Klon Centaur|ギター用オーバードライブペダルの名機を解説

Klon Centaur オーバードライブ

Klon Centaurは、原音を保ったままゲインと音圧を足す「トランスペアレント系」の元祖にあたるオーバードライブペダルです。1994年にビル・フィネガンが発売し、オリジナルは2008年頃に製造終了となったあと、2014年に後継機のKTRが登場しています。

オーバードライブの世界で「伝説」という言葉が最もよく似合う一台が、Klon Centaur(クロン・ケンタウル)です。Klon Centaurは「トランスペアレント・オーバードライブ(原音のキャラクターをほとんど変えずに、ゲインと音圧だけを上乗せするタイプの歪み)」というジャンルそのものの代名詞であり、後に続く数えきれないクローンの元祖となった存在です。1994年の登場以来、その独特な「歪んでいるのに原音が透けて見える」サウンドは、ブルース、ロック、ポップス、オルタナティブまで幅広いプレイヤーに愛されてきました。

クリーンアンプにつないでわずかに色付けするブースト用途から、軽いクランチまでをこなす懐の広さ、そして中身を黒い樹脂で塗り固めて回路を隠した謎めいた筐体、製作者本人がアパートで手作りしていたという逸話、中古市場で数十万円という常軌を逸した高騰など、多くの要素が重なっています。「なぜこのペダルがここまで話題になるのか」を一言で言えば、サウンドの良さと伝説性が分かちがたく結びついた、オーバードライブ界の特別な一台だからです。

名機サクッと解説

「よく見るけど詳しいこと知らないなぁ…」
そんな名機を端的に知って、より楽しむための試みです。

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主な特徴とスペック

スペック面の要点は、Gain・Treble・Outputだけの3ノブというシンプルな操作系と、内部昇圧による広いヘッドルーム、バッファードバイパスです。

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エフェクトの種類オーバードライブ(トランスペアレント系の元祖)
コントロールGain・Treble・Outputの3ノブ
電源DC 9V 外部アダプター(センターネガティブ)
入出力端子モノラル1系統(インプット・アウトプット各1)
バイパス方式バッファードバイパス
筐体サイズ横長の大型金属ダイキャストケース
製造国 / ブランドアメリカ製(ビル・フィネガンの手作り)
発売年1994年(オリジナルは2008年頃に製造終了)

オーバードライブは、真空管アンプを大音量で鳴らしたときのような、倍音豊かで温かい歪みを付加するエフェクトです。Klon Centaurは、原音を保ちやすい「トランスペアレント系」の元祖とされています。

3つのノブは、Gain(歪みの量。クリーン信号と歪み成分をブレンドする独自構成)、Treble(高音域を調整するアクティブEQ。約400Hzより上を増減させます)、Output(全体の出力レベル)です。電源は内部で電圧を昇圧しており、ヘッドルームの広い動作を実現している点が大きな特徴です。

バイパス方式のバッファードバイパスとは、オフ時も内部のバッファ回路を経由して信号を通す方式で、ロングケーブルでの高域劣化を防ぎます。オフ時にわずかに低域が削れると指摘するユーザーもいます。

筐体は一般的なBOSSコンパクトより一回り大きい横長の金属ダイキャストケースで、回路は黒い樹脂で塗り固められ、設計が見えないようになっています。製作者のビル・フィネガン(Bill Finnegan)が自身のアパートで全数を手作りしていました。現在はオリジナルのCentaurは2008年頃に製造終了となり、後継機「KTR」が入手可能です。

どんな音がするのか

Klon Centaurのサウンドを一言で表すなら「歪ませても原音が濁らない、透明感のあるオーバードライブ」です。

全体的なキャラクターとして、Tube Screamer系(Ibanez TS9など)と比べると中音域の盛り上がり(ミッドハンプ)がほとんどなく、原音のEQバランスをそのまま保ちます。TS9が「ミッドを押し出して音を前に出す」のに対し、Klonは「ギターとアンプの素の音はそのままに、歪みと張りだけを足す」イメージです。この「足し算しているのに引き算したように聞こえる」感覚が、トランスペアレント系と呼ばれるゆえんです。

周波数帯域は低域がしっかり保たれつつ締まっており、Trebleノブで高域に独特のキラッとした艶を加えられます。歪みの質感とゲイン量については、内部昇圧によるヘッドルームの広さが効いていて、Gainを絞ればほぼクリーンなブースト、上げても軽いクランチ止まりで、ディストーションのように激しくは歪みません。あくまで「クリーン〜軽い歪み」のレンジに特化した一台です。

