
Marshall Lead 50(1987)は、1967年頃にMarshall社が発表した50Wの真空管ヘッドアンプで、「Plexi(プレキシ)」と総称される初期Marshallの50W版です。
100WのSuper Lead(1959)と同一のプリアンプ回路を持ち、EL34を2本に抑えた50W出力ゆえに、よりタイトで歯切れの良いレスポンスが特徴です。1991年頃からは1987Xとしてヴィンテージリイシューが生産され、現在も入手可能です。ロック、ハードロック、ブルースロック、クラシックロックなど、「Marshallといえばこの音」——甘く攻撃的なミッドレンジ、カリッと切れたクランチ、ヴォリュームを開いた時のサギー(真空管の自然な歪み)が魅力のアンプです。一言で表すなら、「70年代Plexiの50W版——100Wの1959より歯切れが良く、スタジオからライブまで幅広く使われるロックの原典」です。
「よく見るけど詳しいこと知らないなぁ…」
そんな名機を端的に知って、より楽しむための試みです。
主な特徴とスペック
スペック面の要点は、EL34×2による50W出力と、NORMAL・TREBLEの2チャンネル計4入力の構成です。
| メーカー | Marshall(イギリス) |
|---|---|
| 型番・愛称 | 1987(Lead 50)、1987X(リイシュー版の通称) |
| 発売年 | オリジナル1967年頃/リイシュー1987X 1991年頃 |
| 出力 | 50W RMS |
| パワー管 | EL34×2 |
| プリ管 | ECC83(12AX7)×3 |
| チャンネル数 | 2(NORMAL / TREBLE)、入力は計4 |
| 主なコントロール | Volume 1・2、Bass、Middle、Treble、Presence |
| エフェクトループ | リイシュー1987Xの後期モデルに搭載 |
| インピーダンス出力 | 4Ω / 8Ω / 16Ω 切替対応 |
| その他 | リイシュー1987X:約15.3kg、英国製造 |
| 形状 | ヘッドアンプ(キャビネット別売り) |
発売年は、オリジナルが1967年頃、リイシュー1987Xが1991年頃で、リイシューは1972年製の攻撃的なブライトキャップ値を反映しています。パワー管のEL34は英国製アンプに多く使われる真空管で、ミッドレンジが豊かでブリティッシュな音色が特徴です。プリ管のECC83は12AX7のことで、プリアンプ用真空管の一種です。各チャンネルにHI/LO入力が2つずつあり、チャンネルジャンプで両方の音をミックスできます。
エフェクトループはシリアル型でトーンに影響しにくい設計で、1987XLではバイパス可能です。出力はスピーカー出力が2系統で、最低4Ωまで対応します。リイシュー1987Xは寸法660×210×260mmで、PCB基板を使用しています(1987XHWはハンドワイヤード版もあります)。
「1987」はMarshallの型番で、50W Lead(Lead 50)を指します。100WのSuper Lead(1959)とプリアンプ回路はほぼ同一で、パワー管が4本から2本になることで50Wとなり、サギー(電源のゆらぎによる甘い歪み)の出方が100W版とは若干異なります。フォーラムなどでは「Lead 50(1987)はバーキー(鋭い)なハイミッドアタック」「スライスするようなグラインド」と表現され、1959より歯切れの良いトーンが得られるとされます。リイシュー版1987Xは現行の安全規制に合わせた設計のためオリジナルと完全同一ではありませんが、クラシックなPlexiトーンを現代の信頼性で楽しめるモデルとして根強い人気があります。
エピソード
Marshall Lead 50(1987)は、1967年頃に100WのSuper Lead(1959)の弟分として登場しました。当時のロックギタリストたちは、1959と1987のプリアンプ回路の「4ホール」——NORMALとTREBLEの各チャンネルにHI/LOの2入力ずつあり、計4つの入力ジャック——をジャンプリード(短いケーブル)でつなぎ、両チャンネルのボリュームをブレンドして厚みと輝きを引き出す使い方をしました。これが今日のモデリング機にも「Jumped」モデルとして残る定番セッティングです。
Angus Young(AC/DC)は、弟のMalcolm Youngによれば、1980年の「Back in Black」録音時にMarshall Lead 50(1987)をソロ用に使用していました。メインの100W Super Leadに加えて「少し温かみを足すために」50Wの1987を重ねており、あのカリッと切れたソロトーンにLead 50の歯切れの良さが貢献していたと言われます。AC/DCのサウンドはMarshall Plexiの代名詞であり、Lead 50(1987)もその伝統に連なるモデルです。
リイシュー版1987Xは1991年頃に登場し、1960年代版よりも攻撃的な1972年製のブライトキャップ値を採用しています。初期モデルにはエフェクトループがなく、生産の過程でエフェクトループが追加され、1987XLではバイパス可能なループが搭載されました。Marshall Forumなどのユーザー間では、Lead 50/1987Xは「極めて大音量」「正午(12時)以上のボリュームで本領を発揮」といった評価が多く、寝室練習や小規模会場ではアッテネーター(電力減衰器)の使用が実質的に推奨されています。
