
Marshall Super Lead 100(1959)は、EL34パワー管を4本使った、100Wのオール真空管ギターアンプヘッドです。1966年にイギリス・Marshall社から登場して1981年まで製造され、ヴィンテージリイシュー版は1990年代以降も継続生産されています。
Marshall Super Lead 100(1959)は、1966年から1981年までイギリス・Marshall社が製造した、100Wのオール真空管ギターアンプヘッドです。ザ・フーのピート・タウンゼンドの要望に応えて開発され、EL34パワー管と4入力・2チャンネル・マスターボリュームなしのシンプルな回路が、ロック史上最も象徴的な「プレキシサウンド」を生み出しました。初期モデルにはプレキシグラス(透明プラスチック)のパネルが使われたことから「プレキシ」の愛称で親しまれ、Jimi Hendrix、Eric Clapton、Jimmy Page、Eddie Van Halenらが使用してロックの黄金時代を彩りました。ハードロック、ブルースロック、クラシックロックからメタルまで、「巨大なスタックから轟く甘いクランチと歌うようなオーバードライブ」を求めるプレイヤーにとっての伝説的なアンプです。一言で表すなら、「ロック史を形作った、マスターボリュームなしでフルボリュームで鳴らして初めて本領を発揮する、最も有名なアンプ」——音量と引き換えに得られる圧倒的なダイナミクスとミッドの厚みが魅力です。
「よく見るけど詳しいこと知らないなぁ…」
そんな名機を端的に知って、より楽しむための試みです。
主な特徴とスペック
スペック面の要点は、EL34×4の100W出力とマスターボリュームなしの2チャンネル構成で、エフェクトループもリバーブも持たない潔い設計です。
| メーカー | Marshall(イギリス) |
|---|---|
| 製造期間 | 1966年〜1981年(オリジナル) |
| 出力 | 100W RMS |
| パワー管 | EL34×4 |
| プリ管 | 12AX7×4 |
| 整流管 | GZ34(真空管整流) |
| チャンネル数 | 2(Normal・Bright) |
| コントロール | マスターボリュームなし(各チャンネル5種) |
| インピーダンス出力 | 4Ω / 8Ω / 16Ω 切替対応 |
| パネル | 1967年頃までプレキシグラス、以降は金属 |
| その他 | エフェクトループ・リバーブなし |
| 形状 | ヘッドアンプ(キャビネット別売り) |
製造期間はオリジナルが1966年〜1981年で、ヴィンテージリイシュー版は1990年代以降継続生産されています。パワー管のEL34は英国製アンプに多く使われる真空管で、ミッドレンジが豊かでブリティッシュな音色が特徴です。プリ管の12AX7はプリアンプ用真空管の一種で、整流管のGZ34は真空管整流ならではのサギーで温かみのあるレスポンスを実現します。
チャンネルはNormalとBrightの2つで、4つの入力穴を持ち、ジャンプケーブルで両チャンネルを接続してブレンドする使い方が定番です。コントロールは各チャンネルにVolume、Bass、Middle、Treble、Presenceがあり、マスターボリュームがないため、プリ部とパワー部のボリュームが音色の決め手になります。パネルは1967年頃までがプレキシグラス、以降は金属パネル(JMP時代)です。
1959の名称は開発コードに由来し、Fender Bassmanの回路をベースにKen BranとDudley Cravenが英国向けに改良した設計です。マスターボリュームがないため、歪みを得るにはプリとパワーのボリュームを絞り、アンプを「クランク(フルに近い音量で鳴らす)」必要があり、小音量ではクリーン寄り、大音量でパワー管が飽和して甘いオーバードライブが得られます。Normalチャンネルは低域が豊かで太く、Brightチャンネルは明るくカットの効いたトーンです。両方をジャンプしてブレンドすることで、最も人気のある「プレキシサウンド」になります。
エピソード
1965年、ザ・フーのピート・タウンゼンドが「より大きな音が欲しい」とMarshallに依頼したことが、Super Lead 100開発のきっかけとなりました。当時のFender Bassmanの回路を参考に、Ken BranとDudley Cravenが英国製EL34を採用した100Wアンプを完成させ、1966年にモデル1959として登場しました。プレキシグラスのパネルは当時コスト削減のためでしたが、のちに「プレキシ」の象徴となりました。2本の4×12キャビネットを積み上げた「Marshallスタック」は、ステージで最も目を引く存在となり、ロックの視覚的・音響的アイコンになりました。
Jimi Hendrixは1967年頃からMarshallスタックを使用し、「Purple Haze」や「Voodoo Child」などでの、フィードバックを織り交ぜた野性的なリードトーンでプレキシの可能性を世界に示しました。Hendrixのサウンドは、Super Leadをフルボリュームでクランクし、フェイザーやフランジャー、ファズと組み合わせることで、当時としては前例のない歪みとサステインを実現していました。
