Darkglass Microtubes B3K|ベース用オーバードライブペダルの名機を解説

Darkglass Microtubes B3K ベース用オーバードライブ

Darkglass Microtubes B3Kは、原音とブレンドして低域の太さを残したまま歪ませられる、ベース専用のオーバードライブ/ディストーションペダルです。2011年に発売されたDarkglass Electronicsの第一号製品で、現在は後継のB3K V2が現行品です。

ベース用の歪みペダルを探していると、必ずと言っていいほど名前が挙がるのがDarkglass Microtubes B3K(ダークグラス マイクロチューブス B3K)です。B3Kはベース専用に設計されたオーバードライブ/ディストーション(音を歪ませて荒々しさや迫力を加えるエフェクト)で、フィンランドのDarkglass Electronicsが2011年に世に出した記念すべき第一号機です。ギター用の歪みをベースに使うと低音がやせて芯がなくなりがちですが、B3Kは原音(歪ませる前のクリーンな音)とブレンドして低域の太さを残したまま、上半分だけをモダンにバリバリ歪ませられるのが最大の発明でした。

向いているのはモダンメタルやプログレッシブ・メタル、ジェント(Djent)と呼ばれる刻み主体のヘヴィな音楽です。指やピックのアタックがそのまま「ジャリッ」とした歪みになって前に出てくるので、バンドの中でベースが埋もれずに存在感を放ちます。「ベースなのにこんなに攻撃的に歪ませられるのか」という驚きこそ、B3Kが定番になった理由です。

名機サクッと解説

「よく見るけど詳しいこと知らないなぁ…」
そんな名機を端的に知って、より楽しむための試みです。

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主な特徴とスペック

ここで紹介するのは初代(オリジナル)のMicrotubes B3Kで、スペック面の要点は、3つのノブと2つのトグルスイッチだけで低域と高域の歪み方を作り分ける構成と、電池非対応のアダプター専用設計です。

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エフェクトの種類ベース用オーバードライブ/ディストーション(CMOS回路)
コントロール(ノブ)Blend、Drive、Levelの3ノブ
コントロール(トグルスイッチ)Grunt(3段切替)、Attackの2スイッチ
電源DC 9V 外部アダプターのみ(センターマイナス)
入出力端子モノラル1系統(入力500kΩ/出力1kΩ)
バイパス方式トゥルーバイパス
筐体サイズ75(幅) × 111(奥行) × 43(高さ) mm
重量約250g
製造国 / ブランドフィンランド製 / Darkglass Electronics
発売年2011年(Darkglassの第一号製品)

エフェクトの種類にあるCMOSとは、半導体素子を使って真空管的な歪みを作る回路のことです。ギター用ではなくベースの帯域に最適化されています。

Gruntは、歪ませる前にどれだけ低域を持ち上げてサチュレーションさせるかを選ぶ低域帯域の3段切替です。Attackは、歪み音の高域、つまりアタックの鋭さを切り替えるトグルです。

電源は電池に非対応で、消費電流は約17〜20mAです。バイパス方式のトゥルーバイパスは、エフェクトをオフにすると内部回路を完全に迂回して信号を通す方式で、オフ時に音色が変化しにくいのが利点です。筐体は一般的なコンパクトペダルよりやや小ぶりで、ハンドメイドで生産されています。現在は後継のB3K V2が現行品です。

どんな音がするのか

B3Kのサウンドを一言で表すなら「低音の芯は太いまま、上だけがバキバキに歪むベース専用ディストーション」です。ここで説明する音は、クリーンなベースアンプ(Ampeg系のフラットなセッティングなど)やDI経由でPAに送る使い方を前提にしています。

全体的なキャラクターとして、ギター用のオーバードライブ(Ibanez TS9など)をベースに使ったときに起こる「低音がスカスカになる」問題が起きません。これはBlendノブの存在が大きく、歪ませた音に原音をどれだけ混ぜるかを自由に決められるからです。原音を多めに残せば芯のあるグリッターな(キラッとした)トーン、歪み全開にすれば獰猛なファズに近い音まで一台でカバーします。

周波数帯域の傾向は、低域がどっしりと保たれたまま、中高域に「ジャリッ」とした倍音が乗るのが特徴です。GruntスイッチでDriveに突っ込む前の低域の量を3段で選べるため、「ブーミーに分厚く歪ませる」のか「タイトに引き締めて歪ませる」のかを切り替えられます。Attackスイッチは歪み音の高域(アタックの鋭さ)を変える役割で、コリコリと刺さるようなアタックにも、少し丸めた質感にも調整できます。