共に使用される機材
共に使用されるキャビネット
- Marshall 1960BX / 1960AX:Celestion G12M-25 Greenback(25Wグリーンバック)を4発搭載した、Lead 50(1987)の純正ペアリングです。グリーンバックの甘いミッドと柔らかい高域がPlexiのクランチと相性抜群で、「オリジナルであり、なお多くのプレイヤーにとって最高の4×12」と評価される定番です。
- Marshall 1960A / 1960B(G12M搭載):Celestion G12M Greenbackを4発搭載しています。アングル(1960A)とストレート(1960B)の両型があり、Lead 50とスタックで使用する際の直球の選択肢です。ヴィンテージ感を求める場合は、プリローラ(1970年代前半以前の)グリーンバック搭載モデルが人気です。
- Marshall 1960TV(Tall Vintage):Celestion G12 Greenbackを4発搭載した、背の高いヴィンテージ型4×12です。Lead 50/1987XのDynaCabマッチングキャビとしてFractal Audioのドキュメントでも言及されており、Plexi時代のキャビ構造に近いです。
共に使用されるエフェクター
- Ibanez Tube Screamer(TS808 / TS9):アンプの前段で信号を軽く歪ませて押し上げるブースターです。Lead 50はマスターボリュームを持たないため、クリーンからクランチまではヴォリュームの開き具合で調整します。Tube Screamerでゲインを足しつつミッドを押し上げる用途は、モダンロックからハードロックまで定番で、芯が立ち、ミックスで抜けるトーンが得られます。
- アッテネーター(Fryette Power Station、Rivera RockCrusherなど):音量を下げつつ真空管の歪みを維持する電力減衰器です。50Wでも十分大音量なため、小規模会場やスタジオで「本気の音量」を出さずにPlexiのサギーやクランチを楽しむには実質必需品とされています。
- アナログディレイ(MXR Carbon Copy、Boss DM-2など):Plexiの甘いミッドと相性が良く、リードプレイの輪唱効果や空間作りに多用されます。リイシュー版ではエフェクトループ経由で使用することが多いです。
兄弟機・派生機
Marshall Super Lead 100(1959)
100W版です。EL34を4本搭載し、Lead 50よりサギーが強く、より「どろりとした」トーンになります。音量と迫力では100Wが上です。
Marshall 1987X(1991年頃)
Lead 50(1987)のヴィンテージリイシューです。1991年頃から生産され、現代の安全規制に適合しています。
Marshall 1987XL
1987Xにバイパス可能なエフェクトループを明示的に搭載した版です。
Marshall 1987XHW
ハンドワイヤード(点対点配線)版のリイシューです。オリジナルの構造に近く、価格は高めです。
Marshall JTM45
35W、KT66採用のモデルです。Lead 50よりクリーン寄りで「ポライト」な印象があり、ブルースやヴィンテージロック向きです。
Marshall JCM800 2204
50W、マスターボリューム付きのモデルです。Lead 50よりゲインが高く、80年代ハードロック向きで、Plexiの「次の世代」にあたります。
モデリング
モデリングとは、実機アンプの音色や挙動をデジタル技術で忠実に再現したもので、本物のアンプを持ち歩かなくてもそのサウンドを手軽に使えるようにした機能です。Marshall Lead 50(1987)は、主要なモデリング機器に広く収録されています。
QUAD CORTEX における収録
| 種別 | モデル名 | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Amp | Brit Plexi 50 Bright | Marshall Lead 50(1987) |
| Amp | Brit Plexi 50 Normal | Marshall Lead 50(1987) |
| Amp | Brit Plexi 50 Patch | Marshall Lead 50(1987) |
| Cabinet | 412 Brit 60B GB ’71 | Marshall 1960B |
| Cabinet | 412 Brit 60B GB 90s | Marshall 1960B |
QUAD CORTEXではLead 50(1987)に相当するアンプは「Brit Plexi 50」シリーズ(Marshall Lead 50ベース)として収録されています。キャビネットの元になった実機は、「412 Brit 60B GB ’71」がCelestion Pulsonic Greenback搭載のMarshall 1960B、「412 Brit 60B GB 90s」がCelestion Greenback搭載の1960Bです。
