築しています。Mesaのアーティストスポットライトでは、Lone Starのクリーンチャンネルとドライブチャンネルを使い分けるデモが紹介されました。
Andy Timmons(アンディ・ティモンズ)はLone Starの代表的なユーザーとして知られています。彼はMesa/Boogie Lone Star 2×12コンボをコア機材として使用し、2008年にはMesa主催のクリニックツアーでLone StarとStiletto Deuce IIをデモンストレーションしました。TimmonsはLone StarのリードチャンネルにTube Screamerを組み合わせたトーンを高く評価しており、「ペダルとの相性が非常に良い」と語っています。繊細なクリーンから歌うようなリードトーンまで、Lone Starの幅広いダイナミックレンジを活かしたプレイスタイルで知られています。
The Gear Forumのレビューでは、2006年以前のブルーのLone Star 1×12コンボが、少なくとも19年間にわたりアメリカとイギリスを何度もツアーし、ダウンタイムなしで稼働し続けた事例が報告されています。「過小評価されているが、今でも確かなアンプ」として、優れたクリーントーンとリードプレイ用の効果的なセッティングが評価されています。
共に使用される機材
共に使用されるキャビネット
Lone Starは1×12コンボ、2×12コンボとしても販売されていたため、ヘッドユーザーは別途キャビネットを用意する形になります。以下の組み合わせが定番です。
- Mesa/Boogie Lone Star 2×12(オープンバック / クローズドバック):Celestion Vintage 30を2発搭載した、Lone Star純正のペアリングです。2×12クローズドは「パンチとプロジェクション、ヴィンテージの温かみ」を両立します。Vintage 30の豊かなミッドレンジが、クリーンからドライブまで幅広くマッチします(Celestion Digital、Mesa公式)。
- Mesa/Boogie Rectifier 2×12:搭載スピーカーはCelestion Vintage 30またはEminence Legend V12です。Lone Star専用キャビネットが手に入らない場合の代替として人気です。V30搭載版はLone Star 2×12と同様のスピーカー構成で、クリーンからドライブまで一貫したトーンが得られます(Boogie Forum)。
- Marshall 1960A / 1960B 4×12:Celestion G12T-75またはG12H-30を搭載し、より大きなステージやロック寄りのサウンドを求める場合の選択肢です。Lone Starのアメリカン・クリーンにブリティッシュなキャラクターをブレンドできます。
共に使用されるエフェクター
- Ibanez Tube Screamer(TS808 / TS9):オーバードライブです。Lone Starのフロントに挿すブースターとして定番で、Andy Timmonsも使用しています。Lone Starのドライブチャンネルはハイゲインではないため、リード用のゲインを補います。低域をカットしてミッドを前に出し、締まったトーンに仕上げます(Boogie Forum)。
- Xotic BB Preamp:オーバードライブです。Tube ScreamerやFulltone OCDと並んでLone Starユーザーに人気があります。透明感のあるブーストで、Lone Starのクリーンやクランチをそのまま活かしながらゲインを足せます。
- Fulltone OCD:オーバードライブです。BB PreampやTube Screamerと比較される定番の選択肢で、Lone Starのドライブチャンネルにさらにゲインを加え、リードトーンを強化する際に使われます。
- Boss SD-1(Super OverDrive):オーバードライブです。TS系よりコストパフォーマンスが高く、Lone Starとの相性も良好です。ハイゲイン寄りのリードを求めるユーザーに人気があります(Boogie Forum)。
- TC Electronic Flashback / Strymon Timeline:ディレイです。エフェクトループ経由で使用します。Lone Starのバッファードループは音質変化が少なく、高品位なディレイとの相性が良いため、リードサウンドに深みを加えるセッティングが定番です。
兄弟機・派生機
Lone Star Classic
出力は10W / 50W / 100Wで、6L6パワー管を搭載したメインモデルです。「温かく、大きく、ダーク」なトーンが特徴で、クリーンが長く保たれ、SRV風のミッドの「ホンク」を持ちます。シングルコイルとハムバッカーの両方に適しています。
Lone Star Special
出力は5W / 15W / 30Wで、EL84パワー管を搭載した「より軽量・小出力版」です。クラシックは「エアリー、ジャングリー、ウィスピー」で、ドライブ時もチャイミングな質感を保ちます。シングルコイル(テレキャスター等)との相性が良く、Fender風の輝くクリーンを求めるプレイヤー向けです。ハムバッカーだとクリーンチャンネルが早くブレイクアップする場合があります。
