BOSS MT-2とは?名機サクッと解説

「とにかく激しく歪むディストーションが一台ほしい」という方が必ず一度は通る道、それがBOSS MT-2 Metal Zone(メタルゾーン)です。MT-2はディストーション(オーバードライブよりも深く、潰れた激しい歪みを作るエフェクト)に分類される、BOSSの高ゲインペダルを代表するロングセラー。1991年の登場以来ほとんど仕様を変えずに作り続けられ、BOSSの歪み系では歴代屈指の販売数を誇る一台です。

MT-2の最大の個性は、単なる「激歪み」だけではありません。High・Lowに加えて中音域を周波数ごと動かせるパラメトリックEQ(中域のどの帯域を上げ下げするかを自分で選べるイコライザー)を搭載し、極端なまでにトーンを作り込めます。スクープした(中域をごっそり削った)ヘヴィなリフから、ミドルを突き出したリードまで、これ一台で守備範囲がとても広い。メタルやハードコアはもちろん、アンプを問わず「自分だけの歪み」を彫り込みたいプレイヤーに刺さる、クセも実力も飛び抜けた一台です。

名機サクッと解説

「よく見るけど詳しいこと知らないなぁ…」
そんな名機を端的に知って、より楽しむための試みです。

CONTENTS

Boss MT-2の主な特徴とスペック

項目内容
エフェクトの種類ディストーション(オーバードライブより深く潰れた、激しい歪みを付加するエフェクト)。高ゲイン+強力なEQセクションを備える
コントロールLevel(エフェクト音の出力レベル)、Dist(歪みの量)、High(高音域の増減)、Low(低音域の増減)、Middle(中音域の増減)、Mid Freq(中音域で増減させる周波数を選ぶツマミ)の6コントロール。MiddleとMid Freqが2連の二段ツマミになっており、High・LowのシェルビングEQと合わせて、中域可変のパラメトリックEQを構成する
電源9Vバッテリー(006P)またはDC 9V 外部アダプター(PSAシリーズ、センターネガティブ極性)。消費電流 約20mA
入出力端子モノラル1系統(インプット・アウトプット各1)
バイパス方式バッファードバイパス(エフェクターをオフにした際、内部のバッファ回路を経由して信号を通す方式。ロングケーブルでの高域劣化を防ぐが、常時音に薄く影響するため、True Bypass化の改造を施すユーザーもいる)
筐体サイズ70(幅) × 125(奥行) × 55(高さ) mm(BOSSコンパクト共通サイズ)
重量410g
製造国 / ブランドBOSS(ローランド傘下)。1991年発売時点ですでに生産は台湾に移行しており、現行品も台湾製
発売年1991年(現行品として生産継続中。30年以上のロングセラー)

Boss MT-2はどんな音がするのか

MT-2のサウンドを一言で表すなら「分厚くてタイト、そしてEQで顔がガラッと変わる、超高ゲインのディストーション」です。

全体的なキャラクターとして、SD-1やTube Screamer(Ibanez TS9など)のような「アンプを軽く押す」タイプの歪みとは別物です。MT-2はそれ単体でモダンメタル級の飽和した歪みを作り切れる、いわば「歪みを完成させるためのペダル」。クリーンアンプにつないでも、踏んだ瞬間に厚く重いディストーションが立ち上がります。

歪みの質感はゲインが非常に深く、Distを上げていくとロングサステイン(音が長く伸びること)が得られ、ハーモニクス(倍音)も出しやすくなります。ゲイン量は同じBOSSのDS-1と比べても一段も二段も深く、Distを上げれば刻みでもリードでも飽和した壁のような歪みになります。一方でDistを絞ればミッドゲインのロックトーンまで落とせるので、見た目の印象ほど一本調子ではありません。

このペダルの真骨頂がEQセクションです。High・Lowに加え、Mid Freqで「どの中域を動かすか」を選び、Middleでその帯域を最大±15dB近く増減できます。Mid Freqを低めに設定してMiddleを絞れば、いわゆるスクープサウンド(中域をV字にえぐった、メタルらしいドンシャリ)に。逆にMid Freqを高めにしてMiddleを上げれば、ソロで前に出る鼻づまり気味の太いリードトーンになります。同じペダルとは思えないほど音が変わるので、「EQで遊べるディストーション」と言えます。

