
Morgan SW50は、アメリカ・カリフォルニアのMorgan Amplificationが製造する50Wのオール真空管ギターアンプヘッドです。黒フェイス風のクリーンを現代的に再解釈した、ペダルを前提に設計されたブティックアンプです。
SW50(エスダブリュー50)はブティックアンプ(少量生産の高品質な手作りアンプのこと)として、40年前のヴィンテージアンプを顧客が持ち込んだことをきっかけに開発された、黒フェイス風(1960年代中頃のFenderのようなクリーンで明るいトーン)を現代的に再解釈した一台です。ブルース、ファンク、カントリー、ポップ、セッションからプログレッシブメタルまで幅広いジャンルに対応し、ペダルとの相性の良さを最優先に設計された「ペダルプラットフォーム」として知られています。一言で表すなら、「昔の黒フェイスの温かみに、現代的な明瞭さとストリングtoストリングの分離を加えた、ペダルが主役になれるクリーンアンプ」——2×6L6という構成でありながら可能な限りクリーンで大きなヘッドルームを狙いつつ、自然なオーバードライブも出せる、ステージとスタジオの両方で活躍するアンプです。
「よく見るけど詳しいこと知らないなぁ…」
そんな名機を端的に知って、より楽しむための試みです。
主な特徴とスペック
スペック面の要点は、50Wの出力と6L6×2本のパワー部、そして1チャンネルにBassからTrebleまでのEQとOutputを備えたシンプルな操作系です。
| メーカー | Morgan Amplification(アメリカ・カリフォルニア州) |
|---|---|
| 開発経緯 | 顧客持ち込みの40年物ヴィンテージアンプの改造依頼 |
| 出力 | 50W(クラスA/B) |
| パワー管(出力管) | 6L6×2本 |
| プリ管(前置増幅管) | 12AX7×3本 |
| チャンネル数 | 1チャンネル |
| コントロール | Gain、Bass、Middle、Treble、Master、Output |
| スイッチ | Bright、Low Boost、Bass Emphasis |
| Level(Output) | 約3時より右でパワー部が歪み始める |
| Bass Emphasis | ミッドの中心点を変え、低域を豊かにする |
| トーンキャラクター | 1960年代中頃の黒フェイス風トーン |
| ペダルとの相性 | 各種ペダルを前提に設計 |
| エフェクトループ | オプション(別途約$100)・パッシブ型 |
| インピーダンス出力 | 16Ω × 1、8Ω × 2(2つの8Ωは並列) |
| 製造方法 | ハンドワイヤード(手配線) |
| フォーマット | ヘッドのみ(コンボはSW50R) |
| バイアス調整 | パワー管交換時に必要 |
| 納期 | 受注生産で約6〜12週間 |
開発経緯は、顧客が40年物のヴィンテージアンプを持ち込み、現代のギターとペダルで使いやすいようにアップデートしてほしいと依頼したことです。Dumble回路を参考にした設計との評もあります。パワー管の6L6は真空管の種類のひとつで、アメリカ製アンプに多く使われ、タイトでパンチのある音色が特徴です。プリ管の12AX7はギターアンプに最も多く使われる増幅用真空管です。
コントロールはGain(ゲイン)、Bass(低域)、Middle(中域)、Treble(高域)、Master、Output(レベル)で、Brightスイッチ、Low Boostスイッチ、Bass Emphasisスイッチを備えます。Level(Output)コントロールはパワーセクションへのゲイン量を制御し、約3時より右に回すとパワーセクションにオーバードライブが乗り始めます。小音量でもトーンを犠牲にせず使いやすい設計です。Bass Emphasisスイッチはミッドレンジの中心点を変化させ、より豊かな低域レスポンスを得られます。
トーンキャラクターは、1960年代中頃の黒フェイス風トーンをベースに、明瞭さとストリングtoストリングの分離を強化したものです。クリーンノートでも甘いシンギング・サスティーンが得られ、ウォームでコンプレッションされた自然なオーバードライブも可能です。ファズ、ブースト、オーバードライブ、フェイザー、フランジャー、トレモロ、ワウ、ディレイなど各種ペダルを前提に設計されており、「ペダルボードテスト」をパスすることを掲げています。
エフェクトループはオプション(別途約$100)のパッシブタイプで、ディレイやリバーブとの相性を重視しています。インピーダンス出力は16Ω × 1、8Ω × 2です。製造はハンドワイヤード(手配線)で、カスタムMercury Magneticsトランスを使用しています。パワー管の交換時にはバイアス調整が必要で、受注生産のため納期は約6〜12週間です。
エピソード