ダイナミクスへの追従性が非常に高く、ピッキングの強弱やギターのボリューム操作にそのまま反応します。ボリュームを絞ればスッとクリーンに戻り、上げれば歪みが立ち上がります。コードを鳴らすと各弦がクリアに分離して聞こえ、混濁しにくいのも持ち味です。弾いていると「自分のタッチがそのまま出る」感覚が強く、表現力を活かしたいプレイヤーに好まれます。

定番の使い方として、Fender系クリーンアンプの前に置き、Gain控えめ・Output高めにセットして「常時オンの色付け/ブースト」として使うパターンが王道です。Marshall系の歪みチャンネルの前に置けば、アンプの歪みをタイトに前へ押し出すブースターとしても機能します。

開発と使用のエピソード

Klon Centaurは、ボストン在住のエンジニア、ビル・フィネガンが2人のMITエンジニアと組んで1990年から1994年にかけて開発し、1994年に発売されました。フィネガンが目指したのは「真空管アンプを大音量で鳴らしたときの、倍音豊かな歪みを再現する」こと。完成後は彼自身が自宅アパートで一台ずつ手作りし、その手作業が約15年間続いたという、ブティックペダルの草分け的な逸話を持っています。

最大の謎が、回路を黒い樹脂(goop)で塗り固めて隠した内部です。クローンを防ぐ目的とされ、これがかえって「中身は何なのか」という好奇心とミステリアスな伝説性を煽りました。生産終了後は中古市場で価格が暴騰し、数十万円という値が付くこともある「伝説のペダル」と化していきます。

あまりの過熱ぶりに対し、フィネガンは2014年に後継機「KTR」を発表しました。KTRの筐体には「Kindly remember: the ridiculous hype that offends so many is not of my making(馬鹿げた過熱ぶりは私が望んだものではない、とどうかご記憶を)」という皮肉混じりの一文が刻まれています。KTRはオリジナルのサウンドを小型筐体で再現しつつ、バッファードとトゥルーバイパスを切り替えられるスイッチを新たに搭載しました。

使い手としては、ジェフ・ベック(Jeff Beck)、ジョン・メイヤー(John Mayer)、ジョー・ペリー(Joe Perry/Aerosmith)、ネルス・クライン(Nels Cline/Wilco)、エド・オブライエン(Ed O’Brien/Radiohead)といった名手たちがKlon系の回路を愛用してきたことで知られます。とりわけジョン・メイヤーは、クリーン基調のトーンに自然な張りと粘りを足す用途でKlonサウンドを印象づけたプレイヤーの一人です。

使い方と信号チェーンでの位置づけ

信号チェーン(シグナルチェーン: ギターからアンプまでの音の経路)での基本的な位置は、ギター側の前段です。コンプレッサーやワウの後、ディレイ・リバーブといった空間系の前に置くのが定番です。歪みアンプをブーストする場合はアンプのインプットに直接つなぎます。ただしKlonは優秀なバッファを内蔵しているため、ボードの先頭付近に置いて常時オンにし、バッファ兼ブースターとして使うプレイヤーも多くいます。

典型的なセッティング例:

  • 常時オンの色付け/クリーンブースト(最も定番): Gain = 8〜10時(低め)、Treble = 12時、Output = 1〜3時(原音より大きめ)。クリーンアンプにつなぎ、原音に張りと音圧だけを足します。
  • 軽いクランチ用途: Gain = 12〜2時、Treble = 11〜1時、Output = 12時前後。クリーンアンプで、エッジの効いたロックトーンを作ります。
  • アンプブースター用途: Gain = 9〜11時、Output = 1〜3時。歪んでいるアンプの前に置き、ゲインとタイトさを足してソロを前に出します。

アンプとの組み合わせでは、Fender系クリーンアンプとの相性が王道です。原音を保つ性質ゆえ、アンプ本来のクリーンの美しさを損なわずに張りを足せます。Marshall系の歪みチャンネルをブーストする場合も、ミッドが過剰でないため飽和しすぎず、タイトに締める方向に働きます。Trebleノブは効きが鋭いので、上げすぎると高域がキツくなりやすく、12時付近を基準に追い込むとまとまります。

重ね使いでは、Klonの後ろにさらに別のオーバードライブを重ねる「ゲインスタッキング(歪みの段重ね)」が定番です。Klonをローゲインの土台にして音圧を稼ぎ、その後段で本命の歪みを加えると、まとまりのある分厚いトーンが作れます。