Lone Star 4×10 Combo
出力はClassic/Specialに準拠します。4×10インチスピーカーを搭載したコンボで、よりパンチのある低域と独特のスプレッドが特徴です。生産終了しています。
モデリング
モデリングとは、実機アンプの音色や挙動をデジタル技術で忠実に再現したもので、本物のアンプを持ち歩かなくてもそのサウンドを手軽に使えるようにした機能です。以下に主要なデジタル機器でのMesa/Boogie Lone Starのモデリング情報をまとめます。
QUAD CORTEX における収録
| 種別 | モデル名 | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Amp | CA 1Star Clean 100W Normal | Mesa/Boogie Lone Star |
| Amp | CA 1Star Clean 50W Normal | Mesa/Boogie Lone Star |
| Amp | CA 1Star Drive 100W Normal | Mesa/Boogie Lone Star |
| Amp | CA 1Star Drive 50W Normal | Mesa/Boogie Lone Star |
| Cabinet | 212 CA Recto V30 ’98 | Mesa Rectifier 2×12(V30搭載) |
Mesa/Boogie Lone Star専用キャビネットは収録されていないため、相性の良いキャビネットを掲載しています。Lone Star 2×12もCelestion Vintage 30を搭載するため、Mesa Rectifier 2×12 V30が近いトーンを再現できます。
Fractal Audio Systems における収録
| 種別 | モデル名 | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Amp | TX Star | Mesa/Boogie Lone Star |
| Cabinet | 212 CA Recto V30 | Mesa Rectifier 2×12(V30搭載) |
Fractal Audio(Axe-Fx III / FM9 / FM3)では、Lone Starは「TX Star」というモデル名で収録されています。キャビネットはFractalのライブラリからMesa系の2×12 V30を選択する形になります。TX Star専用キャビネットは収録されていないため、相性の良いキャビネットを掲載しています。
Kemper における収録
Kemperの現行ファクトリーリグには、Mesa/Boogie Lone Starに該当するリグは収録されていません。有償のプロファイルパック(例:M-M Kemper ProfilesのMesa Lone Star Profile Pack、Fremen PresetsのKemper Player Mesa Lonestar等)で、Lone Starのプロファイルを入手することが可能です。
LINE6 HELIX における収録
| 種別 | モデル名 | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Amp | Cali Texas Ch1 | MESA/Boogie Lone Star(clean channel) |
| Amp | Cali Texas Ch2 | MESA/Boogie Lone Star(drive channel) |
| Cabinet | 4×12 Cali V30 | MESA/Boogie 4×12(Celestion Vintage 30搭載) |
LINE6 HELIXでは「Cali Texas」という名称でLone Starのクリーンチャンネル(Ch1)とドライブチャンネル(Ch2)が収録されています。Mesa/Boogie Lone Star専用の2×12キャビネットは収録されていないため、相性の良いMesa系4×12 V30キャビネットを掲載しています。
使用アーティスト
海外のアーティスト
- Andy Timmons/インストゥルメンタル・ロック、ブルース・ロック:繊細なトーンと歌うようなフレージングで知られるテキサス出身のギタリストです。Mesa/Boogie Lone Star 2×12コンボをコア機材として使用し、2008年のMesa主催クリニックツアーでデモを行いました。Tube Screamerとの組み合わせでリードトーンを構築しています(Equipboard、Mesa公式インタビュー)。
- Quinten Hope/テキサス・ブルース・ロック:クラシックな英国製・アメリカ製トーンを融合したスタイルです。2004年頃からMesaユーザーで、2枚目のアルバム「Start of a New Day」のレコーディングでLone Starを導入しました。Lone StarとStiletto Deuceを併用しています(Mesa Amplitudesブログ)。
よくある疑問
Lone Star ClassicとLone Star Specialはどう違いますか?
