
Fender Deluxe Reverb ’64 Vintageは、スプリングリバーブを内蔵した22W級の真空管コンボアンプです。1963年に登場したDeluxe Reverbのブラックフェース時代の仕様をベースとし、クリーンから甘いクランチまでを得意とします。
Fender Deluxe Reverb ’64 Vintageは、1964年のブラックフェース(黒いコントロールパネルに白い文字のFender黄金期のデザイン)時代に誕生したFender Deluxe Reverbをベースとした、22W級の真空管コンボアンプです。1963年にスプリングリバーブを搭載して初登場し、AB763回路(1963年7月制定のFender内部型番)により、クリーンで明るく、ミッドが控えめな「Fenderらしい」トーンを確立しました。ブルース、ロック、カントリー、ジャズなど、クリーンからエッジ・オブ・ブレイクアップ(かすかに歪み始める境界)までの幅広い表現を求めるプレイヤーに、歴史上最も録音に使われたアンプのひとつとして今なお絶大な人気があります。一言で表すなら、「22Wの小さな巨人——音量を上げれば甘い真空管歪みが得られ、小〜中規模のライブからスタジオまで、Fenderの本質を凝縮した不朽のコンボ」です。
「よく見るけど詳しいこと知らないなぁ…」
そんな名機を端的に知って、より楽しむための試みです。
主な特徴とスペック
スペック面の要点は、6V6パワー管×2と真空管整流による22W級の出力、そして真空管駆動のスプリングリバーブとヴィブラートを備えた2チャンネル構成です。
| メーカー | Fender(アメリカ) |
|---|---|
| オリジナル登場年 | 1963年(Deluxe Reverbとして) |
| 出力 | 22W RMS(’64 Customリイシューは20W) |
| パワー管 | 6V6×2 |
| プリ管 | 12AX7×4、12AT7×2 |
| 整流管 | 5AR4(GZ34) |
| チャンネル数 | 2(ノーマル/ヴィブラート) |
| エフェクト | スプリングリバーブ、ヴィブラート |
| スピーカー | Jensen C-12Q 12インチ |
| 入力 | 各チャンネル2入力(High/Low) |
| 形状 | 1×12コンボアンプ |
オリジナルの登場年は1963年で、1964年はブラックフェース時代の代表的な年号です。’64 Custom Deluxe Reverbリイシューの出力は20Wで、スピーカーはJensen C12Q 35Wです。
真空管は、パワー管の6V6が小型のビーム出力管で、Fenderの小〜中出力アンプに多用され、早めに歪む柔らかなキャラクターが特徴です。プリ管の12AX7はプリアンプ用、12AT7は位相反転・リバーブ駆動用です。整流管の5AR4(GZ34)は真空管整流で、音量を上げた際の電圧の「たるみ」によるコンプレッションとサステインが特徴です。
2つのチャンネル(ノーマルチャンネル、ヴィブラートチャンネル)には、それぞれ独立したVolume / Treble / Bassがあります。スプリングリバーブはオリジナルではヴィブラートチャンネルのみで、’64 Customは両チャンネルに対応します。ヴィブラートはSpeed / Intensityで調整します。入力はHighとLowの2系統で、Lowは約半分のゲインとなり、よりクリーンなヘッドルームが得られます。サイズ・重量ともに比較的コンパクトで持ち運びしやすいコンボです。
Deluxe ReverbのAB763回路は、Twin ReverbやSuper Reverbと同じ設計思想を小型化したもので、プリアンプはほぼTwin Reverbと同一です。6V6パワー管を2本使うため、6L6を使うTwinに比べてヘッドルームが小さく、Volumeを3〜5程度に上げるだけで自然な真空管のクランチ(甘い歪み)が得られます。この「早めに歪む」特性が、スタジオや小〜中規模ライブでの「生きた」サウンドとして重用されてきた理由のひとつです。
エピソード
1963年、Fenderは既存のDeluxeアンプにオンボードのスプリングリバーブタンクを組み込み、Deluxe Reverbを発表しました。同年7月に制定されたAB763回路は、バンドマスター、Super Reverb、Twin Reverbなど複数のモデルに採用されたFenderの標準設計で、「763」はその制定月(1963年7月)に由来します。ブラックフェースの黒いパネルと白い文字は、1964年〜1967年頃のFenderの黄金期を象徴するデザインとなりました。
Duke Robillardは、ブルース・スイング・カントリーミュージシャンとして、Fender Deluxe Reverbを長年メインアンプのひとつとして使用してきました。EquipboardでDeluxe Reverbの使用が確認されており、クリーンから軽いクランチまでの幅広い表現を、コンパクトなアンプで実現するスタイルの代表格です。
Phoebe Bridgersは、インディー・ロック・シンガーソングライターとして、Fender Deluxe Reverbをレコーディングやライブで使用していることがEquipboard等で報告されています。繊細なクリーントーンと、必要に応じた控えめなクランチは、Deluxe Reverbの得意とする領域です。
共に使用される機材
共に使用されるキャビネット
Fender Deluxe Reverb ’64 Vintageは1×12コンボアンプのため、キャビネットは内蔵されており、該当なしとします。
共に使用されるエフェクター
- Ibanez Tube Screamer(TS808 / TS9):ブースター/オーバードライブとして、Deluxe Reverbの自然なクランチをさらに押し込むと、ブルースやロックで定番の「甘い中域のリードトーン」が得られます。Driveを控えめに、Levelでアンプをプッシュする使い方が人気です。
- Klon Centaur / Klone系:クリーンブースト/軽いオーバードライブとして、Deluxe Reverbのクリーンチャンネルに透明感のあるブーストをかける定番です。アンプの持つ倍音を活かし、繊細なダイナミクスを保ちながらボリュームを足せます。