ダイナミクスへの追従性は、ゲインの深さゆえにオーバードライブほど繊細ではありません。ピッキングの強弱は出ますが、基本は「踏めば常に厚い」キャラクター。ギターのボリュームを絞るとクリーン寄りにはなりますが、歪みが深いぶん完全なクリーンには戻りにくい印象です。弾いていて感じるのは「とにかく音が分厚くて埋もれない」という頼もしさ。コードを刻んでも芯が消えず、単音リードはどこまでも伸びます。

どのアンプと組み合わせるかでいうと、MT-2はFender系のクリーンアンプに単体でつなぎ、ペダル側で歪みもEQも完結させる使い方が基本です。すでに歪んでいるアンプの前に重ねると過剰になりやすいので、相手は素直なクリーン〜クランチがまとまりやすいでしょう。EQが超強力なぶん、アンプ側のトーンは控えめにして、MT-2側で音作りを追い込むのがコツです。

Boss MT-2のエピソード

MT-2は、BOSSの初代メタル系ペダル「HM-2 Heavy Metal」(1983年)と「MT-2の前段にあたるHM-3」の系譜を受け継ぎ、1991年に登場しました。HM-2が固定的なEQだったのに対し、MT-2は中域可変のパラメトリックEQを大胆に搭載し、「ペダル一台で歪みもEQも完結させる」という思想を打ち出した点が最大の進化です。以来、基本仕様をほぼ変えずに作り続けられ、BOSSの歪み系の中でも歴代屈指のセールスを記録しました。

MT-2は「賛否が激しいペダル」としても語り草で、ハイゲインなぶん使いこなしが難しいという声と、逆に「使い方次第で唯一無二」という声が両方あります。その象徴的な使い手が、スウェディッシュ・デスメタルのAt the Gatesです。彼らは1995年の名盤『Slaughter of the Soul』(収録曲「Blinded By Fear」など)で、同じBOSSのHM-2にMT-2を重ねて信号を通し、歪みをタイトに引き締めるという独特の使い方をしたことで知られます。

意外なところでは、プリンス(Prince)が1993年録音の「The Undertaker」でMT-2の高ゲインなギターサウンドを使用しています。また、オルタナティブ/ハードコアの世界でもMT-2は根強く、カート・バルー(Kurt Ballou/Converge)はあえてゲインを絞りEQをフラットにして、ボリュームでアンプの前段を押す変則的な使い方をすることで知られています。さらに、コーンのマンキー(James “Munky” Shaffer)が「Did My Time」でローファイな質感を得るために使うなど、メタルの枠を超えて愛用者がいるのも面白いところです。

Boss MT-2の使い方と信号チェーンでの位置づけ

信号チェーン(シグナルチェーン: ギターからアンプまでの音の経路)での基本的な位置は、ギター側の前段です。ワウやコンプの後、ディレイ・リバーブといった空間系の前に置くのが定番。MT-2は単体で歪みを完成させるタイプなので、クリーンアンプのインプットに直接つなぎ、ペダル側で音を作り切るのが王道です。歪んだアンプのエフェクトループ(プリアンプ後段の端子)には通常入れません。

典型的なセッティング例:

  • メタルのバッキング(ドンシャリ): Dist = 1〜3時、Low = 1〜2時、High = 12〜1時、Mid Freq = 低め(8〜10時)、Middle = 9時以下に絞る。中域をえぐったタイトな刻み向き。
  • リードトーン(前に出す): Dist = 12〜2時、Mid Freq = 高め(1〜3時)、Middle = 1〜2時に上げる。中域を突き出してソロで埋もれないようにする。
  • クランチ〜ミッドゲイン: Dist = 9〜11時、High/Low/Middle = 12時付近からスタート。歪みを浅めにして、EQでアンプのキャラに寄せる。

アンプとの組み合わせでは、Fender系のクリーンアンプに単体でつなぐのが最も扱いやすい組み合わせです。MT-2はEQが極端に強力なので、アンプのトーンはフラット寄りにしておき、ペダル側で音作りを完結させると破綻しにくくなります。逆に、もともとミッドが強く歪むMarshall系の歪みチャンネルに重ねると、過剰になって扱いづらく感じることが多いので、相手はクリーン〜クランチを基準にしましょう。

重ね使いでは、後段にノイズゲートを置くのが定番です。ゲインが深いぶんノイズも乗りやすいので、リフの隙間を締めると一気に実用的になります。また、MT-2の前にオーバードライブ(SD-1など)を薄く足して、低域をタイトにしてからMT-2に突っ込む「ゲインスタッキング(歪みの段重ね)」も、刻みの輪郭を出したいメタル系で有効です。

