「アンプ・イン・ア・ボックス(名機アンプの歪みを箱に詰め込んだペダル)」というジャンルの代表格を一台挙げるなら、Friedman BE-ODは外せません。BE-ODはディストーション(真空管アンプが激しく歪んだような、密度の濃い歪み)に分類されるペダルで、ハイゲインアンプの名門Friedmanが看板アンプ「BE-100」のリードチャンネルの歪みをそのまま足元に落とし込んだ一台です。クリーンアンプの前に置くだけで、いきなりモダンなハイゲインサウンドが出てくるのが最大の魅力。
向いているのはモダンハイゲイン〜ハードロック、メタル系のリフやリード。Volume・Gain・Tight・Bass・Treble・Presenceという多ノブ構成で、単なる歪みペダルというより「歪みアンプのプリ部を持ち歩いている」感覚に近いのが個性です。「ペダル一個でFriedmanのあの音が出る」という分かりやすさが、登場以来ずっと話題であり続ける理由と言えます。
「よく見るけど詳しいこと知らないなぁ…」
そんな名機を端的に知って、より楽しむための試みです。
Friedman BE-ODの主な特徴とスペック
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| エフェクトの種類 | 高ゲイン・ディストーション(オーバードライブよりも深く密度の濃い歪み)。Friedman BE-100アンプのリードチャンネル「Brown Eye」の歪みをペダル化したアンプ・イン・ア・ボックス |
| コントロール | Volume(出力音量)、Gain(歪みの量)、Tight(低域の締まり・ピッキングへの反応を調整するノブ。上げるほどローがタイトに引き締まる)、Bass(低域)、Treble(高域)、Presence(超高域の輪郭・抜け)の6コントロール |
| 電源 | 9V〜18V DC 外部アダプター(センターネガティブ極性)。電池には非対応。18Vを与えるとヘッドルームが広がりタイトになる |
| 入出力端子 | モノラル1系統(インプット・アウトプット各1) |
| バイパス方式 | トゥルーバイパス(エフェクトをオフにしたとき内部回路を完全に迂回して信号を通す方式。オフ時に音色を色付けしない) |
| 製造国 / ブランド | Friedman Amplification(アメリカ・ロサンゼルス)。Made in USA |
| 発売年 | 2015年頃に登場(現行品として生産継続中) |
Friedman BE-ODはどんな音がするのか
BE-ODのサウンドを一言で表すなら「ペダルから出てくるFriedman BE-100そのもの」です。Tube Screamer系(Ibanez TS9など)のような「アンプを軽く押す」タイプの歪みとはまったく性格が違い、これ単体で完成された分厚いハイゲイン・ディストーションが出てきます。
全体的なキャラクターは、ホットロッド化されたMarshall(Friedman創業者デイヴ・フリードマンが改造で名を上げた、あの「改造マーシャル」系)の音そのものです。中域に強い存在感があり、低域は太く、高域はギラっと攻撃的に伸びます。コードを鳴らすと壁のように厚い歪みが押し寄せ、シングルノートのリードでは音が前に飛び出してきます。
歪みの質感とゲイン量は、コンパクトペダルとしてはかなり多め。Gainを絞ってもクランチというよりは「軽く歪んだロックトーン」までで、完全なクリーンにはなりません。フォーラムでも「Gainをゼロにしても歪む」「思った以上にハイゲイン」という声が目立ちます。上げていけばモダンメタルのリフにも対応する飽和した歪みまで到達します。
Tightノブの効きがこのペダルの肝です。低域の締まりとピッキングへの追従を調整でき、上げるほどローがタイトになって速いリフでも音がもたつきません。下げると太く豪快になりますが、ブーミー(低域が膨らみすぎて締まりがない状態)になりやすいので、アンプに合わせて追い込む前提のノブです。ダイナミクスへの追従性も良好で、ギターのボリュームを絞るとクランチ寄りに表情が変わります。
どのアンプと組み合わせた話かを明示すると、BE-ODは「クリーン〜エッジ・オブ・ブレイクアップのアンプ」に挿すのが本領です。Fender系やMarshall系のクリーンチャンネルに通すと、その瞬間にFriedman BE-100のリードトーンが立ち上がります。逆に、すでにハイゲインなアンプの歪みチャンネルに重ねるとゲインが過剰になりがちで、相性を選びます。
Friedman BE-ODのエピソード