- Boss BD-2 Blues Driver:ライトオーバードライブとして、Deluxe Reverbと相性が良いとされるペダルのひとつです。アンプのクランチにBD-2の柔らかい歪みを重ねると、ブルースやインディー向けの温かいトーンが得られます。
兄弟機・派生機
Fender ’65 Deluxe Reverb Reissue(1993年頃〜)
1993年頃より継続生産されている標準リイシューです。PCB(プリント基板)構成で、オリジナルに近い設計です。リバーブはヴィブラートチャンネルのみで、’64 Customよりコストを抑えた選択肢になります。
Fender ’64 Custom Deluxe Reverb
ハンドワイヤード(手配線)のAB763回路と松の木キャビネットを採用しています。両チャンネルにリバーブ&ヴィブラートを搭載するなど、オリジナルを改良したモデルです。Pure Vintage Blue Toneキャパシタ採用でヴィンテージ寄りのトーンを志向しています。
Fender Princeton Reverb
約12Wの小型版です。Deluxe Reverbよりさらに早く歪み、小音量でのクランチやスタジオ録音向けです。「Deluxe Reverbの小さな兄弟」のような位置づけです。
Fender Twin Reverb
85Wの大型版です。プリアンプはDeluxe Reverbとほぼ同一ですが、6L6パワー管によりクリーンヘッドルームが大幅に増加しています。大音量でもクリーンを維持したい場合の上位版です。
モデリング
モデリングとは、実機アンプの音色や挙動をデジタル技術で忠実に再現したもので、本物のアンプを持ち歩かなくてもそのサウンドを手軽に使えるようにした機能です。Fender Deluxe Reverbは、歴史上最も録音に使われたアンプのひとつとして、主要なモデリング機器の多くに収録されています。
QUAD CORTEX における収録
| 種別 | モデル名 | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Amp | US DLX 64 Vintage | Fender Deluxe Reverb ’64 Vintage |
| Cabinet | 112 US DLX Black C12K 00s | Fender Deluxe Blackface with Jensen C12K |
Fractal Audio Systems における収録
| 種別 | モデル名 | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Amp | Deluxe Verb Normal | Fender Deluxe Reverb 1965 (AB763) |
| Amp | Deluxe Verb Vibrato | Fender Deluxe Reverb 1965 (AB763) |
| Cabinet | 1×12 Deluxe Verb | Fender Deluxe Reverb 1×12 with Jensen C12(K) |
FractalのDeluxe Verbモデルは1965年製Deluxe Reverb(AB763)をベースとしており、’64 Vintageと’65 Reissueは同じAB763回路系統のため、ほぼ同等のトーンが再現されます。
Kemper における収録
Kemperはアンプをプロファイリング(実機をそのまま取り込む)する機器のため、ファクトリーリグではアンプとキャビネットが1つのリグにまとめて収録されています。キャビネット単独のエントリは存在しません。
| 種別 | モデル名(RIG NAME) | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Amp | Fender Deluxe Reverb | Fender Deluxe Reverb |
| Amp | Fender 65 Deluxe | Fender ’65 Deluxe Reverb |
| Amp | Fender 65-Deluxe Reverb | Fender ’65 Deluxe Reverb |
LINE6 HELIX における収録
| 種別 | モデル名 | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Amp | US Deluxe Nrm | Fender Deluxe Reverb (normal channel) |
| Amp | US Deluxe Vib | Fender Deluxe Reverb (vibrato channel) |
| Cabinet | 1×12 US Deluxe | Fender Deluxe Reverb 1×12 |
使用アーティスト
海外のアーティスト
- Duke Robillard/ブルース、スイング、カントリー:ロックンロールの伝統を継承するギタリストです。EquipboardでDeluxe Reverbの使用が確認されており、長年メインアンプのひとつとしてライブ・スタジオで使用しています。
- Phoebe Bridgers/インディー・ロック、シンガーソングライター:Equipboard等でFender Deluxe Reverbの使用が報告されています。繊細なクリーンと軽いクランチを活用しています。
日本のアーティスト
Fender Deluxe Reverbは、国内のブルース、ロック、カントリーシーンで広く認知されている定番アンプです。ただし、Deluxe Reverb ’64 Vintage(または’64 Custom)をメインアンプとして使用していることが信頼できる情報源で確認できる著名な邦楽アーティストについては、現時点で裏付けが取れていないため、ここでは記載を省略します。
よくある疑問
’64 Customや’65 Reissueとはどう違いますか?