Boss MT-2と相性の良い機材

相性の良いギターアンプ

アンプ出力 / 特徴MT-2との組み合わせが人気な理由
Fender Twin Reverb / Deluxe Reverb22〜85W / クリーンで中域が控えめMT-2を単体ディストーションとして使う定番の相手。素直なクリーンにMT-2側で歪みもEQも作り込める。アンプが余計な色付けをしないぶんEQが素直に効く
Roland JC-120(ジャズコーラス)120W / 国民的なソリッドステートのクリーン歪まないクリーンアンプにペダルで歪みを足す王道。MT-2の厚い歪みがJCのフラットなクリーンと噛み合い、宅録やスタジオで現実的な組み合わせ
素直なクリーンチャンネルを持つアンプ全般MT-2はEQが強力で歪みも自己完結するため、アンプ側がフラットなほど狙った音を出しやすい。アンプの歪みに頼らない使い方が基本

相性の良いエフェクター

エフェクター役割この組み合わせが定番な理由
ノイズゲート(Boss NS-2等)ハイゲイン時のノイズ処理MT-2はゲインが深くノイズが乗りやすい。後段にゲートを入れるとリフの隙間が締まり、刻みがタイトになる
オーバードライブ(Boss SD-1、TS系等)前段で低域を整えるMT-2の前に薄く挿し、低域をタイトにしてから突っ込む「ゲインスタッキング」。刻みの輪郭がはっきりする
ディレイ・リバーブ(Boss DD系等)空間的な広がりを足すMT-2 → 空間系 の順が基本。歪みを作った後段で広げることで、厚い音像が濁らない

Boss MT-2の兄弟機・派生機

モデル発売年MT-2との違い
HM-2 Heavy Metal1983年MT-2の祖先にあたるメタル系ペダル。EQは固定的でMid Freqのような可変はなく、より荒く中域の効いた「チェーンソー」的サウンド。スウェディッシュデスメタルの象徴として再評価され復刻もされた
MT-2W(技 WAZA Craft)2021年MT-2の高品位版。オリジナルを磨いたStandardモードに加え、よりワイドレンジでローがタイト、ダイナミクスも豊かな「Custom」モードを搭載。EQはMT-2同様、中域可変のパラメトリック
ML-2 Metal Core2005年MT-2より歪みを深く尖らせたメタル特化機。EQはMT-2ほど作り込めない代わりに、よりモダンでアグレッシブな方向に振った設計

Boss MT-2のモデリング・シミュレーション

エフェクターのモデリングとは、実機の回路や音響特性をデジタル技術で再現したもので、実機を用意しなくてもそのサウンドを手軽に使えるようにした機能です。MT-2のような定番ペダルは、各社のマルチエフェクター/アンプシミュレーターに高い確率で収録されています。

Boss MT-2のQUAD CORTEXにおけるモデリング

種別モデル名元となった実機
EffectChief MTBOSS MT-2 Metal Zone

QUAD CORTEX(Neural DSP)のGuitar effectsセクションには、MT-2を再現したモデルが「Chief MT」として収録されています。BOSSペダルを束ねた「Chief」シリーズの一員で、実機同様にHigh・Low・Mid・Mid Freqを操作でき、あのスクープした激歪みからリードトーンまで作り込めます。

Boss MT-2のFractal Audio Systemsにおけるモデリング

種別モデル名元となった実機
EffectM-Zone DistBOSS MT-2 Metal Zone

Fractal Audio機器(Axe-FX、FM9、FM3等)のDriveブロックには、MT-2をモデリングした「M-Zone Dist」が収録されています。名称はMetal Zoneに由来しており、Fractal Audioフォーラムでも実機MT-2ベースであることが明示されています。実機同様のパラメトリックEQ的な作り込みが可能です。

Boss MT-2のLINE6 HELIXにおけるモデリング

種別モデル名元となった実機
EffectHeavy DistBOSS MT-2 Metal Zone

LINE6 HELIXのDistortionカテゴリ(Legacy/旧世代から引き継がれたモデル群)には、MT-2をベースにした「Heavy Dist」が収録されています。LINE6は商標上の理由から独自の名称を使っており、「Heavy Dist」がMT-2 Metal Zoneに相当するモデルです。ただし実機にある中域可変のパラメトリックEQはモデル側には備わっておらず、より簡略化されたトーンコントロールになっている点は実機との違いです。