Friedmanを率いるデイヴ・フリードマン(Dave Friedman)は、もともとエディ・ヴァン・ヘイレンやジェリー・カントレル(Alice in Chains)らのためにMarshallを改造してきた、ロサンゼルスの伝説的なアンプビルダーです。その集大成が看板アンプ「BE-100」で、そのリードチャンネルの愛称が「Brown Eye(ブラウン・アイ)」。BE-ODの「BE」はこのBrown Eyeから来ています。
BE-ODは、その高価で大きいBE-100アンプの核心である「Brown Eyeチャンネルの歪み」を、誰でも足元に置けるコンパクトペダルにしたものです。クリーンアンプさえあればFriedmanのハイゲインサウンドが手に入るという分かりやすさから、登場後すぐにアンプ・イン・ア・ボックス系ペダルのベストセラーになりました。
一方で、フォーラムやレビューでは賛否がはっきり分かれるペダルとしても知られています。「Marshall系アンプ(DSL・JCM・JVMなど)と組み合わせると最高」という声がある一方、「Mesa系やブライトなアンプだと薄く感じる」「クラシックなクランチMarshallの音は苦手」という指摘もあり、相手のアンプを選ぶ個性派という評価が定着しています。良くも悪くも「Friedmanの音」が濃く出るペダルだという証拠でもあります。
Friedman BE-ODの使い方と信号チェーンでの位置づけ
信号チェーン(シグナルチェーン: ギターからアンプまでの音の経路)での基本位置は、ギター側の前段です。ワウやコンプレッサーの後、ディレイ・リバーブといった空間系の前に置きます。BE-ODは実質「歪みアンプのプリ部」として働くので、クリーンアンプのインプットに直接つなぐのが王道。エフェクトループ(プリアンプ後段の端子)には通常入れません。
典型的なセッティング例:
- モダンハイゲイン用途(最も定番): Gain = 12〜2時、Tight = 12〜2時(締めたいほど上げる)、Bass = 11時、Treble = 12時、Presence = 12〜1時、Volume = 任意。クリーンアンプに挿してFriedmanのリードトーンを作る基本形。
- ハードロック・クランチ用途: Gain = 9〜11時、Tight = 11時前後。Gainを抑えてバッキング向きの中ゲインに。それでも軽く歪むので、クリーンは期待しない。
- ローがブーミーなとき: まずTightを上げて低域を締める。それでも膨らむならBassを下げる。速弾きリフでもたつく場合はTight必須。
アンプとの組み合わせでは、Fenderのクリーンや、Marshallのクリーン〜クランチチャンネルが好相性です。すでに歪んでいるハイゲインチャンネルに重ねるとゲインが飽和しすぎるため、その場合はGainとTightを控えめにするのがコツ。18VのDC電源を使うとヘッドルームが増え、より締まったタイトな歪みになるというユーザーの定番テクニックもあります。
重ね使いでは、BE-ODの前にTS系オーバードライブ(Ibanez TS9など)を「さらにブースト」として置く、いわゆるゲインスタッキング(歪みの段重ね)がメタル系で定番です。TS系で中域を押して低域を削ると、BE-ODの分厚い歪みがさらにタイトでフォーカスの効いた音になります。
Friedman BE-ODと相性の良い機材
相性の良いギターアンプ
| アンプ | 出力 / 特徴 | BE-ODとの組み合わせが人気な理由 |
|---|---|---|
| Marshall系(DSL・JCM800・JVM等) | 50〜100W / ブリティッシュな中域 | フォーラムで「BE-ODはMarshall系と最高に合う」と繰り返し言及される定番。元がホットロッドMarshallの音なので素性がそろう |
| Fender系クリーンアンプ(Twin Reverb / Deluxe Reverb等) | 22〜85W / 開けたクリーン | クリーンプラットフォームとして使い、BE-ODでFriedmanのハイゲインを丸ごと作る使い方。アンプ・イン・ア・ボックスの王道 |
| Friedman系アンプ(Smallbox等) | ハイゲイン | 同じFriedmanの音作り思想で、クリーン〜クランチに挿すと一貫したトーンが得られると評価される |
相性の良いエフェクター
| エフェクター | 役割 | この組み合わせが定番な理由 |
|---|---|---|
| TS系オーバードライブ(Ibanez TS9 / TS808等) | 前段ブースト | TS → BE-OD の順で中域を押し低域を削ると、ハイゲインがさらにタイトに締まる。メタル系の鉄板スタッキング |
