
Fender Super Reverb ’65は、アメリカ・Fender社が製造する45Wのオール真空管ギターコンボアンプです。1963年〜1968年のブラックフェイス期に生産されたオリジナルSuper Reverbの忠実なリイシューとして2001年から展開されており、AB763回路(ブラックフェイス期の代表的な回路設計)を受け継ぎます。
10インチスピーカー4本(4×10)による開放的なサウンドと、Twin Reverbより小さいパワーゆえに適度な音量で甘い真空管の歪みを得られることが特徴で、ブルース、ソウル、ロック、カントリーなど「温かくオーバードライブしやすいクラシックFenderトーン」を求めるプレイヤーに根強い人気があります。一言で表すなら、「4×10の魔術——Twin Reverbの弟分として、より早く歪み、ブルージーで歌うブラックフェイスの傑作」です。
「よく見るけど詳しいこと知らないなぁ…」
そんな名機を端的に知って、より楽しむための試みです。
主な特徴とスペック
45Wの6L6GCパワー管と4×10スピーカーを組み合わせた、2チャンネル構成のコンボアンプです。
| メーカー | Fender(アメリカ) |
|---|---|
| 製造期間 | 2001年〜(オリジナルは1963年〜1982年) |
| 出力 | 45W RMS |
| パワー管 | 6L6GC×2 |
| プリ管 | 12AX7×4、12AT7×2 |
| 整流管 | 5AR4/GZ34(真空管整流) |
| チャンネル数 | 2(Normal・Vibrato、各2入力) |
| スピーカー | Jensen P10R(10インチアルニコ)×4、2Ω出力 |
| コントロール | Volume、Treble、Bass(Vibratoのみ追加あり) |
| その他 | 真空管駆動のスプリングリバーブとトレモロ内蔵 |
| 形状 | コンボ(4×10インチスピーカー内蔵) |
パワー管の6L6GCは、アメリカ製アンプに多く使われる真空管で、締まった低音とクリアな高音が特徴です。プリ管の12AX7(ECC83。プリアンプ用真空管)は4本、リバーブ・トレモロ回路用に12AT7を2本使います。整流管の5AR4/GZ34は真空管整流で、サギーでコンプレッションがかかりやすく、柔らかいレスポンスを実現します。コントロールは各チャンネルにVolume、Treble、Bassがあり、VibratoチャンネルのみMiddle、Brightスイッチ、Reverb、Vibrato(トレモロ)が加わります。回路はプリント基板で、オリジナルはハンドワイヤードでした。
Super Reverbは、Twin Reverbと同じAB763回路系列に属し、50WのTwin Reverbに対して低域を絞った4×10スピーカー構成により、より早い音量で真空管の飽和を引き出せる設計です。Twinよりヘッドルームが低く、中音量程度から甘いオーバードライブが得られるため、ブルースやクランチ系のプレイヤーに好まれます。4本の10インチ Jensenによる開放的な低域と、ブラックフェイス特有の明るく澄んだ高域が組み合わさり、「タイトで焦点の合った低域」と評されるサウンドを実現しています。
エピソード
1963年、Fenderはブラックフェイス(黒パネ)期の新ラインナップとして、リバーブとトレモロを搭載した大型コンボ「Super Reverb」を発表しました。AB763回路は、Deluxe Reverb、Twin Reverb、Pro Reverb、Bandmasterなど多くのブラックフェイスアンプで共有され、Fender史上もっとも評価の高い回路のひとつとなっています。Super Reverbはその中でもTwin Reverbより小型で、4×10という独自のスピーカー構成により、Twinとは異なるキャラクターを確立しました。
Stevie Ray Vaughanは、1980年代中期から1990年まで、ツアーで2台のFender Super Reverbをメインアンプとして使用していました。ただし、彼のアンプテクニシャンCesar Diazによれば、SRVはSuper Reverbのパワーが「強すぎる」と感じており、Diazは出力トランスをTwin Reverbのものに交換するモディフィケーションを施していました。また、SRVが縁起をかついで好んだ数字「6」に合わせて、ノブを6の位置に見せかけつつ実際には10(フル)に設定していたというエピソードも残っています。SRVのあの厚みのあるオーバードライブトーンには、クランクされたSuper ReverbとIbanez Tube Screamerの組み合わせが欠かせませんでした。
Derek Trucksは、1990年代中期から2006年に愛機が盗まれるまで、1965年製Fender Super Reverbをメインアンプとして使用していました。彼はこのアンプを「史上最高のアンプのひとつ」と称賛し、抜群のクリーントーンと、プレイヤーの入力から出力までの「抵抗が少ない」レスポンスの良さを高く評価しています。現在もSuper Reverbをライブのメインアンプとして使い続けています。
共に使用される機材
共に使用されるキャビネット
Fender Super Reverb ’65はコンボアンプのため、ヘッド+キャビネットの組み合わせとしては該当なしです。アンプとスピーカーは一体型です。
共に使用されるエフェクター
- Ibanez Tube Screamer(TS808 / TS9):オーバードライブ/ブースターです。Super ReverbのクランチにTS系を重ねると、SRVサウンドの定番トーンが得られます。Driveを低めに、Levelでアンプを押し込む設定が一般的です。ミッドレンジが強調され、ミックスで抜けやすいサウンドになります
- その他OD(Maxon OD808、Boss SD-1等):軽いオーバードライブ/ブーストです。Super Reverbはクリーンが美しいため、ペダルで歪みを足す使い方が定番です。ミッドブースト系のODはブラックフェイスの特性と相性が良く、フォーラムでも推奨されています