ゲイン量・歪みの質感は幅広く、Driveを絞れば軽くザラつかせる程度のエッジ付けから、上げきれば刻みリフが「ガリガリ」と鳴るハイゲインまで到達します。質感はファズほどブチブチに潰れず、粒が立った現代的なディストーションです。

ダイナミクスへの追従性も優秀で、ピッキングの強弱がそのまま歪みの濃さに反映されます。指で優しく弾けば歪みが薄れ、ピックで強くアタックすれば一気にバリッと前に出ます。弾いていると「自分の右手の表情がそのまま音になる」感覚があり、ジェント系の正確な刻みと相性が抜群です。原音をブレンドして弾くと、各弦の輪郭がクリアに分離して聞こえるのも気持ちのいいポイントです。

開発と使用のエピソード

B3Kは、チリ出身でフィンランドを拠点に活動するDouglas Castro(ダグラス・カストロ)氏が生んだペダルです。もともとは2008年にDIYコミュニティ(自作エフェクター愛好家のフォーラム)に投稿された「Microtubes 2K」という自作回路が原型で、それを製品化したものがB3Kでした。つまりB3KはDarkglass Electronicsというブランドそのものの出発点であり、ここからベース用ハイゲインの新しい潮流が始まったと言える一台です。

発売直後の2011年にはベース専門メディアでレビューされ、「ベースの低域を犠牲にせず激しく歪ませられる」という設計思想が注目を集めました。それまでベーシストは「ギター用の歪みを我慢して流用する」か「低音が消えるのを覚悟する」かの二択になりがちでしたが、B3KのBlend機能がその常識を変えたのです。

使い手として有名なのが、ベック、ナイン・インチ・ネイルズ、M83などのレコーディングやツアーで活躍する売れっ子セッション・ベーシスト、Justin Meldal-Johnsen(ジャスティン・メルダル=ジョンソン)です。彼はDarkglass公式にB3Kのアーティストとして名を連ねており、原音を活かしつつエッジを足すような上品な歪ませ方で知られています。一方で、デスメタルの重鎮Alex Webster(アレックス・ウェブスター/Cannibal Corpse)のような、ベースをゴリゴリに歪ませて攻める使い手にも支持されており、上品にも凶暴にも振れるB3Kの懐の深さを物語っています。

使い方と信号チェーンでの位置づけ

信号チェーン(ギターやベースからアンプまでの音の経路)での基本位置は、ベース側の前段です。チューナーやコンプレッサーの後、空間系(コーラス・ディレイ)の前に置くのが定番です。歪ませた信号をそのままDI(ダイレクトボックス)やアンプのクリーンチャンネルに送る使い方が一般的で、アンプ側で歪ませるよりB3Kで歪みを作り込むことが多いです。

典型的なセッティング例:

  • 原音を活かした軽い歪み(バンドで芯を保ちたいとき): Blendは9〜11時(原音多め)、Driveは9〜12時、Levelは音量が下がらない位置にします。Gruntは中、Attackは控えめ側です。指弾きでもアタックがほどよく立つ万能セッティングです。
  • ジェント/モダンメタルの刻み: Blendは12〜2時(歪みを増やす)、Driveは1〜3時、Levelは原音より大きめにします。Gruntをタイト側にして低域を締め、Attackを鋭い側にするとピックの刻みがバキバキに前へ出ます。
  • 獰猛なリード/ファズ的サウンド: Blendは3時〜全開、Driveは全開にします。原音を絞り、歪みで押し切るアグレッシブな音です。

アンプとの組み合わせでは、Ampeg系(SVTなど)のクリーン〜軽いクランチに設定したアンプにB3Kを通すのが王道です。アンプはなるべくフラット〜素直に鳴らし、歪みのキャラクターはB3K側で作るとモダンな質感がきれいに出ます。ライブではアンプを使わずB3KからDIで直接PAに送る運用も多く、宅録(DAWに直接録音)との相性も良好です。

重ね使いでは、前段にコンプレッサーを置いてアタックを揃えると刻みが安定します。また、B3Kで作った歪みの後段にオクターバー(1オクターブ下の音を足すエフェクト)を併用し、さらに重厚なローを足すパターンもメタル系で定番です。空間系は必ずB3Kより後ろに置くと、歪みが濁らずクリアにまとまります。