| ノイズゲート(Friedman Gain Booster / Boss NS-2等) | ハイゲイン時のノイズ処理 | BE-ODは歪み量が多くノイズが乗りやすいため、ゲート併用でリフの隙間を締めると扱いやすい |
| ディレイ・リバーブ(空間系) | 空間的な広がりを足す | BE-OD → 空間系 の順が基本。歪みを作った後段で広げることで音像が濁らない |
Friedman BE-ODの兄弟機・派生機
| モデル | 発売年 | BE-ODとの違い |
|---|---|---|
| BE-OD Deluxe | 2018年 | BE-ODと同一回路を2チャンネル化した上位版。チャンネル1はBE-ODと同じ、チャンネル2はやや低めのゲインにボイシング。各チャンネルにMidノブと3ポジションのTightトグルスイッチを追加し、音作りの幅を拡張した |
| Smallbox(SmallBox) | ― | 厳密な兄弟機ではないが、Friedman Smallboxアンプを元にしたアンプ・イン・ア・ボックス。BE-ODより低〜中ゲイン寄りで、よりクラシックなプレキシ/ロックトーンに振った姉妹的存在 |
なお、各種ショップ限定の特別仕様(外装違いのエディションなど)も存在しますが、回路はBE-ODに準じます。
Friedman BE-ODのモデリング・シミュレーション
エフェクターのモデリングとは、実機の回路や音響特性をデジタル技術で再現したもので、実機を用意しなくてもそのサウンドを手軽に使えるようにした機能です。BE-ODは人気のアンプ・イン・ア・ボックスですが、各社モデラーへの収録状況にはばらつきがあります。
Friedman BE-ODのQUAD CORTEXにおけるモデリング
| 種別 | モデル名 | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Effect | Freeman BOD | Friedman BE-OD |
QUAD CORTEX(Neural DSP)のGuitar effectsには、BE-ODを再現したモデルが「Freeman BOD」として収録されています。商標を避けたぼかし名称ですが、Friedman BE-ODを元にしたドライブモデルで、CorOS初期バージョンから搭載されています。実機同様の分厚いハイゲイン・ディストーションが得られます。
Friedman BE-ODのFractal Audio Systemsにおけるモデリング
Fractal Audio機器(Axe-FX、FM9、FM3等)のDriveブロックには、Friedman BE-ODを直接モデリングした専用ドライブモデルは収録されていません。Fractal AudioのDriveモデル一覧(Yek’s Guide等の一次情報)を確認しても、TS系・RAT・Klone・Suhr Riot・Horizon Precision Drive等は揃っていますが、BE-ODに該当するモデルは現行ラインナップには収録されていません。
なお、Fractal機器ではAmpブロックにFriedman BE-100系のアンプモデルが収録されているため、パワーアンプ・モデリングをオフにしてDrive代わりに使うことで近いサウンドを得る、という手法がフォーラムで案内されています。あくまで代替手段であり、BE-ODペダルそのもののモデルではありません。
Friedman BE-ODのLINE6 HELIXにおけるモデリング
LINE6 HELIXのDistortion(歪み系エフェクト)カテゴリには、Friedman BE-ODペダルを元にしたモデルは現行ラインナップには収録されていません。HELIXにはFriedman BE-100アンプのリードチャンネルを元にしたアンプモデル「Placater Dirty」が存在しますが、これはアンプモデルであり、BE-ODペダルのエフェクトモデルではありません。エフェクトとしてのBE-OD収録はない、というのが正確な状況です。
Friedman BE-ODのKemperにおけるモデリング
Kemperのストンプエフェクトには、Friedman BE-ODを再現した個別モデルは収録されていません。OS 8.0以降に追加された統合型オーバードライブ「Kemper Drive」が複数の名機ペダルをカバーしますが、その参照元として公式に挙げられているのはIbanez/Maxon TS808・TS9、Klon Centaur、Horizon Devices Precision Drive、Boss OD-1/SD-1、Analogman King of Tone、Timmy、Marshall Bluesbreaker MK1であり、BE-ODは含まれていません。
