
Fender Bassmanは、6L6パワー管と真空管整流を備えた、Fenderの真空管ギターアンプです。もとは1952年にベースアンプとして発売され、1959年型の5F6-A回路はMarshall JTM45の元になり、現在も’59 Bassman LTD等のリイシューが販売されています。
Fender Bassmanは、アメリカ・Fender社が1952年にベースアンプとして発表し、その後ギターアンプのスタンダードとなり世界的な影響を与えた歴史的アンプです。とくに1959年型の「5F6-A」回路は、Marshall JTM45の設計の直接の元となり、ロック・ブルース・カントリーのサウンドの礎となりました。もともとベース用に設計されたものの、低域の厚みと適度なサギー、押し込んだときの甘いオーバードライブがギタリストに愛され、「ベースアンプのくせにギターの名機」と呼ばれる存在です。ブルース、クラシックロック、カントリー、ロックンロールなど、「温かく歌うアメリカンクリーンと自然なクランチ」を求めるプレイヤーに向いています。一言で表すなら、「ロック史を変えたアンプの祖——Marshallの父であり、クリーンからクランチまで歌う伝説のツイード」です。
「よく見るけど詳しいこと知らないなぁ…」
そんな名機を端的に知って、より楽しむための試みです。
主な特徴とスペック
ここでは最も有名なツイード時代の5F6-A(1959年頃)を中心に記載します。Bassmanは時代によってツイード(5F6-A)、ブロンド(1961年〜)、ブラックフェイス(1964年〜)、シルバーフェイス(1960年代末〜)と進化しました。
スペック面の要点は、6L6パワー管と真空管整流、マスターボリュームなし・エフェクトループなしという、シンプルで素直な回路構成です。
| メーカー | Fender(アメリカ) |
|---|---|
| 製造期間 | 1952年〜(5F6-Aは1958年〜1960年頃) |
| 出力 | 約40〜50W RMS(5F6-A) |
| パワー管 | 6L6(ビームパワー管)×2 |
| プリ管 | 12AX7(ECC83)×2、12AY7×1 |
| 整流管 | 5AR4 / GZ34(真空管整流) |
| チャンネル数 | 2(NormalとBright) |
| コントロール | Volume(各ch)、Bass、Middle、Treble、Presence |
| インピーダンス出力 | 2Ω / 4Ω / 8Ω |
| その他 | エフェクトループなし、リバーブなし |
| 形状 | 4×10インチスピーカー内蔵のコンボ(5F6-A) |
パワー管の6L6は、アメリカンサウンドの代表とされるビームパワー管で、締まった低音とクリアな高音が特徴です。プリ管の12AY7は12AX7よりゲインが低く、最初の増幅段で使われます。整流管(5AR4 / GZ34)は真空管整流のためサギーがかかりやすく、アタックが柔らかくレスポンスが温かくなります。Marshall JTM45もこの整流方式を採用しています。
マスターボリュームはなく、各チャンネルにVolumeが付き、Bass、Middle、Trebleに加えてPresenceが共通です。チャンネルはNormalとBrightの2つで、それぞれHigh/Lowの2入力があり、4入力でジャンプ接続ができます。出力インピーダンスは2Ω / 4Ω / 8Ωで、オリジナル5F6-Aの4×10コンボは内部2Ωです。
製造は1952年からで、現行は’59 Bassman LTD等のリイシューです。出力は真空管の種類や設定により変動します。ロングテールペア位相反転(Long-tailed pair)と3ノブトーンスタックを採用し、後年の多くのアンプ設計の手本となりました。形状はオリジナル5F6-Aが4×10インチスピーカー内蔵のコンボで、のちにヘッド+キャビネットのピギーバック構成も登場しました。
5F6-Aは、パラフェーズからロングテールペア位相反転への変更、3ノブトーンスタックの追加、ネガティブフィードバックの調整、カソードバイアスから固定バイアスへの移行など、Bassman設計の集大成です。Jim MarshallがKen BranとDudley CravenとともにJTM45を開発する際、この回路をベースに英国製部品とKT66パワー管で改良し、のちのBritishロックサウンドの源流となりました。
エピソード
1952年、Leo Fenderは新開発のPrecision Bassに合わせて「Bassman」というベース専用アンプを発表しました。しかし早くもロックンロール黎明期のギタリストたちが、Bassmanのパワーと厚い低域に惹かれてギターに使い始めます。Buddy HollyがBassmanをギターアンプとして使用したとする記録があり、ベースアンプとしての設計にもかかわらず、ギタリストの間で人気が高まっていきました。1961年のブロンドモデル以降、ヘッドとキャビネットが分離したピギーバック構成が登場し、The BeatlesやThe WhoのPete Townshendらが使用しました。彼らから「もっとパワーが欲しい」との要望を受けたJim Marshallが、5F6-Aの回路を参考にJTM45を開発したことは有名です。
Pete Townshend(The Who)は、1960年代前半にブロンドBassmanを使用し、「My Generation」など初期の攻撃的なギターサウンドの一部をBassmanで刻み込みました。のちにMarshall開発のきっかけのひとつとなったアーティストとして知られます。