- コンプレッサー:アタックのコントロールに使います。ブルースやソウルスタイルでは、Ross系やDyna Comp風のコンプでサスティンとレスポンスを整える使い方が多いです
兄弟機・派生機
Fender Twin Reverb
85W、2×12スピーカー。Super Reverbよりヘッドルームが高く、より大きな音量でもクリーンを維持します。クリーントーン重視のスタジオやペダルプラットフォーム向けです。
Fender Pro Reverb
40W前後、2×12。Super Reverbとほぼ同じAB763系回路ですが、スピーカー構成が2×12です。よりクリーン寄りで、Twinの低ワット版のようなポジションです。
Fender Deluxe Reverb
22W、1×12。Super Reverbよりさらに小さいパワーで、より早く歪みます。スタジオや小規模ライブ向けの定番です。
Fender Bandmaster Reverb
40Wヘッド。Super Reverbと同系のリバーブ回路を持ちますが、ヘッド+キャビネット構成です。キャビネットを選べる柔軟性があります。
モデリング
モデリングとは、実機アンプの音色や挙動をデジタル技術で忠実に再現したもので、本物のアンプを持ち歩かなくてもそのサウンドを手軽に使えるようにした機能です。Fender Super Reverb ’65は、ブルース・ロックの定番アンプとして、主要なモデリング機器の多くに収録されています。
QUAD CORTEX における収録
| 種別 | モデル名 | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Amp | US SPR Normal | Fender Super Reverb ’65 |
| Amp | US SPR Vibrato | Fender Super Reverb ’65 |
| Cabinet | 410 US Basslad PR10 | Fender Bassman Tweed with Jensen P10R |
Super Reverb ’65専用キャビネットは収録されていないため、同様の4×10 Jensen P10R構成であるFender Bassman Tweedキャビネットを掲載しています。
Fractal Audio Systems における収録
| 種別 | モデル名 | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Amp | Super Verb Normal | Fender Super Reverb 1964(AB763) |
| Amp | Super Verb Vibrato | Fender Super Reverb 1964(AB763) |
| Cabinet | 4×10 Bassguy RI | Fender Bassman 1959 Reissue 4×10 |
4×10 Bassguy RIは、Super VerbのDynaCabマッチで、同様の4×10構成です。FractalのSuper Verbモデルは、Stevie Ray VaughanのアンプテクニシャンCesar Diazが行う「V1を抜く」モディフィケーションを施した状態でモデリングされています。よりクリーンにしたい場合は、MV Trimを0.5程度に下げるとストックの挙動に近づきます。
Kemper における収録
Kemperはアンプをプロファイリング(実機をそのまま取り込む)する機器のため、ファクトリーリグではアンプとキャビネットが1つのリグにまとめて収録されています。キャビネット単独のエントリは存在しません。
| 種別 | モデル名(RIG NAME) | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Amp | Fender Super Reverb 1967 | Fender Super Reverb 1967 |
| Amp | Fender Super Reverb 1969 | Fender Super Reverb 1969 |
| Amp | Fender Super Reverb 1961 | Fender Super Reverb 1961 |
LINE6 HELIX における収録
| 種別 | モデル名 | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Amp | US Super Nrm | Fender Super Reverb(Normalチャンネル) |
| Amp | US Super Vib | Fender Super Reverb(Vibratoチャンネル) |
| Cabinet | 4×10 US Super | Fender Super Reverb 4×10 |
使用アーティスト
海外のアーティスト
- Stevie Ray Vaughan/テキサスブルース、ブルースロック:1980年代中期〜1990年、2台のSuper Reverbをツアーでメイン使用しました。Cesar Diazによるモディフィケーションが施され、「In Step」「The Sky Is Crying」等のサウンドを定義しました
- Derek Trucks/ブルース、ソウル、オールマン・ブラザーズ系:1990年代中期〜2006年(愛機盗難まで)、1965年製Super Reverbをメイン使用しました。現在もSuper Reverbをライブで使用しています
日本のアーティスト
Fender Super Reverbは、国内のブルースやロックシーンでも認知度の高いアンプです。ただし、Super Reverbをメインアンプとして使用していることが信頼できる情報源で確認できる著名な邦楽アーティストについては、現時点で裏付けが取れていないため、ここでは記載を省略します。
よくある疑問
Twin Reverbとはどう違いますか?