Morgan Amplificationの創設者Joe Morganは、GPS衛星の開発に携わったエンジニア出身で、1996年からアンプの製作・修理を手がけてきました。SW50の誕生は、顧客が高価なヴィンテージアンプをMorganのショップに持ち込み、「現代のギターとペダルで使えるようにアップデートしてほしい」と依頼したことがきっかけです。その40年物のアンプは後に45,000ドルで売却されたとされています。Joe Morganはそのアンプをベースに、今日のペダルボードやギターとシームレスにインターフェースするSW50を設計しました。
Morganの設計哲学は「タッチに敏感で、レスポンシブで、素晴らしい音のするアンプを楽器として作る」ことにあります。すべてのMorganアンプは「ペダルボードテスト」をパスすることを目標に設計され、オーバードライブやブーストがアンプの延長のように感じられることを目指しています。
Tosin Abasi(Animals as Leaders)はMorgan公式アーティストとしてSW50を使用しています。プログレッシブメタルの8弦ギターで知られる彼が、クリーンからブルータルなチャグまでペダルで幅広いトーンを構築する際のベースアンプとしてSW50を採用しています。フォーラムでは「カントリーのクリーンからブルータルなチャグまで、驚くべきトーン」との評が寄せられています。
Michael Landauはセッション・ギタリストとして長年活躍し、MorganのアーティストページではAC40 Deluxe、SW50、カスタムショップ機を併用していると紹介されています。クリーンからクランチまで幅広くカバーするスタイルに、SW50のペダルプラットフォームとしての特性が合っています。
Kenny Greenberg(Kenny Chesneyなどのセッション・プロデューサー)やAdam Shoenfeld(セッション)、Jon Osborne(Brothers Osborne)、Mitchell Curtis(Dustin Lynch)など、カントリーやポップのセッション現場でSW50が使われています。TheFretBoardなどのフォーラムでは「黒フェイスのクリーンとヘッドルーム」を求める議論でSW50がしばしば候補に挙がり、ペダルプラットフォームとして「クリーンなベースチャンネルが損なわれず、フロントのブーストやエフェクトに正しく反応する」と評価されています。
共に使用される機材
共に使用されるキャビネット
- Morgan 2×12 CAB-Gold(M212V含む):Celestion G12H-75 Creamback + Celestion Alnico Gold、またはCreamback×2を搭載した、Morgan純正キャビネットです。オープンバック、バルトアンバーチ合板製で、Creambackの明るいチャイム感とダイナミックなパンチが、SW50のクリーンからオーバードライブまでを活かします。SW50の黒フェイス風トーンと相性が良い組み合わせです。
- Morgan 112(1×12):Celestion G12H-75 Creamback搭載で、小型スタジオや小規模ライブ向けです。SW50の50Wと適度なヘッドルームのバランスが取りやすく、コンパクトにまとめたい場合の定番です。
- Two Rock風オープンバック 2×12:Celestion G12-65、EVM12L、Alnico Goldなどを搭載します。SW50と同様にDumble系・黒フェイス系をルーツとするTwo Rockのキャビネットは、クリーンでオープンなトーンを求めるプレイヤーに好まれ、SW50との相性が良いとされています。
共に使用されるエフェクター
- 各種オーバードライブ(Tube Screamer系、Klon系など):SW50はペダルプラットフォームとして設計されており、クリーンベースの上にODを乗せる使い方が主役です。Morganは「オーバードライブがアンプの延長のように感じられる」ことを目標にしています。
- ブースト・ファットブースト系:SW50のクリーンチャンネルはヘッドルームが大きく、ブーストで駆動力を足す使い方が一般的です。ソロやリードを際立たせる際に有効です。
- ファズ、ワウ、フェイザー、フランジャー、トレモロ:マニュアルに「ファズ、ブースト、OD、フェイザー、フランジャー、トレモロ、ワウ、各種ディレイを好きにしてほしい」と記載されています。フロントに入れてもクリーンベースが保たれる設計です。
- ディレイ、リバーブ:フロントでも使えますが、SW50にエフェクトループをオプションで追加する場合は、ディレイやリバーブの挿入に最適です。
兄弟機・派生機
SW50R
SW50に3スプリングのチューブ駆動リバーブを追加した版です。リバーブはトーンスタックと並列で、使用しない時は回路外になる設計です。SW50と同じコアトーンを維持しています。
SW22 / SW22R
22W版です。より小さい音量でパワーセクションの飽和を狙いやすく、ホームやスタジオ向けで、SW50よりコンパクトです。
AC20 Deluxe / AC40 Deluxe
Vox AC系をルーツとした別ラインで、EL84を使用したブリティッシュ寄りのトーンです。SW50は6L6のアメリカン・黒フェイス系で、AC系よりクリーンでヘッドルーム重視です。
モデリング