Jimmy Page(Led Zeppelin)は、Marshall 1959SLP Super Leadをメインアンプとして使用し、「Whole Lotta Love」や「Heartbreaker」などの名演で知られています。Pageは複数のアンプをミックスする手法も用いていましたが、Marshall Super Leadの厚いミッドとダイナミックなクランチが、Led Zeppelinの重厚で歌うようなギターサウンドの核となっていました。
Eddie Van Halenは、1967〜68年製のMarshall 1959 Super Leadと、Variac(電圧調整器)で電源電圧を下げる手法を組み合わせ、「Brown Sound(ブラウンサウンド)」と呼ばれる伝説的なトーンを確立しました。Van Halenのファーストアルバムから数枚にわたる録音では、このセットアップが核となり、厚みのある歪みと明瞭なアタックが両立した、歯切れの良いリードトーンを生み出しています。
共に使用される機材
共に使用されるキャビネット
- Marshall 1960(1960A / 1960B / 1960TV等):Celestion G12M-25 Greenback(25Wグリーンバック)×4を搭載した、Super Leadと同時代に開発された純正キャビネットです。Greenbackの甘いミッドと適度なコンプレッションがプレキシのクランチと相性抜群で、「Marshallスタック」の定番構成になっています。
- Marshall 1960BV:Celestion Vintage 30×4を搭載しています。V30はよりモダンでハイゲイン寄りのトーンで、1980年代以降のメタル〜ハードロックでMarshallと組み合わせる選択肢として普及しました。
- Marshall 1960A(80年代モデル):Celestion G12T-75×4を搭載し、より明るくハイ・ゲイン寄りです。JCM800時代以降のスタックで多く使われ、プレキシとも組み合わせられます。
共に使用されるエフェクター
- Ibanez Tube Screamer(TS808 / TS9):アンプの前段で信号を軽く歪ませて押し上げるブースターです。マスターボリュームのない1959では、小音量で歪みを得るためにTube Screamerでプリアンプを押し込む手法が定番で、ミッドブーストがMarshallのミッドと相乗効果を生みます。
- MXR M104 Distortion+ / DOD Overdrive Preamp 250:オーバードライブ・ディストーションです。Eddie Van HalenがMarshallと併用しており、アンプのクリーンに軽いゲインを足す、Brown Soundの要素のひとつとして知られています。
- アッテネーター(Fryette Power Station、Ultimate Attenuator等):アンプの出力を減衰させて音量を下げる機材です。100Wをフルで鳴らすのは実用上困難な場合が多いため、パワー管の飽和を維持したまま音量のみ下げる「クランクトーンを小音量で」という用途で人気があります。
兄弟機・派生機
Marshall JTM45
Super Leadの前身にあたります。6L6/KT66パワー管を使用し、Fender Bassman寄りの丸みのあるトーンで、1959よりクリーン寄りで低域が太いのが特徴です。
Marshall 1987(50W Plexi)
Super Leadの50W版です。回路はほぼ同一で、出力が半分になっています。小規模会場やスタジオで「鳴らしやすい1959」として人気があります。
Marshall JMP 1959(1976年頃〜)
パネルがプレキシグラスから金属に変更された後も、回路は1959 Super Leadを継承しています。JMPは「Jim Marshall Products」の略です。
Marshall JCM800 2203(1981年頃)
1981年頃に登場し、マスターボリュームを追加して小音量でも歪みが得られるように進化しました。1959の後継として、ハードロック・メタルの定番になっています。
Marshall 1959SLP Vintage Reissue(1990年代以降)
1990年代以降の正式リイシュー版です。オリジナルに忠実な回路で、新品でプレキシサウンドを手に入れられる現行モデルです。
モデリング
モデリングとは、実機アンプの音色や挙動をデジタル技術で忠実に再現したもので、本物のアンプを持ち歩かなくてもそのサウンドを手軽に使えるようにした機能です。Marshall Super Lead 100(1959)は、主要なモデリング機器に広く収録されている代表的なアンプのひとつです。
QUAD CORTEX における収録
| 種別 | モデル名 | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Amp | Brit Plexi 100 Bright | Marshall Super Lead 100 |
| Amp | Brit Plexi 100 Normal | Marshall Super Lead 100 |
| Amp | Brit Plexi 100 Patch | Marshall Super Lead 100 |
| Cabinet | 412 Brit 60B GB ’71 | Marshall 1960B with Celestion Pulsonic Greenback |