Boss MT-2のKemperにおけるモデリング

種別モデル名元となった実機
EffectMetal DSBOSS MT-2 Metal Zone

Kemperのストンプエフェクトには、MT-2を直接モデリングした「Metal DS」が収録されています。これはGreen Scream(Tube Screamer系)やMouse(ProCo Rat系)などと同様に、旧来から個別の実機ペダルを再現したストンプの一つで、Kemperフォーラムでも「Metal DS = Boss Metal Zone」として案内されています。OS 8.0以降に追加された統合型の「Kemper Drive」とは別系統の、独立したディストーションモデルです。

Boss MT-2の使用アーティスト

海外のアーティスト

アーティスト音楽スタイル使用・補足
At the Gatesメロディック・デスメタル1995年の名盤『Slaughter of the Soul』(「Blinded By Fear」等)で、HM-2にMT-2を重ねて歪みをタイトに締める使い方をしたことで知られる
Princeファンク / ロック / ポップ1993年録音の「The Undertaker」でMT-2の高ゲインなギターサウンドを使用
James “Munky” Shaffer(Korn)ニューメタル「Did My Time」でローファイな質感を得るためにMT-2を使用したと報じられている
Kurt Ballou(Converge)メタリックハードコアあえてゲインを絞りEQをフラットにして、ボリュームでアンプ前段を押す変則的な使い方で知られる

日本のアーティスト

現時点で信頼できる情報源からの裏付けが取れていないため記載を省略します。

Boss MT-2の特徴と注意点

特徴

  • 中域可変のパラメトリックEQによる圧倒的な音作りの自由度:Mid Freqでどの中域を動かすか選べるため、ドンシャリのスクープからミッドを突き出したリードまで一台でまかなえる。「EQで顔がガラッと変わる」と多くのレビューで言及される。
  • 単体で歪みを完成させられる高ゲイン:クリーンアンプにつなぐだけでモダン級のディストーションが出る。アンプの歪みに頼らず音を作れるため、宅録やJC-120などのクリーンアンプ環境で重宝されている。
  • 分厚く埋もれないサウンド:刻んでも芯が残り、単音リードは長く伸びる。バンドの中で抜けてくれるという声が多い。
  • 圧倒的な入手しやすさと安定供給:30年以上現行で、中古も豊富。最初の本格ディストーションとして手に取りやすい価格帯にある。

注意点

  • EQが極端で「使いこなしが難しい」とよく言われる:効きが強烈なぶん、設定を詰めないと耳に痛い・ブーミーになりがち。「適当に回すとひどい音になる、追い込めば化ける」という賛否両論が定番。
  • 歪んだアンプに重ねると過剰になりやすい:単体で歪みが完成しているため、もともと歪むアンプの前に置くと飽和して扱いづらい。基本はクリーンアンプ前提という理解が必要。
  • ゲインが深くノイズが乗りやすい:ハイゲイン設定では特にノイズが目立つため、ノイズゲートの併用がほぼ前提になる。
  • バッファードバイパスが音に影響する:オフ時もバッファ回路を通るため、「バイパス時に音が変わる」と感じるユーザーがいる。True Bypass派は改造で対応することがある。

まとめ

BOSS MT-2 Metal Zoneは、「単体で完結する超高ゲイン」「中域可変のパラメトリックEQによる極端な音作り」「圧倒的な入手しやすさ」がそろった、ディストーションの一つの到達点です。クセが強く賛否も激しいペダルですが、それは裏を返せば「ハマったときの個性が唯一無二」ということ。EQを追い込めば、ドンシャリのメタルリフからミッドを突き出したリードまで、自分だけの歪みを彫り込めます。

こんな演奏をしたい方に特におすすめです。

  • クリーンアンプや宅録環境で、ペダル一台でモダンなメタルトーンを完結させたい方
  • ドンシャリのスクープサウンドを、EQで自分好みに彫り込みたい方
  • 分厚く埋もれない、ロングサステインのリードトーンが欲しい方
  • 「クセが強い」と言われるペダルを、あえて使いこなして個性を出したい方

適当に踏んでまとまる優等生ではありません。でも腰を据えてEQと向き合えば、ほかのどんなディストーションとも違う表情を見せてくれます。賛否が激しいからこそ、ぜひ自分の耳でその「Metal Zone」を確かめてみてください。

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この記事を書いた人

趣味はギター、カメラ、料理。
好きなものはメタルコア、ビール、CAPCOM、FROMSOFTWARE。

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