Fractal Audio Systems における収録
| 種別 | モデル名 | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Amp | 1987X Jumped | Marshall 1987X |
| Amp | 1987X Normal | Marshall 1987X |
| Amp | 1987X Treble | Marshall 1987X |
| Amp | Plexi 50W Jumped / Normal / High 2 | Marshall Lead 50(1987) |
| Cabinet | 4×12 1960TV | Marshall 1960TV |
| Cabinet | 4×12 Basketweave G12M25 | Marshall 4×12 |
| Cabinet | 4×12 1960A G12M | Marshall 4×12 |
Fractal Audioの1987Xモデルは、Marshall 1987X(Lead 50リイシュー)をベースにしており、「1987X Jumped」はチャンネルジャンプ時、「Normal」と「Treble」は各チャンネルに対応します。「Plexi 50W Jumped / Normal / High 2」はブライトキャップ付きのヴィンテージLead 50(1987)が元です。キャビネットは、4×12 1960TVがG12 Greenback搭載のMarshall 1960 TV、4×12 Basketweave G12M25と4×12 1960A G12MがG12M Greenback搭載のMarshall 4×12です。また、1987Xモデルは、リイシュー版1987、ブライトキャップなしのスムーズな歪みが特徴です。ヴィンテージのLead 50(1987)のブライトキャップ付きトーンを求める場合は、Plexi 50W Jumped / Normal / High 2などのモデルが推奨されています。マッチングDynaCabは4×12 1960TVです。
Kemper における収録
Kemperはアンプをプロファイリング(実機をそのまま取り込む)する機器のため、ファクトリーリグではアンプとキャビネットが1つのリグにまとめて収録されています。キャビネット単独のエントリは存在しません。「Marshall 1987x」はLead 50のリイシュー版1987Xを元にしたリグです。
| 種別 | モデル名(RIG NAME) | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Amp | Marshall 1987x | Marshall 1987X |
LINE6 HELIX における収録
| 種別 | モデル名 | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Amp | Brit Plexi Nrm | Marshall Super Lead 100 |
| Amp | Brit Plexi Brt | Marshall Super Lead 100 |
| Amp | Brit Plexi Jump | Marshall Super Lead 100 |
| Cabinet | 4×12 Greenback 25 | Marshall Basketweave 4×12 |
LINE6 HELIXにはLead 50(1987)専用モデルは収録されていません。表のBrit Plexi NrmはNORMALチャンネル、BrtはBRIGHTチャンネル、Jumpはジャンプ接続時のモデルで、4×12 Greenback 25はG12M-25搭載のMarshall Basketweave 4×12が元です。上記は回路が類似するMarshall Super Lead 100(100W版)ベースのBrit Plexiシリーズです。プリアンプ回路は1987と1959でほぼ同一のため、トーン傾向は近く、50W版のタイトさを再現したい場合はEQやPresenceの調整で近似可能です。Lead 50専用キャビネットは収録されていないため、相性の良いキャビネットを掲載しています。
使用アーティスト
海外のアーティスト
- Angus Young(AC/DC)/ハードロック・ロックンロール:カリッとしたリフと歯切れの良いソロが特徴です。1980年「Back in Black」録音時にMarshall Lead 50(1987)をソロ用に使用していました。弟Malcolm Youngの証言によるもので、Ground Guitar、Mixdown等で確認されています。
日本のアーティスト
Marshall Lead 50(1987)およびそのリイシュー1987Xは日本でも正規輸入されており、ロックやハードロックシーンで使用されています。ただし、Lead 50/1987Xをメインアンプとして使用していることが信頼できる情報源で確認できる著名な邦楽アーティストについては、現時点で裏付けが取れていないため、ここでは記載を省略します。
よくある疑問
Super Lead 100(1959)との違いは何ですか?