主な違いは配線とリバーブの対応チャンネルです。’64 Customはハンドワイヤードで、両チャンネルにリバーブ&ヴィブラートを搭載します。’65 ReissueはPCB構成で、リバーブはヴィブラートチャンネルのみです。ただし同じAB763回路系統のため、モデリング上はほぼ同等のトーンとして扱われます。
QUAD CORTEXがあれば実機は不要ですか?
まず試す手段としては十分です。QUAD CORTEXには「US DLX 64 Vintage」というアンプモデルと、「112 US DLX Black C12K 00s」というキャビネットモデルが収録されています。Fractal、Kemper、LINE6 HELIXにもDeluxe Reverb系のモデルがあるため、実機を買う前に世界観を確かめられます。
ユーザーの評価と注意点
評価されている点
- 22Wでありながら十分なボリューム:小〜中規模のクラブやスタジオでは十分な音量を確保でき、Seymour Duncan Forum等で「surprisingly loud for 22 watts」と評価されています。コンパクトなサイズの割に「小さな巨人」としてのパフォーマンスを発揮します
- 自然なクランチが得やすい:6V6パワー管と真空管整流の特性により、Volumeを3〜5程度に上げるだけで甘い真空管歪みが得られます。Twin Reverbのように大音量までクリーンを維持したい用途には向きませんが、エッジ・オブ・ブレイクアップを楽しみたいプレイヤーには最適です
- エフェクターとの相性が良い:ノーマルチャンネルはクリーンで透明感があり、ペダル経由の信号を素直に通す特性が、GuitarSpace等のレビューで「pedal platform」として高く評価されています
- 史上最も録音されたアンプのひとつ:Happy Mag等で「the most played, recorded and sought after amp in music history」と評されるように、スタジオ録音における定番としての実績があります
注意点
- リイシューは明るめに設計されている:’65 Reissueは「overly bright」「challenging with gain pedals—can sound grainy and fizzy」とSeymour Duncan Forumで指摘されることがあります。’64 Customは改良されているものの、ゲインペダル使用時はトレブル調整に注意が必要です
- 大音量では22Wが足りない場合がある:大きなホールやドラムの音が大きいバンド編成では、ヘッドルームが不足することがあります。その場合はTwin ReverbやSuper Reverbの検討が推奨されます
- エフェクトループ非搭載:オリジナルおよび多くのリイシューにはエフェクトループがなく、ディレイやリバーブなどのタイムベースエフェクトはアンプの前段(インプット直前)に配置する必要があります
まとめ
Fender Deluxe Reverb ’64 Vintageは、1963年にスプリングリバーブを搭載して登場し、AB763回路により「Fenderらしい」クリーンから甘いクランチまでを22Wのコンパクトな筐体に凝縮した、史上最も録音に使われたアンプのひとつです。ブルース、ロック、カントリー、ジャズと、ジャンルを問わず「生きた真空管サウンド」を求めるプレイヤーに支持されてきました。
「小〜中規模のライブで十分な音量が欲しい」「Volumeを上げたときの甘い真空管のクランチを楽しみたい」「スタジオ録音で定番のFenderトーンが欲しい」「エフェクターの土台としてクリーンで透明感のあるアンプが欲しい」——そんな方にはFender Deluxe Reverb ’64 Vintage(または’64 Custom、’65 Reissue)がおすすめです。QUAD CORTEX、Fractal Audio、Kemper、LINE6 HELIXのいずれにもDeluxe Reverb系のモデリングが収録されているため、まずはモデリングでその世界観を体験してみてください。