Super Reverbのほうが早く歪みます。同じAB763回路系列ですが、Twin Reverbが85W・2×12なのに対し、Super Reverbは45W・4×10で、ヘッドルームが低めです。中音量程度から甘いオーバードライブが得られるため、ブルースやクランチ系に向きます。大音量でクリーンを保ちたい場合はTwin Reverbが向きます。
QUAD CORTEXなどのモデラーで代用できますか?
はい、代用できます。QUAD CORTEXには「US SPR Normal」「US SPR Vibrato」が収録されており、Fractal Audio、Kemper、LINE6 HELIXにもSuper Reverb系のモデルやプロファイルがあります。ただしQUAD CORTEXにはSuper Reverb ’65専用キャビネットが収録されていないため、同じ4×10 Jensen P10R構成のFender Bassman Tweedキャビネットで補います。
家で使うには音量が大きすぎませんか?
自宅練習でフルに鳴らすには音量過多になりがちです。45Wは小規模ライブやスタジオでは十分すぎる出力です。アッテネーターを使うか、小音量向けのDeluxe Reverbを検討する方法があります。
ユーザーの評価と注意点
評価されている点
- 4×10の独特なサウンド:10インチスピーカー4本による構成は、Twinの2×12とは異なり、低域がタイトで焦点の合ったサウンドになります。フォーラムでは「4×10のJensenには何か特別な魔法がある」と繰り返し言及され、このコンボならではの開放感のある中域がブルースやオーバードライブに適しています
- 適度なヘッドルームで歪みやすい:Twin Reverbよりパワーが小さく、中音量程度で真空管の甘い飽和が得られます。大音量でクリーンを維持したい場合はTwinが向きますが、「押し込んだ時のオーバードライブ」を活かすならSuper Reverbが有利です
- 内蔵リバーブ・トレモロの質:真空管駆動のスプリングリバーブとトレモロは、ブラックフェイス期の定番サウンドの要です。ペダルなしでも十分な空間系が得られ、ブルースやスローロックに最適です
注意点
- 重量:4×10スピーカーと真空管を内蔵するため、65ポンド(約29kg)前後と重く、搬送にはドリーやハンドトラックが推奨されます。The Gear Page等のフォーラムでも「heavy but manageable」と繰り返し言及されています
- 音量:45Wは小規模ライブやスタジオでは十分すぎるほどで、自宅練習でフルに鳴らすには音量過多になりがちです。アッテネーターの使用や、小音量向けのDeluxe Reverbの検討も選択肢です
- ボリュームの効き方:ゲインが豊富なため、ボリュームを上げると想像より早く歪み始めます。クリーンを求める場合はボリュームを控えめにし、歪みはペダルで補うアプローチが一般的です
まとめ
Fender Super Reverb ’65は、ブラックフェイス期を代表する傑作のリイシューとして、ブルースやロックの定番トーンを今でも提供し続けているアンプです。Twin Reverbより早く歪み、4×10のJensenによるタイトで温かいサウンドは、Stevie Ray VaughanやDerek Trucksといった名手たちが証言する「特別なアンプ」の地位を保っています。
「クラシックなFenderのクリーンとオーバードライブが欲しい」「ブルースやソウル系の歌うトーンを求めている」「SRV風のサウンドをベースにしたい」という方には特におすすめです。コンボゆえの重量はありますが、QUAD CORTEX、Fractal Audio、Kemper、LINE6 HELIXのいずれにもSuper Reverb系のモデリングが収録されているため、まずはモデリングでその世界観を体験してみてください。