相性の良い機材

相性の良いギターアンプ

B3Kはベース用ペダルのため、組み合わせるのはベースアンプが基本です。

  • Ampeg SVT系:300W級で図太く押し出しの強い、ロックの定番ベースアンプです。アンプをクリーン〜軽いクランチに保ち、歪みはB3Kで作るのが王道で、土台の太さとB3Kのモダンな歪みが両立します。
  • Darkglass Microtubes シリーズ(同社ベースアンプ/ヘッド):B3Kと同じ思想で設計されたモダンなベースアンプです。ブランド内で音作りの方向性が揃っており、ハイファイでタイトなモダンメタル系サウンドが素直に出ます。
  • フラットなクリーン系ベースアンプ全般:色付けの少ないトランスペアレントなアンプで、B3Kの歪みキャラクターをそのまま出せます。アンプで余計な味付けをしないぶん、Blendの効果がわかりやすくなります。

相性の良いエフェクター

  • コンプレッサー(ベース用):アタックとダイナミクスを揃える役割です。コンプ → B3K の順で入力を整えると、刻みの粒が安定して歪みのムラが減ります。
  • オクターバー:1オクターブ下を足して重低音を補強します。B3Kでバキバキに歪ませると軽く感じる場面で、下にローを敷いて迫力を底上げできます。
  • DI / プリアンプ(B7Kなど):PA・録音用の信号を整える役割です。B3Kは歪みに特化しているため、EQやDI機能を持つ機材と組ませると現場での運用がしやすくなります。

兄弟機・派生機

Microtubes B3K V2

B3Kの後継にあたる現行モデルです。歪み回路はそのままに、初代のAttackトグルを可変式のTone(3kHz〜8kHzのローパスフィルター)ノブに変更し、高域の調整幅を大幅に拡大しています。さらにMid Boost(300Hz〜1kHzを6dB持ち上げる)スイッチを追加して中域を補えるようになり、Gruntは「Raw/Fat」の切替に整理されました。より細かく追い込める進化版です。

Microtubes B7K

B3Kの上位にあたる兄貴分です。B3Kの歪み回路に4バンドEQとバランスドDI(XLR出力)を追加した多機能版で、歪みだけでなくプリアンプ/DIとして1台で完結させたい人向けです。B3Kはあくまで歪みに特化したシンプル構成になります。

Vintage Microtubes

B3Kの姉妹機にあたる、別キャラクターのモデルです。B3Kがモダンでバキバキした歪みなのに対し、こちらは名前の通りより温かくヴィンテージ寄りの歪みキャラクターです。同じBlend思想ですが、音の方向性が異なります。

モデリング・シミュレーション

エフェクターのモデリングとは、実機の回路や音響特性をデジタル技術で再現したもので、実機を用意しなくてもそのサウンドを手軽に使えるようにした機能です。B3Kはベース用ハイゲインの代表格として、一部のモデラーに収録されています。

QUAD CORTEX における収録

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種別モデル名元となった実機
EffectMicrotubes B3KDarkglass Microtubes B3K

QUAD CORTEX(Neural DSP)には、実機名をそのまま使った「Microtubes B3K」がベースオーバードライブとして収録されています。CorOS 1.0.0から搭載されており、実機同様にBlendで原音を残しながらモダンに歪ませる挙動が再現されています。

Fractal Audio Systems における収録

Fractal Audio機器(Axe-FX III、FM9、FM3等)のDriveブロックには、B3Kそのものを再現したモデルは収録されていません。Darkglass系としては上位機B7Kをモデリングした「Blackglass 7K」が収録されていますが、これはB3Kではなく、4バンドEQを備えた兄貴分B7Kがベースです。したがってB3K単体としては、Fractal Audioの現行ラインナップには収録されていません。

LINE6 HELIX における収録

LINE6 HELIXのエフェクトリストにあるDarkglass系モデルは「Obsidian 7000」のみで、これはMicrotubes B7K Ultraをベースにしたものです。B3Kに該当するモデルは存在しないため、B3Kとしては現行ラインナップには収録されていません。

Kemper における収録

KemperのストンプエフェクトにはB3Kを再現したモデルは用意されていません。Kemper公式フォーラムでもB3K/B7Kのようなベースディストーションのストンプはユーザーからのリクエストとしてはありますが、純正の収録には至っていません。したがってKemperのストンプエフェクトには収録されていません(ユーザー作成のリグやプロファイルで近い音を狙う例はありますが、公式モデルではありません)。

使用アーティスト

海外のアーティスト

  • Justin Meldal-Johnsen/オルタナティブ、セッション・ベーシスト:Beck、Nine Inch Nails、M83等で活動しています。Darkglass公式にB3Kのアーティストとして掲載されています。
  • Alex Webster(Cannibal Corpse)/デスメタル:ベースを激しく歪ませる使い手として知られ、機材データベースでB3Kの使用が報告されています。
  • Adam “Nolly” Getgood(ex-Periphery)/プログレッシブ・メタル、ジェント:モダンメタルのベースサウンドの旗手です。Darkglass系サウンドの普及に関わった代表的な使い手として言及されます。
  • Paul D’Amour(ex-Tool)/オルタナティブ・メタル:B3Kの「クリスプ(くっきりした)なキャラクター」を評価していると報告されています。

よくある疑問

B3K V2やB7Kとはどう違いますか?

