
Fender Blackface Princeton Reverbは、12Wの出力と1×10スピーカーを備えた、スプリングリバーブとトレモロ内蔵の真空管コンボアンプです。1964年〜1967年のBlackface期にFenderが製造し、現在は’65 Princeton Reverb Reissueなどのリイシューが現行で入手できます。
Fender Blackface Princeton Reverbは、1964年〜1967年にアメリカ・Fender社が製造した12Wの真空管コンボアンプです。Blackface(黒いフェイスプレートとシルバー/ブラックのグリルクロスが特徴の世代)と呼ばれる時代のFenderアンプのひとつで、6V6パワー管×2本と真空管整流(5AR4)により、控えめな出力でありながら豊かな倍音と早いブレイクアップ(飽和)を実現しています。内蔵のスプリングリバーブとトレモロ(振動)を備え、スタジオ録音や小〜中規模ライブで「最も完成されたクラブ&スタジオアンプのひとつ」として高い評価を受けてきました。ジャズ、ブルース、ロック、カントリー、インディーなど、クリーンから軽いクランチまで幅広いトーンを求めるプレイヤーに向いています。一言で表すなら、「Deluxe Reverbより早く甘くブレイクする——12Wと10インチスピーカーが生む、スタジオ伝説のFenderクリーンとクランチ」です。
「よく見るけど詳しいこと知らないなぁ…」
そんな名機を端的に知って、より楽しむための試みです。
主な特徴とスペック
Princeton Reverbの仕様の要点は、出力12W・6V6パワー管×2・真空管整流・1×10スピーカーの構成です。
| メーカー | Fender(アメリカ) |
|---|---|
| 製造期間 | 1964年〜1967年(Blackface期) |
| 出力 | 12W RMS |
| パワー管 | 6V6GT×2 |
| プリ管 | 7025×2、12AX7×1 |
| 整流管 | 5AR4(GZ34) |
| チャンネル数 | 1(ノーマルチャンネルのみ) |
| コントロール | Volume、Treble、Bass、Reverb、Speed、Intensity |
| 内蔵エフェクト | 真空管駆動のスプリングリバーブ、トレモロ |
| スピーカー | 10インチ×1(Jensen C10Rなど) |
| キャビネット | 黒トレックス、黒/白/銀グリルクロス |
| 形状 | 1×10コンボアンプ(スピーカー内蔵) |
製造期間は1964年〜1967年のBlackface期です。’65 Princeton Reverb、’68 Custom Princeton Reverb、’64 Custom Princeton Reverb等のリイシューが現行で展開されています。
パワー管の6V6GTは小出力のビームパワー管で、柔らかいミッドと早いブレイクアップが特徴です。プリ管の7025は12AX7に相当するプリアンプ用真空管です。整流管の5AR4(GZ34)は真空管整流で、サギーと柔らかいレスポンスを生みます。
チャンネルはノーマルチャンネルのみです。リバーブ回路の増幅段により、Deluxe Reverbより1段多いゲインを持ちます。コントロールのReverbはリバーブ量、Speedはトレモロ速度、Intensityはトレモロ強度を調整します。
スピーカーはJensen C10R、Jensen C10N、Oxford 10L5、Oxford 10J4などが搭載され、アンプにより異なります。キャビネットの大きさは約16×20×9.5インチです。
Princeton Reverbは、Blackface期のFenderアンプの中でも最もコンパクトなリバーブ搭載モデルです。Deluxe Reverb(22W、1×12)やSuper Reverb(40W、4×10)に比べて出力とヘッドルームが少ない代わりに、適度な音量でクリーンから自然なブレイクアップへと移行する「甘いクランチ」が特徴です。真空管整流によるサギー(サグ)と6V6の柔らかいレスポンスが、ピックのタッチに敏感に反応する生き生きとしたトーンを生み出します。10インチスピーカーは高域の伸びとアーティキュレーションに寄与し、 Deluxe Reverbの12インチよりやや「ジュージーで茶色がかった」トーナリティと言われることがあります。
エピソード
Princeton Reverbは、1964年にFenderが発表したPrinceton(リバーブなし)にリバーブとトレモロを追加したモデルです。当時のFenderはLeo Fenderの経営からCBSへの売却(1965年)の前後であり、Blackface期の回路設計は今日でも「最も完成されたFenderアンプ」のひとつとして高く評価されています。Princeton Reverbのリバーブ回路は専用の増幅段を持つため、リバーブなしのPrincetonより1段ゲインが多く、わずかながら「より早く飽和する」キャラクターを持ちます。
Clarence WhiteとTommy Tedescoは、1960年代のスタジオセッションにおいてBeach Boysのヒット曲のギター録音にPrinceton Reverbを使用したことで知られています。セッションプレイヤーの間でコンパクトで扱いやすく、マイク前に置いても十分な音圧とクリアなトーンが得られるPrinceton Reverbは、レコーディングスタジオの定番アンプとして定着しました。
Ryan Adamsは、Princeton Reverbをメインアンプとして複数台(’65や’68のリイシューを含む)をステージで使用し、そのサウンドの中心に据えています。Adamsのフォークロックやオルタナティブカントリーの艶やかなクリーンと繊細なエッジ・オブ・ブレイクアップには、Princeton Reverbの温かみと応答性が寄与しています。
Jim Campilongoは、Telecasterのヴィルトゥオーゾとして知られ、Princeton Reverbに「宗教的とも言えるほど」の愛着を持ち、クラブからスタジオまで幅広く使用しています。Campilongoの透明感のあるクリーンとタッチに反応するクランチは、Princeton Reverbの特性と相性が良く、多くの楽曲のベーストーンとなっています。
共に使用される機材
共に使用されるキャビネット
Princeton Reverbは1×10スピーカーを内蔵したコンボアンプのため、別売りキャビネットと組み合わせる用途は一般的ではありません。該当なしとして省略します。
共に使用されるエフェクター
- オーバードライブ・ブースター(Ibanez Tube Screamer、Klon、BB Preamp等):軽いゲインを加え、アンプの自然なブレイクアップを引き出します。Princeton Reverbはボリューム7前後で自然なブレイクアップが得られるため、ブースターでプリアンプを軽く押し込むと、より早く飽和したトーンが得られます。Integraudio等の機材サイトで「natural breakup characteristics」との相性が推奨されています