パワー管と出力が異なり、トーンの方向性もかなり違います。Classicは6L6で10W / 50W / 100W、「温かく、大きく、ダーク」なトーンです。SpecialはEL84で5W / 15W / 30W、「エアリー、ジャングリー」な質感です。Specialはハムバッカーだとクリーンが早く崩れる場合があるため、購入前に両方を試すことが推奨されています。
QUAD CORTEXがあれば実機は不要ですか?
用途によります。QUAD CORTEXには「CA 1Star」というモデル名で、Clean / Driveそれぞれ50Wと100Wの計4種が収録されています。ただしLone Star専用キャビネットは収録されておらず、近い音のMesa Rectifier 2×12 V30を組み合わせる形になります。まずモデリングで音の方向性を確かめ、実機は中古市場で探すという進め方もあります。
ユーザーの評価と注意点
評価されている点
- 10W/50W/100Wのマルチワットで小音量から本格的な音量まで対応:チャンネルごとに出力を切り替えられるため、スタジオでは10Wでクリーンを、50Wでドライブを、といった柔軟なセッティングが可能です。大音量を出さずに「真空管の温かみ」をある程度得られます(出典:Boogie Forum)。
- クリーンからドライブまで幅広いトーンレンジ:MesaのDual Rectifierのようなハイゲインではありませんが、Warren HaynesやClapton風のスムーズなリードゲイン、ブルース、カントリー、クラシック・ロックを一台でカバーできます。「do-it-all(何でもできる)」アンプとして評価されています(出典:Boogie Forum)。
- 6L6とEL34の切り替えでキャラクターを変更可能:バイアススイッチでパワー管を6L6からEL34に切り替えられ、よりブリティッシュ寄りのトーンに変化させられます。Andy TimmonsはEL34を使用する設定も報告されています(出典:Boogie Forum)。
- ペダルとの相性が良い:Tube Screamer、BB Preamp、OCDなど、各種オーバードライブがよくマッチします。クリーンやクランチの質を活かしつつゲインを足す使い方が定番です(出典:Boogie Forum、Andy Timmonsデモ)。
注意点
- Soldano SLOのようなハイゲイン・ディストーションは得意ではない:Lone Starのドライブチャンネルは「ヴィンテージ・カスケード型ゲイン」で、モダン・メタルやハードロック向けの圧倒的なハイゲインは狙いにくいです。リード用にはオーバードライブペダルで補う必要があります(出典:Boogie Forum)。
- Lone Star ClassicとLone Star Specialは「全く別のアンプ」に近い:6L6のClassicは「温かく大きくダーク」で、EL84のSpecialは「エアリーでジャングリー」です。Specialはハムバッカーだとクリーンチャンネルが早くブレイクアップするため、購入前に両方を試すことが推奨されています(出典:Boogie Forum)。
- 生産終了のため新品入手が困難:Lone Starシリーズは現在Discontinuedです。中古市場での入手となるため、状態や価格の確認が必要です。
まとめ
Mesa/Boogie Lone Starは、テキサス・ブルースからクラシック・ロックまで、クリーンとクランチを中心に幅広いジャンルを一台でカバーしたいギタリストに最適なアンプです。10W/50W/100Wのマルチワットにより、スタジオからライブまで音量に応じた使い分けが可能で、Tube Screamerをはじめとするペダルとの相性の良さも多くのプロに評価されています。Andy Timmonsのような繊細なリードトーンから、Quinten Hopeのようなテキサス・ブルースまで、多様なプレイスタイルをサポートする懐の深さが魅力です。QUAD CORTEX、Fractal Audio、LINE6 HELIXにモデリングが収録されているため、まずはデジタル機器で「Cali Texas」や「TX Star」「CA 1Star」の音を体験してから、中古市場で実機を探してみるというアプローチもおすすめです。生産終了後も根強い人気を誇るLone Starのサウンド——その輝くクリーンと歌うようなドライブを、ぜひ一度体験してみてください。