| Cabinet | 412 Brit TV GB75Hz ’69 | Marshall 1960TV with Celestion G12M25 |
Fractal Audio Systems における収録
| 種別 | モデル名 | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Amp | 1959SLP | Marshall 1959 Super Lead(ヴィンテージリイシュー) |
| Amp | 1959SLP Jump | Marshall 1959 Super Lead(ジャンプ接続時) |
| Amp | 1959SLP Normal | Marshall 1959 Super Lead(Normalチャンネル) |
| Amp | 1959SLP Treble | Marshall 1959 Super Lead(Bright/Trebleチャンネル) |
| Cabinet | 4×12 Brit TV | Marshall 1960TV with Celestion G12M-25 Greenback |
Kemper における収録
Kemperはアンプをプロファイリング(実機をそのまま取り込む)する機器のため、ファクトリーリグではアンプとキャビネットが1つのリグにまとめて収録されています。キャビネット単独のエントリは存在しません。
| 種別 | モデル名(RIG NAME) | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Amp | Marshall Super Lead | Marshall Super Lead 100(1959) |
| Amp | Marshall Super Lead 100 | Marshall Super Lead 100(1959) |
| Amp | Marshall Super Lead Plexi | Marshall Super Lead 100(1959 Plexi) |
LINE6 HELIX における収録
| 種別 | モデル名 | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Amp | Brit Plexi Nrm | Marshall Super Lead 100(normal channel) |
| Amp | Brit Plexi Brt | Marshall Super Lead 100(bright channel) |
| Amp | Brit Plexi Jump | Marshall Super Lead 100(jumped) |
| Cabinet | 4×12 Greenback 25 | Marshall Basketweave G12M-25 |
使用アーティスト
海外のアーティスト
- Jimi Hendrix/サイケデリックロック、ブルースロック:フィードバックと歪みを駆使した革新的なギター演奏で知られます。1967年頃よりMarshallスタックをメインで使用し、「Are You Experienced」「Electric Ladyland」などで聴けます。
- Eric Clapton(Cream時代)/ブルースロック、ハードロック:英国の三人組バンドでの大音量アプローチが特徴です。1960年代後半、CreamでMarshallスタックを使用しており、「Disraeli Gears」「Wheels of Fire」などが関連作です。
- Jimmy Page(Led Zeppelin)/ハードロック、ブルースロック:重厚で歌うようなリードトーンが特徴です。Marshall 1959SLP Super Leadをメインアンプとして使用し、「Led Zeppelin II」「Physical Graffiti」などが関連作です。
- Eddie Van Halen(Van Halen)/ハードロック、ヘヴィメタル:ブラウンサウンドとタッピングで知られます。1967〜68年製Marshall 1959 Super LeadをVariacと組み合わせて使用し、「Van Halen」(1978)など初期アルバムで聴けます。
- Pete Townshend(The Who)/ロック、モッド:パワーコードとフィードバックを駆使した演奏が特徴です。Super Lead開発のきっかけを作った本人で、1960年代後半よりMarshallスタックをメインで使用しました。
- Jeff Beck/ロック、インストゥルメンタル:表現力豊かなトーンとテクニックで知られます。1960年代後半よりMarshall Super Leadを使用しています(Wikipedia、Marshall公式等で確認)。
日本のアーティスト
Marshall Super Lead 1959は、国内のスタジオやロックシーンで認知度の高い伝説的アンプです。ただし、Marshall Super Lead 1959をメインアンプとして使用していることが信頼できる情報源で確認できる著名な邦楽アーティストについては、現時点で裏付けが取れていないため、ここでは記載を省略します。
よくある疑問
Marshall 1987やJCM800 2203とはどう違いますか?