従来からの収録ストンプ「Green Scream」もIbanez TS-808(Maxon OD808)を元にしたモデルで、BE-ODとは別物です。したがって、KemperのストンプエフェクトにはFriedman BE-ODは収録されていません(Kemperで近い音を狙う場合は、Friedman系アンプのリグやプロファイルを使うのが実情です)。
Friedman BE-ODの使用アーティスト
海外のアーティスト
| アーティスト | 音楽スタイル | 使用・補足 |
|---|---|---|
| Mike Sullivan(Russian Circles) | ポストメタル / インストゥルメンタル | BE-OD Deluxeを、2種類のゲインチャンネルを使い分ける目的でボードに導入していることが機材情報で確認されている |
| Andrew Baena | モダンメタル / コンテンツクリエイター | ペダルボードにFriedman BE-OD Deluxeを組み込んでいることが機材情報で確認されている |
このほかにも多くのプロが使用していますが、ここでは信頼できる機材情報で裏付けの取れたアーティストのみを記載しています。
日本のアーティスト
現時点で信頼できる情報源からの裏付けが取れていないため記載を省略します。
Friedman BE-ODの特徴と注意点
特徴
- クリーンアンプが一瞬でFriedman BE-100になる:アンプ・イン・ア・ボックスの完成度が高く、「ペダル一個でFriedmanのBrown Eyeトーンが出る」点がレビューで最も評価される。高価な実機アンプの核心を足元で手に入れられる。
- Tightノブによる低域コントロールの自在さ:低域の締まりとピッキングへの追従を独立して調整でき、速いリフでももたつかせずタイトに締められる。多くのユーザーが「使い始めたら手放せないノブ」と評価する。
- Marshall系アンプとの相性の良さ:DSL・JCM・JVM等と組み合わせた際の評価が高く、フォーラムで繰り返し「Marshallと合わせるのが正解」と言及される。元がホットロッドMarshallなので素性が合う。
- 単体で完結する分厚いハイゲイン:ブースター前提のオーバードライブと違い、これ一台でモダンハイゲインまで作れる。クリーンしかないアンプでも歪みが完結する安心感がある。
注意点
- 低ゲインが作りにくい・クリーンにならない:Gainをゼロにしても歪むため、クランチやエッジ・オブ・ブレイクアップ狙いには不向き。「思ったより常にハイゲイン」というレビューが非常に多く、低ゲイン用途には別ペダルが要る。
- アンプを選ぶ(Mesaやブライトなアンプで薄く感じることがある):Marshall系では輝くが、Mesa系や明るすぎるアンプだと「薄い」「プレキシが細い」と感じるユーザーがいる。相手のアンプとの相性差が大きい。
- 低域が膨らみやすくセッティングに追い込みが要る:Tightを使わないとブーミーになりやすく、最初の音作りでローを締める作業が必要。出した瞬間に決まるペダルではなく、調整前提の個性派。
- 電池非対応:電源はDCアダプターのみで電池駆動ができない。9V〜18V対応だが、パワーサプライの用意が前提になる。
まとめ
Friedman BE-ODは、「クリーンアンプを一瞬でFriedman BE-100に変える」「Tightノブで低域を自在に締められる」「Marshall系との相性が抜群」という三拍子がそろった、アンプ・イン・ア・ボックスの代表格です。単なる歪みペダルではなく、歪みアンプのプリ部を足元に持ち歩く感覚で使える一台と言えます。
こんな演奏をしたい方に特におすすめです。
- クリーンアンプしかない環境で、モダンなハイゲイン・ディストーションを手に入れたい方
- ホットロッドMarshall系の分厚いリードトーンが好きな方
- メタルやハードロックで、タイトに締まったリフとよく抜けるリードを両立したい方
- 高価なFriedman BE-100アンプのサウンドを、まず足元で体験してみたい方
低ゲインやクリーンには向かない尖った性格ですが、その分「Friedmanのハイゲインが欲しい」という目的に対しては一直線に応えてくれます。Marshall系やクリーンアンプを持っている方は、ぜひ一度その分厚い歪みを自分の足で確かめてみてください。