- アナログディレイ(Way Huge Aqua Puss、Boss DM-2等):短いディレイで深みと空間感を加えます。Princeton Reverbのクリーンや軽いクランチはディレイと相性が良く、アナログディレイの温かみがFenderトーンに溶け込みます。プレミアギター等でスタジオ向けの組み合わせとして言及されています
- コーラス(Boss CH-1、MXR Analog Chorus等):モジュレーションで立体感を付加します。内蔵リバーブとトレモロに加え、コーラスを入れることで80年代風のシェイマーやポップス寄りのトーンが得られます。Integraudio等で推奨されています
- スタックリバーブ・トレモロ(Strymon Flint等):内蔵リバーブ・トレモロを拡張します。Princeton Reverbは既にリバーブとトレモロを内蔵していますが、スタックリバーブや高品質なトレモロを追加することでアンビエント寄りの表現が可能です。Guitar Chalk等で言及されています
兄弟機・派生機
Fender Princeton(Blackface、リバーブなし)
Princeton Reverbの前身です。リバーブとトレモロがなく、よりシンプルでクリーン寄りのトーンです。
Fender Deluxe Reverb(Blackface)
22W、1×12のモデルです。Princeton Reverbよりヘッドルームが広く、クリーンが長持ちします。より大きなスタジオやライブ向けです。
Fender Vibrolux Reverb(Blackface)
35W、2×10のモデルです。6L6パワー管を使用し、Princeton Reverbよりパワフルです。中〜大規模ライブ向けです。
Fender ’65 Princeton Reverb Reissue
Blackface Princeton Reverbの公式リイシューです。オリジナルに忠実な回路で現行入手可能です。
Fender ’68 Custom Princeton Reverb
Silverface期のデザインをベースにした現行モデルです。’65リイシューよりやや歪み寄りで、ブレイクアップが早くなります。
Fender ’64 Custom Princeton Reverb
BlackfaceとVibro-Champの要素を組み合わせた現行モデルです。2チャンネル構成で幅広いトーンが得られます。
モデリング
モデリングとは、実機アンプの音色や挙動をデジタル技術で忠実に再現したもので、本物のアンプを持ち歩かなくてもそのサウンドを手軽に使えるようにした機能です。Fender Blackface Princeton Reverbは、スタジオ録音の定番アンプとして主要なモデリング機器の多くに収録されています。
QUAD CORTEX における収録
| 種別 | モデル名 | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Amp | US Prince | Fender Blackface Princeton Reverb |
| Cabinet | 110 US PRN C10R | Fender Princeton with Jensen C10R drivers |
Fractal Audio Systems における収録
| 種別 | モデル名 | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Amp | Princetone Reverb | Fender Blackface Princeton Reverb(1966年、AA964) |
| Cabinet | 1×10 BF Princetone | Fender Blackface Princeton combo with reverb |
Kemper における収録
Kemperはアンプをプロファイリング(実機をそのまま取り込む)する機器のため、ファクトリーリグではアンプとキャビネットが1つのリグにまとめて収録されています。キャビネット単独のエントリは存在しません。
| 種別 | モデル名(RIG NAME) | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Amp | Fender Princeton 1965 | Fender Princeton Reverb(’65リイシュー相当) |
| Amp | Fender 65 Princeton | Fender Princeton Reverb |
| Amp | Fender 65 Princeton 1*10 | Fender Princeton Reverb |
LINE6 HELIX における収録
| 種別 | モデル名 | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Amp | US Princess | Fender Princeton Reverb |
| Cabinet | 1×10 US Princess | Fender Princeton Reverb(1×10スピーカー) |
使用アーティスト
海外のアーティスト
- Clarence White(The Byrds)/カントリー、ブルーグラス:1960年代のBeach Boysセッション等でPrinceton Reverbを使用したと、Guitar Player等で言及されています
- Tommy Tedesco/スタジオセッションギタリスト(数多くのヒット曲に参加):1960年代のBeach Boys録音等でPrinceton Reverbを使用したと、Guitar Player等で言及されています
- Ryan Adams/フォークロック、オルタナティブカントリー:’65および’68リイシューをステージで複数台使用していると、Equipboard、TDPRI等で確認されています
- Jim Campilongo/テレキャスターのヴィルトゥオーゾ(ジャズ、カントリー、ロック):クラブからスタジオまで、Princeton Reverbをメインアンプとして使用しています。Guitar Player等で言及されています
日本のアーティスト
Fender Princeton Reverbは、国内のスタジオやロック・ブルースシーンで認知度の高いアンプです。ただし、Princeton Reverbをメインアンプとして使用していることが信頼できる情報源で確認できる著名な邦楽アーティストについては、現時点で裏付けが取れていないため、ここでは記載を省略します。
よくある疑問
Princeton ReverbはDeluxe Reverbと何が違いますか?
