Matchless Chieftainとは?名機サクッと解説

Matchless Chieftainは、アメリカ・Matchless Amplifiersが1990年代に開発した、40WのクラスA真空管アンプです。DC-30の兄弟機として位置づけられ、EL34(英国製アンプに多く使われるパワー管。ミッドレンジが豊かでパンチの効いた音色が特徴)×2本を搭載した上位モデルとして知られます。シングルチャンネルながら、Volume、Bass、Mid、Treble、Brillianceといったアクティブ・ミッドコントロールを備えたフレキシブルなトーンスタックが特徴で、クリーンから甘いクランチ、ややハードロック寄りのオーバードライブまで幅広く対応します。ブルース、ロック、アメリカーナ、フォークなど、「パンチと艶やかさを両立させたい」というプレイヤーに支持されています。一言で表すなら、「DC-30の輝きを受け継ぎつつ、EL34の力強いミッドとアクティブEQでハードロック寄りのクランチも可能にする、40WクラスAのフラッグシップ」——リバーブ標準搭載と堅牢なハンドメイド品質が魅力です。

CONTENTS

Matchless Chieftainの主な特徴とスペック

項目仕様
メーカーMatchless Amplifiers(アメリカ)
発売年1990年代前半(Mark Sampson時代のフラッグシップモデル)
出力40W RMS
パワー管EL34(英国製アンプに多く使われる五極管。ミッドレンジが豊かでパンチの効いた音色が特徴)×2
プリ管12AX7(プリアンプ用真空管の一種)×5(トーン用2本、リバーブ回路用2本、位相反転用1本)
整流管5AR4×1
チャンネル数1(Volume、Bass、Mid、Treble、Brilliance、Master Volume、Reverb)
主なコントロールVolume、Bass、Mid、Treble、Brilliance、Master Volume、Reverb
その他エフェクトループ、真空管スプリングリバーブ標準搭載、3段階ロータリーインピーダンス切替(4Ω/8Ω/16Ω)
形状ヘッド / 1×12コンボ / 2×12コンボ(いずれも選択可能)

Chieftainのプリampは2本の12AX7をパラレル接続したインタラクティブなトーン回路で、アクティブ・ミッドコントロールが非常に効く設計です。DC-30にはないミッドとBrillianceの独立した調整により、EQの幅が広く、クリーンからクランチ、ややアグレッシブなオーバードライブまで自在に形作れます。トーンスタックはスプリット設計(バスとミッドが1段目の後に、トレブルが2段目の後に配置)で、従来のトーンスタックより信号強度を保ちつつ調整できるのが特徴です。

Matchless Chieftainに関するエピソード

Matchlessを創業したMark Sampsonは、1989年にRick PerottaらとロサンゼルスでMatchless Amplifiersを設立しました。Vox AC30のサウンド哲学を基盤に、「路肩でも壊れない信頼性」を追求し、ハンドメイドのポイント・ツー・ポイント配線で高品質なアンプを手がけました。ChieftainはDC-30より後に開発された上位モデルで、EL34を採用し出力を40Wに引き上げ、アクティブ・ミッドコントロールを追加することで、よりハードロック寄りのクランチやパンチの効いたクリーンも可能にしました。1990年代半ばのSampson時代におけるMatchlessのフラッグシップとして知られています。

Derek Trucks(Derek Trucks Band、The Allman Brothers Band)は、ブルース・ロック界を代表するスライドギタリストとして知られ、2006年頃まで1996年製のMatchless Chieftain 2×10コンボを所有していました。TrucksはMatchlessの正規エンドースアーティストとしても知られ、Chieftainの温かみあるクリーンとタッチに反応するオーバードライブを、スライドギターのニュアンス豊かな表現に活かしていました。ただし、2006年3月にアトランタでDerek Trucks Bandの機材盗難に遭い、このChieftainは盗まれてしまいました。2×10コンボは当時としては比較的レアな構成で、現在でもヴィンテージ市場では人気のモデルです。