モデリングとは、実機アンプの音色や挙動をデジタル技術で忠実に再現したもので、本物のアンプを持ち歩かなくてもそのサウンドを手軽に使えるようにした機能です。以下に主要なデジタル機器でのMorgan SW50のモデリング情報をまとめます。
QUAD CORTEX における収録
| 種別 | モデル名 | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Amp | Captain 50 | Morgan SW50 |
| Cabinet | 212 Zila CB ’16 | Zilla Cab with Celestion Creamback G12H-75 |
Morgan SW50専用キャビネットは収録されていないため、相性の良いキャビネットを掲載しています。Morganの2×12キャビネットはCelestion Creambackを搭載することが多いため、212 Zila CB ’16(Celestion Creamback G12H-75搭載)が近いトーンを再現できます。
Fractal Audio Systems における収録
Fractal Audio(Axe-Fx III / FM9 / FM3)の現行ラインナップには、Morgan SW50専用のアンプモデルは収録されていません。FractalにはMorgan AC20 Deluxe(AC-20モデル)が収録されており、Vox系のMorganとはトーン方向が異なります。SW50の黒フェイス風クリーンとペダルプラットフォーム特性を再現したい場合は、Fender Deluxe系やTwo Rock風のモデルをベースに、ヘッドルームとクリーンな特性を調整するなどの代替アプローチを検討することになります。
Kemper における収録
| 種別 | モデル名 | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Amp | Morgan SW50R | Morgan SW50R |
Kemperはアンプとキャビネットを1つのリグ(RIG)にまとめた形式で収録しているため、キャビネット単独のエントリは存在しません。ファクトリーリグに「Morgan SW50R」が含まれており、SW50にリバーブを追加した兄弟機のプロファイルとして提供されています。SW50とSW50Rはコアのトーンが同一のため、SW50の代用として利用可能です。
LINE6 HELIX における収録
LINE6 HELIXの現行ラインナップには、Morgan SW50に該当するアンプモデルは収録されていません。HELIXのアンプモデル数はFractalやQUAD CORTEXより少なく、Morganシリーズは未収録です。SW50の黒フェイス風クリーンやペダルプラットフォーム特性を再現したい場合は、US Deluxe Nrm(Fender Deluxe Reverb)やUS Double Nrm(Fender Twin Reverb)などをベースに、ヘッドルームとクリーンな特性を調整する代替アプローチを検討することになります。
使用アーティスト
海外のアーティスト
- Tosin Abasi(Animals as Leaders)/8弦ギターを用いたプログレッシブメタル、インストゥルメンタル:Morgan公式アーティストとしてSW50を採用し、ペダルでクリーンからハイゲインまで幅広いトーンを構築しています。
- Michael Landau/セッション・ギタリスト:ジェフ・ベック、ジャミロクワイ、James Taylorなど多数のアーティストと共演し、ソロでも活動しています。Morgan公式アーティストで、AC40 Deluxe、SW50、カスタムショップ機を併用しています。
- Kenny Greenberg/セッション・プロデューサー:Kenny Chesneyなどカントリー・ポップのレコーディングに参加しています。Morgan公式アーティストとしてSW50を使用しています。
- Adam Shoenfeld/セッション・ミュージシャン:Morgan公式アーティストとしてSW50を使用しています。
- Jon Osborne(Brothers Osborne)/カントリー・ロック:Morgan公式アーティストとしてSW50を使用しています。
- Kevin Collier/カントリー系:Chris Youngのツアーなどに参加しています。Morgan公式アーティストで、AC40 Deluxe、SW50を併用しています。
- Mitchell Curtis/カントリー・ポップ:Dustin Lynchのツアーなどに参加しています。Morgan公式アーティストとしてSW50を使用しています。
日本のアーティスト
Morgan Ampsの日本国内アーティストには梶原健生が登録されており、別モデル「MVP23 Combo」を使用しています。SW50をメインで使用している日本のアーティストについては、現時点で信頼できる情報源からの裏付けが取れていないため記載を省略します。
よくある疑問
SW50とSW50Rの違いは何ですか?