いちばんの違いは出力とマスターボリュームの有無です。1987は回路がほぼ同一の50W版で、小規模会場やスタジオで「鳴らしやすい1959」として人気があります。JCM800 2203は1981年頃にマスターボリュームを追加したモデルで、小音量でも歪みが得られるため、1959の後継としてハードロック・メタルの定番になりました。
QUAD CORTEXなどのモデラーで代用できますか?
プレキシサウンドを体験する用途なら、モデラーで十分に代用できます。QUAD CORTEXにはBrit Plexi 100 Bright / Normal / Patch、Fractal Audio Systemsには1959SLP系、LINE6 HELIXにはBrit Plexi Nrm / Brt / Jumpが収録されています。NormalとBrightのジャンプ接続も、別モデルとして選べる機種があります。
マスターボリュームがなくても小音量で使えますか?
実機を小音量で使うのは難しく、工夫が必要です。100Wをフルで鳴らすのは実用上困難な場合が多く、アッテネーターでパワー管の飽和を維持したまま音量だけ下げる方法があります。Tube Screamerなどのブースターでプリアンプを押し込み、小音量で歪みを得る手法も定番です。
ユーザーの評価と注意点
評価されている点
- マスターボリュームなしゆえの圧倒的なダイナミクス:プリとパワーのボリュームが直接つながっており、クランク時にパワー管が飽和することで得られる「甘いオーバードライブ」は、マスターボリューム付きアンプでは再現しづらいものです。The Gear Pageなどのフォーラムでは「nothing sounds like a cranked Plexi」と繰り返し言及される通り、音量と引き換えのトーンが1959の最大の魅力です。
- ジャンプ接続の多用:NormalとBrightの2チャンネルをジャンプケーブルでつなぐことで、低域の厚みと高域のカットを両立した「プレキシの本領」が得られます。多くのモデリング機でも「Jump」モデルが別途収録されています。
- ギターのボリュームとピッキングでトーンをコントロール:アンプのゲインを固定したまま、ギター側のボリュームノブとピッキングの強さでクリーンからオーバードライブまでを表現できます。ヴィンテージロックのプレイスタイルに直結した操作性です。
- 真空管整流(GZ34)のサギーなレスポンス:ソリッドステート整流と比べてアタックが柔らかく、音符が「噛み砕かれる」ような温かみのあるレスポンスで、クラシックロックの「歌う」トーンに寄与しています。
注意点
- マスターボリュームがないため小音量では本領を発揮しない:100Wをフルで鳴らすと実用上困難な場合が多く、寝室練習や小規模ライブではアッテネーターや減衰ボックスがほぼ必須です。フォーラムでは「apartment friendlyではない」「スタジオでも隣の部屋に聞こえる」といった声が多く、音量面が最大の課題です。
- チャンネル切り替えやエフェクトループがない:単純な設計ゆえ、クリーンと歪みの切り替えはギターのボリュームや外付けスイッチャーに依存します。エフェクトループもないため、ディレイやリバーブはフロント投入か、ラインアウト経由の工夫が必要です。
- ヴィンテージは状態にばらつきがある:オリジナルは経年劣化や改造歴によって個体差が大きくなります。リイシュー版を選べば新品で一貫した品質が得られますが、ヴィンテージを求める場合は状態確認が重要です。
まとめ
Marshall Super Lead 100(1959)は、ロック史を形作った「最も有名なアンプ」のひとつです。マスターボリュームなしという一見非実用的な設計が、クランク時にしか得られない圧倒的なダイナミクスと甘いオーバードライブを生み出し、Jimi Hendrix、Jimmy Page、Eddie Van Halenらがその可能性を世界中に示しました。
「プレキシのあのサウンドが欲しい」「クラシックロック〜ハードロックの定番トーンを追求したい」「ギターのボリュームだけでクリーンから歪みまでを表現する演奏スタイルが好き」という方には特におすすめです。実機はヴィンテージでプレミア価格となる場合がありますが、リイシュー版や1987(50W版)も現行で入手可能です。QUAD CORTEX、Fractal Audio、Kemper、LINE6 HELIXのいずれにも1959系のモデリングが収録されているため、まずはモデリングでプレキシの世界観を体験してみてください。音量と引き換えに得られる「あの音」は、今なおロックギターの原点として多くのプレイヤーを魅了し続けています。