出力とスピーカーが違い、Princeton Reverbのほうが早くブレイクアップします。Deluxe Reverbは22W・1×12で、ヘッドルームが広くクリーンが長持ちします。Princeton Reverbは12W・1×10で、ボリューム7前後で自然なクランチが得られます。
QUAD CORTEXでPrinceton Reverbの音を使えますか?
使えます。QUAD CORTEXにはアンプ「US Prince」とキャビネット「110 US PRN C10R」が収録されています。Fractal Audio、Kemper、LINE6 HELIXにもPrinceton Reverb系のモデリングがあります。
ヴィンテージを買わずに実機のトーンを試せますか?
リイシューで試せます。オリジナルのBlackface Princeton Reverbはヴィンテージ市場で高値で取引されますが、’65 Princeton Reverb Reissueや’68 Custom Princeton Reverbが現行で入手可能です。
ユーザーの評価と注意点
評価されている点
- 自然で早いブレイクアップ:12Wと6V6パワー管により、Deluxe Reverbより早く飽和が始まり、ボリューム7前後で「ロックらしいクランチ」が得られます。TDPRI等のフォーラムで「natural breakup」「glorious edge of breakup」と繰り返し評価され、オーバードライブペダルなしでも十分な歪みが得られます
- シャイマー(艶)とチャイム(澄んだ高域の響き):クリーン時の「sparkle」「chime」が特徴的で、Fenderトーンの象徴とも言えます。Deluxe Reverbよりやや「ジュージーで茶色がかった」トーナリティで、Premier Guitar等で「slightly juicier, browner tonality」と表現されます
- コンパクトで扱いやすい:1×10コンボとして軽量かつ小さいため、スタジオのマイク前やクラブライブで置き場所に困らず、練習から録音、小〜中規模ライブまで幅広く対応します。Guitar Player等で「possibly the finest club and studio amp ever created」と評されています
- 内蔵リバーブとトレモロ:真空管駆動のスプリングリバーブとトレモロを標準装備し、ペダルを増やさずにFenderらしい「揺れる」「広がる」サウンドが得られます
注意点
- ヘッドルームが限定的:12Wのため、大音量でクリーンを維持するには不向きです。Deluxe Reverbと比較して「clean headroom and volume」では劣るという評価がTDPRI等で多く、大規模ライブではPAへのマイクアップ前提となります
- 10インチスピーカーの限界:低域の迫力は12インチ搭載のDeluxe Reverbに劣ります。12インチにスピーカー交換するユーザーも多く、Rig-Talk等で「upgrade」として言及されています
- ヴィンテージは高価:1964〜1967年のオリジナルBlackface Princeton Reverbはヴィンテージ市場で高値で取引されます。実機を試したい場合は’65や’68のリイシューが現行で入手可能です
まとめ
Fender Blackface Princeton Reverbは、12Wと1×10スピーカーという控えめなスペックでありながら、スタジオ録音とクラブライブで「最も完成されたアンプのひとつ」として長年愛されてきた伝説のコンボです。真空管整流と6V6の柔らかいレスポンスが、自然で早いブレイクアップとタッチに敏感なトーンを生み出し、Deluxe Reverbより「甘く」歪むキャラクターが多くのプレイヤーを魅了しています。
「コンパクトで扱いやすいFenderクリーンが欲しい」「小音量〜中音量で自然なクランチを楽しみたい」「スタジオやクラブ向けの定番アンプを探している」という方には特におすすめです。実機のヴィンテージは高価ですが、’65 Princeton Reverb Reissueや’68 Custom Princeton Reverbが現行で入手可能です。QUAD CORTEX、Fractal Audio、Kemper、LINE6 HELIXのいずれにもPrinceton Reverb系のモデリングが収録されているため、まずはモデリングでPrinceton Reverbの世界観を体験してみてください。シャイマーとチャイムに満ちたFenderトーンは、今なお多くのプレイヤーに愛され続けています。