Stevie Ray Vaughanは、Fender StratocasterとFender系アンプの組み合わせで知られ、BassmanやSuper Reverbなどをレコーディングやライブで使用したことが複数の機材情報源で確認されています。テキサスブルース特有の太く艶やかなクリーンと、押し込んだときの甘いオーバードライブは、Bassmanのキャラクターと相性が良く、SRVのサウンドを形作る要素となりました。
Bruce Springsteenは、キャリアを通じてFender Bassmanをアンプセットアップの一部として使用してきたことが、Rock Guitar Universe等の機材情報で言及されています。アメリカンロックの広がりと温かみのあるトーンを追求するSpringsteenのスタイルと、Bassmanの厚いクリーンと自然なクランチはよく合います。
共に使用される機材
共に使用されるキャビネット
オリジナル5F6-Aは4×10インチスピーカーを内蔵したコンボアンプのため、本来は別途キャビネットを用意する必要はありません。ただし、ブロンド以降のヘッド版や、コンボのアウトプットで外部キャビネットを駆動する場合は、以下のような組み合わせが定番です。
- Fender Bassman 4×10(オリジナル・リイシュー):Jensen P10R(アルニコ10インチ)×4を搭載する5F6-A本来の構成です。P10Rの温かみと適度なブレイクアップがBassmanのトーンを完結させます。リイシュー’59 Bassman LTDも同様のJensen P10Rを採用しています。
- Fender Bassman 2×15(ブロンド以降):JBL D130等の15インチ×2を搭載するブロンド時代以降のピギーバック構成です。15インチの深い低域と広がりがBassmanの厚みと相乗し、ビッグバンドやロックのスタジオ収録で人気があります。
- Fender 4×12(ブロンド・ブラックフェイス):当初はJensen、のちにCelestion等、様々なスピーカーを搭載します。ブロンド・ブラックフェイス時代にオプションとして用意された4×12で、Britishサウンド寄りにしたい場合の選択肢です。
共に使用されるエフェクター
- Ibanez Tube Screamer(TS808 / TS9):ブースターとして、Driveをゼロに近く、Levelでプリアンプを押し込む使い方をします。Bassmanはマスターボリュームがないため、小音量で歪みを得るにはこの手法が有効です。ミッドブーストがBassmanのトーンと相乗し、Stevie Ray Vaughan風のクランチが得られます。
- オーバードライブ・ブースター全般(Klon、BB Preamp、Keeley D&M Drive等):軽いゲインでクリーンを押し込む役割です。Bassmanの「厚いクリーン」をベースに、ブースターで適度に押し込むと、ブルース〜クラシックロックの定番トーンに近づきます。
- アッテネーター(Fryette Power Station、Ultimate Attenuator等):アンプの出力を減衰させて音量を下げます。40〜50Wでも4×10のため非常に大音量で、TDPRI等のフォーラムでは「home useには attenuator が必須」と繰り返し言及されています。パワー管の飽和を維持したまま音量のみ下げる用途で推奨されます。
兄弟機・派生機
Fender Bassman 5B6(1952年〜)
初代Bassmanで、Bassmanの起源にあたります。26W、15インチスピーカー、カソードバイアスという仕様です。
Fender Bassman 5F6 / 5F6-A(1958年〜1960年頃)
4×10コンボで、ロングテールペア、3ノブEQ、固定バイアスを備えます。Marshall JTM45の直接の元となった最も有名な回路です。
Fender Bassman ブロンド(1961年〜)
白っぽいトレスコーティングで、ヘッド+キャビネットのピギーバック構成です。The Beatles、Pete Townshendらが使用しました。
Fender Bassman ブラックフェイス(1964年〜1967年)
黒フェイスの50Wピギーバックで、AA864やAB165回路を採用しています。5F6-Aよりクリーン寄りで、ミッドがややスクープされた傾向です。
Fender Bassman シルバーフェイス(1960年代末〜)
銀色のフェイスパネルで、回路はAB165系を継承しつつ進化しました。よりクリーンで明るい傾向です。
Fender ’59 Bassman LTD(リイシュー)
5F6-Aに忠実な現行リイシューです。45〜50W、4×10 Jensen P10Rで、真空管整流、ジャンプ接続が可能です。
Fender Tone Master ’59 Bassman
デジタルモデリングによるソリッドステート版です。軽量で音量減衰機能が付き、実機に近いトーンを小型・低音量で実現します。
モデリング
モデリングとは、実機アンプの音色や挙動をデジタル技術で忠実に再現したもので、本物のアンプを持ち歩かなくてもそのサウンドを手軽に使えるようにした機能です。Fender Bassmanは、Marshallの祖となった伝説のアンプとして、主要なモデリング機器の多くに収録されています。
QUAD CORTEX における収録
| 種別 | モデル名 | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Amp | US Tweed Basslad Bright | Fender Bassman Tweed |