相性の良い機材

相性の良いギターアンプ

  • Fender Twin Reverb / Deluxe Reverb:22〜85Wの煌びやかなクリーンを持つアンプです。原音を保つKlonの性質と相性抜群で、アンプのクリーンを損なわず張りと粘りを足せるため、ブルース/ポップス系の定番の組み合わせとなっています。
  • Marshall系(Plexi / JCM800等):50〜100Wの、中域の効いた英国サウンドを持つアンプです。歪みチャンネルの前に置くブースターとして人気があり、ミッドが過剰でないためタイトに締まり、リードが前に出ます。
  • Vox AC30:30Wで、チャイミーで煌びやかな中高域を持つアンプです。AC30のジャングリーなクリーンにKlonの張りを足すと、コードの分離感を保ったままリッチに鳴り、ブリティッシュ系で好まれます。

相性の良いエフェクター

  • 別のオーバードライブ(Tube Screamer系等):歪みの段重ねとして定番です。Klonを土台、TS系を本命にする「ゲインスタッキング」で、Klonで音圧を、TS系で歪みのキャラを足すと分厚くまとまります。
  • ディレイ・リバーブ:空間的な広がりを足します。Klon → 空間系の順が基本で、原音をクリアに保つKlonの後段で広げると、音像が濁らず立体感が出ます。
  • ファズ(Fuzz Face系等):Klonのバッファでファズを安定させます。ヴィンテージ系ファズはバッファ前置で挙動が不安定になりがちですが、Klonをブースト兼バッファとして後段に置くと扱いやすくなります。

兄弟機・派生機

Klon KTR(2014年)

ビル・フィネガン本人による公式後継機です。オリジナルと同じサウンドを小型筐体で再現し、バッファード/トゥルーバイパスの切り替えスイッチを追加しています。表面実装部品を採用しています。

なお、Klon Centaurは「世界で最もクローンされたペダル」とも言われ、各社から多数の互換機(クローン)が発売されています。それらはKlonの兄弟機ではなく回路を模した別メーカー製品のため、本記事の派生機には含めていません。

モデリング・シミュレーション

エフェクターのモデリングとは、実機の回路や音響特性をデジタル技術で再現したもので、実機を用意しなくてもそのサウンドを手軽に使えるようにした機能です。Klon Centaurは入手困難かつ高価なため、各社のマルチエフェクター/モデラーに「実機の代わりに使える定番ドライブ」として収録されている価値が特に高い一台です。

QUAD CORTEX における収録

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種別モデル名元となった実機
EffectMyth DriveKlon Centaur

QUAD CORTEXのGuitar effectsセクションには、Klon Centaurを再現したモデルが「Myth Drive」として収録されています(CorOS 1.0.0で追加)。「Myth(神話)」という名がまさにKlonの伝説性を反映しており、実機同様のトランスペアレントなブースト〜軽いオーバードライブが得られます。

Fractal Audio Systems における収録

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種別モデル名元となった実機
EffectKlone ChironKlon Centaur

Fractal Audio機器(Axe-FX III等)のDriveブロックには、Klon Centaurをモデリングした「Klone Chiron」が収録されています。これはファームウェア20.03で予告なく追加された「イースターエッグ」的なモデルとして話題になりました。「Klone(クローン)」と、ケンタウロスにまつわる賢者ケイロン(Chiron)をかけたネーミングです。

LINE6 HELIX における収録

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種別モデル名元となった実機
EffectMinotaurKlon Centaur

LINE6 HELIXのDistortionカテゴリには、Klon Centaurをベースにした「Minotaur(ミノタウロス)」が収録されています。LINE6は商標上の理由から独自のもじり名称を使っており、ギリシャ神話つながりの「Minotaur」が「Centaur(ケンタウロス)」に相当するモデルです。Helixユーザーの間でも最も使われるドライブの一つとして定評があります。

Kemper における収録

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種別モデル名元となった実機
EffectKemper Drive(統合型)Klon Centaurほか複数機種

Kemperでは、OS 8.0以降に追加された「Kemper Drive」がKlon Centaur系のサウンドをカバーします。これはKlon Centaurのほか、Tube Screamer(TS808/TS9)、Boss OD-1/SD-1、Analogman King of Tone、Timmyなど複数の名機にインスパイアされた統合型のオーバードライブで、個別のペダルを1つずつ独立再現したものではなく、1台で各種ドライブのキャラクターをシームレスに行き来できる設計です(Kemperが「One to rule them all」と称するアルゴリズム)。Klon Centaurはこの参照元ペダルの一つとして公式に明示されています。