Matchless Chieftainと共に使用される機材

Matchless Chieftainと共に使用されるキャビネット

Matchless Chieftainはヘッド版、1×12コンボ版、2×12コンボ版が用意されています。ヘッド版を使用する場合、Matchless純正2×12キャビネット(Celestion G12H、G12M等をミックスした構成)や、Celestion Vintage 30搭載の2×12が相性が良いと言われています。ChieftainのEL34によるパンチあるトーンと、クラシックなセレーション系スピーカーの相性は良く、クリーンからクランチまでバランスの取れたサウンドが得られます。

Matchless Chieftainと共に使用されるエフェクター

エフェクター名役割定番とされる理由
Ibanez Tube Screamer(TS808 / TS9)ブースター(アンプの前段で信号を軽く歪ませて押し上げる)Chieftainのクランチに芯とカットを足す用途で定番。ミッドブーストがEL34の豊かなミッドと相性が良く、リードトーンを際立たせる
アナログディレイ(Carbon Copy、DM-2など)タイム系エフェクトChieftainのクラスAらしい温かみと相性が良く、リードプレイの輪唱効果や空間作りに多用される
コンプレッサー(Keeley Compressor、Dyna Compなど)ダイナミクスコントロールクリーン時のタッチ感を均一化し、クランチのアタックを際立たせる。Chieftainの透明感あるクリーンを活かす定番

Matchless Chieftainの兄弟機・派生機

モデル名特徴・違い
Matchless DC-30Chieftainより出力が小さく(30W)、EL84×4本採用。2チャンネル構成でEF86チャンネルを擁する。Chieftainよりクリーン寄りの艶やかなシャイマーが特徴で、インディーやオルタナに人気
Matchless HC-30DC-30のヘッド版。回路は同一。Chieftainヘッドより軽量で、外部キャビネットとの組み合わせに適する
Matchless Clubman30Wクラス。DC-30よりクリーン寄りのヴォイシングで、ジャズやブルース向き

Matchless Chieftainのモデリング

モデリングとは、実機アンプの音色や挙動をデジタル技術で忠実に再現したもので、本物のアンプを持ち歩かなくてもそのサウンドを手軽に使えるようにした機能です。Matchless Chieftainは、QUAD CORTEX、Fractal Audio、Kemperに収録されています。

Matchless ChieftainのQUAD CORTEXにおけるモデリング

種別モデル名元となった実機
AmpMatchmore JefeMatchless Amplifiers Chieftain
CabinetMatch Jefe Sig 02Matchless Amplifiers Chieftain(シグネチャーIR)
CabinetMatch Jefe V30 02Matchless Amplifiers Chieftain(Vintage 30搭載)

Matchless ChieftainのFractal Audio Systemsにおけるモデリング

種別モデル名元となった実機
AmpBoutique 1Matchless Chieftain
Cabinet2×12 BOUTIQ(2×12 Boutiq)Matchless 2×12(Mark Sampson設計のブティック2×12キャビネット)

Matchless ChieftainのKemperにおけるモデリング

Kemperはアンプをプロファイリング(実機をそのまま取り込む)する機器のため、ファクトリーリグではアンプとキャビネットが1つのリグにまとめて収録されています。キャビネット単独のエントリは存在しません。

種別モデル名(RIG NAME)元となった実機
AmpMatchless ChieftainMatchless Chieftain

Matchless ChieftainのLINE6 HELIXにおけるモデリング

LINE6 HELIXの現行ラインナップには、Matchless Chieftainに対応するアンプモデルは収録されていません。DC-30ベースの「Matchstick Ch1」「Matchstick Ch2」「Matchstick Jump」は収録されているため、クラスAの艶やかなトーンを求める場合はこれらのモデルで代用する方法があります。