| Amp | US Tweed Basslad Normal | Fender Bassman Tweed |
| Amp | US Tweed Basslad Bright Patch | Fender Bassman Tweed |
| Amp | US Tweed Basslad Normal Patch | Fender Bassman Tweed |
| Amp | US Tweed Basslad Bright Jumped | Fender Bassman Tweed |
| Amp | US Tweed Basslad Normal Jumped | Fender Bassman Tweed |
| Cabinet | 410 US Basslad P10Q ’16 | Fender Bassman with Jensen P10Q |
| Cabinet | 410 US Basslad PR10 | Fender Bassman Tweed with Jensen P10R |
Fractal Audio Systems における収録
| 種別 | モデル名 | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Amp | 59 Bassguy | Fender ’59 Tweed Bassman 5F6-A |
| Amp | 65 Bassguy | Fender ’65 Blackface Bassman |
| Cabinet | 4×10 59 Tweed | Fender Bassman 4×10 with Jensen |
Fractal Forum等では、59 Bassguyが5F6-AのNormal/Brightチャンネルを再現し、BrightスイッチでBrightチャンネル相当になることが説明されています。Input Trimを0.5にするとLow入力相当の低ゲイン入力がシミュレートできます。65 BassguyはブラックフェイスBassmanをベースにし、クランク時には初期Marshallに近いアグレッシブなトーンが得られることが言及されています。
Kemper における収録
Kemperはアンプをプロファイリング(実機をそのまま取り込む)する機器のため、ファクトリーリグではアンプとキャビネットが1つのリグにまとめて収録されています。キャビネット単独のエントリは存在しません。
| 種別 | モデル名(RIG NAME) | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Amp | Fender Bassman 1959 | Fender Bassman 1959 |
| Amp | Fender Bassman | Fender Bassman |
| Amp | Fender 1965 Blackface Bassman | Fender 1965 Blackface Bassman |
LINE6 HELIX における収録
| 種別 | モデル名 | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Amp | Tweed Blues Nrm | Fender Bassman(normal channel) |
| Amp | Tweed Blues Brt | Fender Bassman(bright channel) |
| Cabinet | 4×10 Tweed P10R | 4×10″ Fender Bassman P10R |
使用アーティスト
海外のアーティスト
- Pete Townshend(The Who)/ロック、パワーコードとフィードバックを駆使した演奏:1960年代前半にブロンドBassmanを使用しました。Marshall開発のきっかけのひとつとなっています。
- Stevie Ray Vaughan/テキサスブルース:StratocasterとFender系アンプの組み合わせで知られます。BassmanやSuper Reverbをレコーディング・ライブで使用したことが、複数の機材情報源で確認されています。
- Bruce Springsteen/アメリカンロック:広がりのあるアンサンブルと歌うようなギターが特徴です。キャリアを通じてBassmanをアンプセットアップの一部として使用していると、Rock Guitar Universe等で言及されています。
- The Beatles/ロック、ポップ:1960年代British Invasionの代表です。1961年のブロンドモデル登場後にBassmanを使用したと、Wikipedia、Vintage Guitar等で言及されています。
- Buddy Holly/ロックンロール:1950年代のロックの礎となった存在です。Bassmanをギターアンプとして使用したとする記録があります(Sweetwater InSync等)。
日本のアーティスト
Fender Bassmanは、国内のブルース・ロック・カントリーシーンで認知度の高いヴィンテージアンプです。ただし、Bassmanをメインアンプとして使用していることが信頼できる情報源で確認できる著名な邦楽アーティストについては、現時点で裏付けが取れていないため、ここでは記載を省略します。
よくある疑問
ツイード、ブロンド、ブラックフェイスのBassmanはどう違いますか?