B3K V2は、B3Kの歪み回路はそのままに高域とアタックの調整幅を広げた後継機です。Attackトグルが可変式のToneノブになり、Mid Boostスイッチも加わっています。B7Kは4バンドEQとバランスドDI(XLR出力)を追加した上位機で、プリアンプ/DIとして1台で完結させたい人向けです。

QUAD CORTEXがあれば実機は不要ですか?

QUAD CORTEXにはCorOS 1.0.0から「Microtubes B3K」が収録されており、Blendで原音を残しながらモダンに歪ませる挙動が再現されています。手軽に試す目的ならモデラーで足ります。なお、Fractal AudioやLINE6 HELIX、Kemperには、B3K自体を再現したモデルは収録されていません。

ギターに使っても問題ありませんか?

おすすめしません。B3Kはベース専用に設計されており、ギター用の歪みとは帯域設計が異なります。ギターに使うと意図した音にならないことが多く、ベース用と理解して導入するのが前提になります。

ユーザーの評価と注意点

評価されている点

  • Blendで低域の芯を残したまま歪ませられる:歪み音に原音を混ぜられるため、ベースで起こりがちな「歪ませると低音がやせる」問題を回避できます。これがB3Kが定番化した最大の理由として繰り返し語られています。
  • ピッキングのアタックがそのまま出るモダンな歪み:ジェントやモダンメタルの刻みで、ピックの一発一発が「バキバキ」と前に出ます。アグレッシブな現代的ベースサウンドの代名詞として評価されています。
  • Grunt+Attackで歪みの帯域を能動的に作れる:低域の量と高域のアタックを切り替えられるため、「タイトに締める」か「分厚く歪ませる」かを場面で選べる柔軟さがレビューで好評です。
  • DI直結でも完成度の高い歪みが出る:アンプに頼らずPAや録音に直接送っても音が作り込めるため、ライブ・宅録の両方で使い勝手が良いと評価されています。

注意点

  • 電池が使えずアダプター必須:9Vアダプター専用で電池駆動に非対応です。電源を必ず用意する必要があるため、運用時に留意したい点です。
  • 初代はEQノブがなく音の微調整幅が限られる:初代B3KはTone的なノブを持たず、高域はAttackトグルの切替のみです。細かく追い込みたい人はToneノブを備えたV2が向く、という声があります。
  • あくまでベース専用設計:ギター用の歪みとは帯域設計が異なるため、ギターに使うと意図した音にならないことが多くなります。ベース用と理解して導入する必要があります。
  • 歪み単機能ゆえEQ/DIは別途必要:B7Kのような4バンドEQやXLR出力は持たないため、現場でのEQ補正やDI機能が欲しい場合は別の機材を組み合わせる前提になります。

まとめ

Darkglass Microtubes B3Kは、「Blendで低域の芯を残す」「ピッキングがそのまま歪みになるモダンな質感」「DI直結でも完結する実用性」がそろった、ベース用ディストーションのひとつの基準点です。ギター用の歪みでは満足できなかったベーシストに、新しい選択肢を切り開いた歴史的な一台でもあります。

こんな演奏をしたい方に特におすすめです。

  • モダンメタルやジェント、プログレ系で、ベースをバキバキに歪ませて前に出したい方
  • 歪ませても低音の芯を失いたくない方(Blendの効果を体感してほしい)
  • アンプに頼らず、DIや宅録で完成度の高い歪みベースサウンドを作りたい方
  • ピッキングのニュアンスを音にしっかり反映させたい方

派手なツマミの数で勝負するペダルではありませんが、踏んだ瞬間にベースの存在感が一段引き上がる、頼れる相棒です。ベース用ハイゲインの世界がどう変わったのか、ぜひ自分の指で確かめてみてください。

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この記事を書いた人

趣味はギター、カメラ、料理。
好きなものはメタルコア、ビール、CAPCOM、FROMSOFTWARE。

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