使用アーティスト

海外のアーティスト

  • John Mayer/ブルース、ポップ、ロック:クリーン基調のトーンに自然な張りを足す用途でKlonサウンドを印象づけたプレイヤーの一人です。
  • Jeff Beck/ロック、フュージョン、インストゥルメンタル:Klon系の回路を使用したことで知られる名手です。
  • Joe Perry(Aerosmith)/ハードロック:Aerosmithのギタリストで、Klonの使用が複数の機材情報で挙げられます。
  • Nels Cline(Wilco)/オルタナティブ、実験的ロック:Wilcoのギタリストで、多彩なペダルボードの中でKlon系を用いることで知られます。
  • Ed O’Brien(Radiohead)/オルタナティブロック:RadioheadのギタリストでKlonの使用が機材情報で挙げられます。

よくある疑問

Klon Centaurと後継機KTRの違いは何ですか?

主な違いは筐体の大きさとバイパスの切り替えです。KTRは、ビル・フィネガン本人による2014年発売の公式後継機で、オリジナルのサウンドを小型筐体で再現しています。さらに、バッファードとトゥルーバイパスを切り替えるスイッチが追加され、表面実装部品が採用されています。

QUAD CORTEXがあれば実機は不要ですか?

入手困難で高価なオリジナルの代わりとしては、十分に現実的です。QUAD CORTEXにはKlon Centaurを再現した「Myth Drive」が収録されており、実機同様のトランスペアレントなブースト〜軽いオーバードライブが得られます。Fractal Audioの「Klone Chiron」やLINE6 HELIXの「Minotaur」など、各社のモデラーにも同系統のモデルがあります。

ユーザーの評価と注意点

評価されている点

  • 原音を保つトランスペアレントなサウンド:ギターとアンプの素の音を崩さず歪みと張りだけを足せます。「色付けが少ないのに音が良くなる」という声が多く、トランスペアレント系の基準とされています。
  • 内部昇圧による広いヘッドルーム:9V電源を内部で昇圧しているため、音がつぶれにくくダイナミックレンジが広くなっています。クリーンブースト〜軽い歪みまで余裕を持って鳴らせます。
  • 優秀なバッファ:常時オンでバッファ兼ブースターとして使うプレイヤーが多く、ファズなど後段の機材を安定させる用途でも重宝されています。
  • 圧倒的な伝説性・資産価値:オリジナルは中古市場で高値が付き、所有すること自体に特別感があります。「弾く道具であると同時に伝説」という稀有な存在です。

注意点

  • オリジナルは極めて高価で入手困難:中古市場で数十万円に達することもあり、純粋なサウンド目的なら後継機KTRやクローン、各社モデリングの方が現実的という指摘が多く見られます。
  • 激しい歪みは作れない:あくまでクリーン〜軽いクランチ向けで、ディストーションのような飽和した歪みは単体では得られません。ハイゲインを期待すると物足りなく感じます。
  • バッファードバイパスゆえオフ時も音に影響する:トゥルーバイパスを好むプレイヤーには、オフ時にわずかに低域が削れる感覚が気になる場合があります(KTRでは切り替え可能です)。
  • 過熱した相場と模倣品リスク:人気ゆえに偽物やニセの「クローン」も流通しており、オリジナルの真贋を見極めるのが難しいという声があります。

まとめ

Klon Centaurは、「原音を保つトランスペアレントな歪み」「内部昇圧による広いヘッドルーム」「中身を隠した謎の筐体と中古高騰の伝説」が一体となった、オーバードライブ界の特別な一台です。激しく歪ませる道具ではありませんが、クリーン〜軽いクランチの領域で「音はそのまま、ただ良くなる」感覚は唯一無二です。後に続く無数のクローンが、その完成度を何より雄弁に物語っています。

こんな演奏をしたい方に特におすすめです。

  • クリーンアンプの音を崩さず、張りと音圧だけを足したい方(ブルース/ポップス/オルタナ系)
  • ピッキングやボリューム操作のニュアンスを活かした、表現力重視のプレイをしたい方
  • 歪みアンプを前段からタイトにブーストしたい方
  • 「伝説のサウンド」を自分の手で確かめてみたい方(実機が難しければKTRや各社モデリングから)

派手に歪ませる一台ではありませんが、踏んだ瞬間に「音が一段良くなる」あの感覚は、一度味わうと手放せなくなります。オリジナルが高嶺の花でも、後継機KTRやモデラー内の「Myth Drive」「Klone Chiron」「Minotaur」などから、その神話のサウンドにぜひ触れてみてください。

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この記事を書いた人

趣味はギター、カメラ、料理。
好きなものはメタルコア、ビール、CAPCOM、FROMSOFTWARE。

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