Matchless Chieftainの使用アーティスト

海外のアーティスト

アーティスト名音楽スタイル使用時期・関連アルバム
Derek Trucks(Derek Trucks Band、The Allman Brothers Band)ブルース・ロック、スライドギター。温かみあるクリーンとニュアンス豊かなオーバードライブが特徴1996年製Chieftain 2×10コンボを2006年頃まで所有。Matchless正規エンドースアーティスト。2006年3月に盗難に遭い所在不明(groundguitar.com、Equipboard等で確認)

日本のアーティスト

Matchless Chieftainは日本でも正規輸入されており、音にこだわるプロに愛用されています。ただし、Chieftainをメインアンプとして使用していることが信頼できる情報源で確認できる著名な邦楽アーティストについては、現時点で裏付けが取れていないため、ここでは記載を省略します。

Matchless Chieftainの特徴と注意点

特徴

  • アクティブ・ミッドコントロールの柔軟性:DC-30にはない独立したMidとBrillianceコントロールにより、クリーンからクランチ、ややハードロック寄りのオーバードライブまで、幅広いヴォイシングが可能。The Amp Garageなどのフォーラムでは「very active mid control」「flexible preamp」と評価され、1チャンネルでありながらシーンに応じた音作りがしやすい
  • EL34の力強いミッドとパンチ:EL84×4のDC-30と比較し、EL34×2はよりパンチのある低域と豊かなミッドレンジを持つ。ハードロック寄りのクランチやカットの効いたリードトーンに適し、大編成バンドでも抜けの良いトーンが得られる
  • リバーブ標準搭載:真空管駆動のスプリングリバーブが標準装備されており、DC-30の基本モデルと異なり外付けリバーブが不要。スタジオやライブですぐに深みのあるサウンドを出せる
  • スプリットトーンスタックの設計:バス・ミッドとトレbleを別段階に配置することで信号強度を保ち、従来のトーンスタックよりクリアでダイナミックなEQ調整が可能。The Amp Garageで議論される通り、レスポンスの良さが評価されている

注意点

  • DC-30ほどシャイマーは強調されない:EL34採用のため、EL84×4のDC-30に比べると「chime」「shimmer」といった高域の艶やかさはやや控えめ。DC-30のシャイマーを最優先する場合、ChieftainよりDC-30の方が向く可能性がある
  • 重量と価格:2×12コンボは約81lbs(約37kg)、ヘッドでも約50lbs(約23kg)。ハンドメイドゆえ価格も高めで、公式サイトでは2×12コンボが約4,330ドル、ヘッドが約3,422ドル。持ち運びや予算を考慮した検討が必要
  • シングルチャンネル:DC-30のような2チャンネル(EF86チャンネル)は持たないため、チャンネル切り替えではなくボリュームやゲインの調整、あるいはエフェクターでクリーンとクランチを切り替える運用となる

まとめ

Matchless Chieftainは、DC-30の輝きを受け継ぎつつ、EL34とアクティブEQでよりパンチのあるクランチやハードロック寄りのトーンも可能にした、40WクラスAのフラッグシップです。リバーブ標準搭載でスタジオ・ライブの双方に使いやすく、クリーンからオーバードライブまで幅広いシーンに対応します。

「DC-30が好きだけど、もっとパンチとミッドの効いたクランチが欲しい」「EL34の力強いトーンでブルースやロックを演奏したい」「Derek Trucksのような温かみあるスライドトーンを狙いたい」という方には特におすすめです。QUAD CORTEX、Fractal Audio、KemperにChieftainのモデリングが収録されており、まずはモデリングでそのトーンを体験してみてください。実機はヘッド・1×12・2×12の3形態で展開され、約3,400ドル〜4,300ドル台で、一生もののアンプとして根強い支持を得ています。

SHARE
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

趣味はギター、カメラ、料理。
好きなものはメタルコア、ビール、CAPCOM、FROMSOFTWARE。

CONTENTS