パワー管の本数と出力が違います。Lead 50(1987)はEL34が2本の50W、Super Lead 100(1959)は4本の100Wで、プリアンプ回路はほぼ同一です。そのため音量と迫力では100W版が上ですが、Lead 50は歯切れが良く、タイトなクランチが得られるとされます。サギーの出方も100W版とは若干異なります。
小音量でも使えますか?
そのままでは難しく、アッテネーターの使用が実質的に推奨されています。マスターボリュームがなく、ヴォリュームを開くほどクランチとサギーが増す設計で、正午(12時)以上で本領を発揮するといわれるためです。Fryette Power StationやRivera RockCrusherなどで音量を下げると、寝室や小規模会場でも真空管の歪みを楽しめます。
QUAD CORTEXなどのモデラーで代用できますか?
はい、代用できます。QUAD CORTEXには「Brit Plexi 50」シリーズが収録されており、Fractal Audioには1987XモデルとPlexi 50W、Kemperには1987xのリグがあります。ただしLINE6 HELIXにはLead 50専用モデルがなく、回路が近いSuper Lead 100ベースのBrit Plexiシリーズで近似することになります。
ユーザーの評価と注意点
評価されている点
- バーキーなハイミッドアタックとスライスするグラインド:Marshall Forumなどの比較では、Lead 50(1987)は1959より「歯切れが良い」「高域ミッドのアタックが鋭い」と評されます。50Wゆえに100W版よりサギーが少なく、タイトでカットの効いたクランチが得られます。ロックのリフやカッティングに適したレスポンスです
- チャンネルジャンプで幅広いトーン:NORMAL(低域寄り)とTREBLE(高域寄り)をジャンプでブレンドする古典的な使い方がそのまま可能です。両方のボリュームのバランスでクリーンからクランチまで自在に調整できます。モデリング機の「Jumped」presetの元ネタです
- ヴィンテージPlexiへの手頃な入口:オリジナルの1987は高騰しており、中古でも£1,200(約20万円)以上です。リイシュー1987Xは新品で約2,300ドル前後、中古なら£600(約10万円)前後で入手可能です。ヴィンテージに近いトーンを「買える価格」で楽しめます
- リイシュー1987Xはブライトキャップなしのスムーズな歪み:Fractal Audioのフォーラムによれば、リイシュー版1987Xはブライトキャップを持たず、最後のトリオードにも0.68µFのバイパスキャップがないため、ややスムーズな歪みになるとされます。過度にキンキンせず、耳に優しいクランチが得られます
注意点
- 極めて大音量で本領発揮:マスターボリュームがなく、ヴォリュームを開くほどクランチとサギーが増す設計です。フォーラムでは「正午以上のボリュームでないと本領を発揮しない」「寝室では実用的でない」という声が繰り返し見られます。小規模会場やスタジオではアッテネーターが実質推奨です
- リイシュー1987Xはブレイクアップが早い(ストック仕様):一部のレビューでは、1987Xはボリュームの半分程度でブレイクアップし始めると報告されています。プリ基板のブライトキャップが原因で、ヴィンテージの1987のように4/5程度までクリーンを保ちたい場合は、キャップ除去などのモッドが行われることがあります
- マスターボリューム非搭載:クリーンとクランチの切り替えは各チャンネルのヴォリュームと入力(HI/LO)で行います。ペダルでのゲインコントロールか、アッテネーターなしでは小音量での「本格Plexi」は困難です
まとめ
Marshall Lead 50(型番1987)は、70年代Plexiの50W版——ロックの原典ともいえるアンプです。100Wの1959より歯切れが良く、タイトなクランチとカットの効いたミッドが特徴です。ロック、ハードロック、ブルースロックなど、Marshallらしい「甘く攻撃的な」トーンを求めるプレイヤーに最適です。
「ヴィンテージPlexiの音が欲しいけど予算は抑えたい」「1959よりタイトで歯切れの良い50Wが欲しい」「Angus Youngのようなカリッとしたクランチが欲しい」という方には特におすすめです。リイシュー1987Xは約2,300ドル前後で入手可能です。QUAD CORTEX、Fractal Audio、Kemper、LINE6 HELIXのいずれにもLead 50/Plexi 50系統のモデリングが収録されており、まずはモデリングでそのトーンを体験してみてください。アッテネーターと組み合わせればスタジオからライブまで幅広く活躍する一生ものです。