回路と構成が違い、年代が進むほどクリーン寄りになります。ツイード(5F6-A)はロングテールペア、3ノブEQ、固定バイアスを備えた4×10コンボで、Marshall JTM45の元になった回路です。ブロンドからはヘッド+キャビネットのピギーバックになり、ブラックフェイス(AA864やAB165回路)は5F6-Aよりクリーン寄りで、シルバーフェイスはさらに明るい傾向です。
QUAD CORTEXなどのモデラーで代用できますか?
QUAD CORTEX、Fractal Audio、Kemper、LINE6 HELIXのいずれにもBassman系のモデリングが収録されています。QUAD CORTEXにはUS Tweed Basslad系のアンプが6種、Fractalには59 Bassguy(5F6-A)と65 Bassguy(ブラックフェイス)があります。実機は高価で大音量ですが、モデリングならその世界観を手軽に体験できます。
自宅の小音量でも鳴らせますか?
そのままでは難しく、アッテネーターがほぼ必須です。40〜50Wで4×10の構成のうえ、マスターボリュームがないため非常に大音量になります。小音量で歪みを得たい場合は、Tube Screamerなどのブースターでプリアンプを押し込む方法もあります。軽量で音量減衰機能が付いたTone Master ’59 Bassmanも選択肢です。
ユーザーの評価と注意点
評価されている点
- 真空管整流によるサギーと温かいレスポンス:5AR4/GZ34の真空管整流により、アタックが柔らかく、音符が「噛み砕かれる」ようなコンプレッションがかかります。Marshall JTM45も同様の整流方式を採用しており、Bassmanのキャラクターを British風に発展させた設計です。TDPRI等では「sag」「compress」と繰り返し言及され、ブルース〜ロックの「歌う」トーンに寄与しています
- 厚いクリーンとミッドフォワード:Twin Reverbなど他のFenderアンプよりミッドが前に出たキャラクターで、「vintage/rich」「mid-forward」とTDPRI等で評されます。4×10のスピーカー配置がトーンの厚みと意外な大音量に貢献し、クリーンが美しく、押し込んだときのオーバードライブも甘い傾向です
- ジャンプ接続でのブレンド:NormalとBrightの2チャンネルをジャンプケーブルでつなぐことで、低域の厚みと高域のカットを両立した定番のトーンが得られます。Marshall JTM45もこの手法を継承しています
- 歴史的価値と影響力:Marshall JTM45の直接の元となり、ロック史を変えたアンプの祖として知られます。Vintage Guitar誌の「25 Most Valuable Guitar Amps」にも5F6-Aが上位にランクされ、コレクター価値が高いアンプです
注意点
- 4×10による大音量とマスターボリュームの欠如:40〜50Wでも4×10の構成のため非常に大音量で、TDPRIでは「extremely loud」「too loud for home use without attenuator」と繰り返し指摘されます。マスターボリュームがないため、小音量で本領を発揮するにはアッテネーターがほぼ必須です
- ヘッドルームが広くクリーン寄り:歪みを得るにはクランク(フルに近い音量で鳴らす)必要があり、寝室練習や小規模ライブでは工夫が必要です。JTM45よりオーバードライブは控えめで、攻撃的なハイゲインには不向きです
- ヴィンテージは高価:オリジナル5F6-Aはプレミアムが付き、状態の良いものは数万円〜十万円以上になります。リイシューやTone Master、モデリング機器で気軽にトーンを体験する選択肢が現代的には現実的です
まとめ
Fender Bassmanは、1952年にベースアンプとして誕生しながら、ギタリストに愛されてロック史を変えた伝説のアンプです。1959年型5F6-Aの回路はMarshall JTM45の直接の元となり、真空管整流のサギーと6L6の厚いトーンが、ブルースからクラシックロックまで「歌う」サウンドの基盤となりました。
「Marshallの祖となったトーンを体験したい」「Twin Reverbよりミッドが前に出た、厚いアメリカンクリーンが欲しい」「ブルースやカントリー、クラシックロックの定番トーンを追求したい」という方には特におすすめです。実機のヴィンテージは高価ですが、’59 Bassman LTDのリイシューやTone Master、QUAD CORTEX、Fractal Audio、Kemper、LINE6 HELIXのいずれにもBassman系のモデリングが収録されているため、まずはモデリングやリイシューでBassmanの世界観を体験してみてください。ベースアンプのくせに、ギターの名機として語り継がれる理由を、きっと実感できるはずです。