違いはリバーブの有無で、コアのトーンは同一です。SW50RはSW50に3スプリングのチューブ駆動リバーブを追加した版で、リバーブは使用しない時は回路外になります。ヘッドのSW50には内蔵リバーブがないため、リバーブが欲しい場合はペダルかSW50Rを選ぶことになります。
QUAD CORTEXなどのモデラーで代用できますか?
QUAD CORTEXとKemperで近い音を試せます。QUAD CORTEXには「Captain 50」、Kemperにはファクトリーリグの「Morgan SW50R」が収録されており、SW50とSW50Rはコアのトーンが同一のため代用できます。一方、Fractal AudioとLINE6 HELIXにはSW50のモデルが収録されていません。
エフェクトループは付いていますか?
標準では付いておらず、オプション(別途約$100)での追加になります。パッシブタイプで、ディレイやリバーブとの相性を重視した設計です。必要な場合は、注文前に確認しておくのが望ましいです。
ユーザーの評価と注意点
評価されている点
- ペダルプラットフォームとして最適:Morganは全モデルで「ペダルボードテスト」をパスすることを掲げており、SW50はファズ、ブースト、OD、フェイザー、フランジャー、トレモロ、ワウ、ディレイなどあらゆるペダルを前提に設計されています。クリーンベースが保たれたままフロントでエフェクトを使え、タイムベースをフロントに置いても問題ありません(出典:Morganマニュアル、TheFretBoard、Rig-Talk)
- Levelコントロールで小音量でもトーン維持:約3時より右でパワーセクションにオーバードライブが乗り始める設計のため、低音量でもトーンを犠牲にせずパワー管の温かみを得られます。アパートやスタジオで音量を抑えたい場合に有利です(出典:Quad Cortex Wiki、The Amp Garage)
- 黒フェイス風の明瞭さとストリングtoストリングの分離:1960年代中頃の黒フェイスをベースに、コードやアルペジオでのノートの分離が良く、クリーンノートでも「甘いシンギング・サスティーン」が得られると評されます(出典:Quad Cortex Wiki、Guitar Center)
- 高ヘッドルーム:2×6L6でありながら「可能な限り大きくクリーンに」設計されており、Kemperフォーラムでは「長くクリーンを保つ」「ヘッドルームが高い」と繰り返し言及されています。歪みは主にペダルで作り、アンプはクリーンベースに徹する使い方に最適です(出典:Kemper Forum、TheFretBoard)
注意点
- パワー管交換時にバイアス調整が必要:SW50はバイアス固定ではなく、6L6交換時にはバイアス調整が必要です。技術者への依頼や自分で調整する知識が求められます(出典:Morgan FAQs)
- 受注生産で納期がかかる:Morganアンプは受注生産で、通常6〜12週間の納期です。すぐに手に入れたい場合には中古市場を検討するか、QUAD CORTEXのCaptain 50やKemperのMorgan SW50Rプロファイルで先にトーンを試すのも有効です(出典:Morgan FAQs)
- 内蔵リバーブがない(SW50の場合):ヘッドのSW50にはリバーブがなく、リバーブを使う場合はペダルかSW50R(コンボ)を選ぶ必要があります。エフェクトループもオプション(別途約$100)のため、必要な場合は事前に確認が望ましいです(出典:Morganマニュアル、Guitar Center)
まとめ
Morgan SW50は、40年前のヴィンテージアンプを現代のプレイヤー向けに再解釈した、ペダルが主役になれるクリーンアンプです。黒フェイスの温かみと明瞭さ、そしてストリングtoストリングの分離を両立し、ブルースからプログレッシブメタルまで幅広いジャンルで活躍します。Tosin Abasi、Michael Landau、Kenny Greenbergといったプロが採用し、カントリーやポップのセッション現場でも重宝されています。歪みはペダルで作り、アンプはクリーンに徹したい——そんなプレイスタイルに最適な一台です。QUAD CORTEXには「Captain 50」、Kemperには「Morgan SW50R」のプロファイルが収録されているため、まずはモデリングでそのトーンを体験してみることをおすすめします。甘いシンギング・サスティーンと、ペダルが生きるクリーンベース——SW50の世界を、ぜひ一度体験してみてください。

