
ギターを始めてしばらくすると「マイナーペンタトニックを覚えるといい」と言われます。実際に覚えて弾いてみると、確かに「外れない」。でも「なぜ外れないのか」を説明できませんでした。
「外れないから使う」のと「外れない理由が分かって使う」のは、実力に大きな差を生みます。この章ではペンタトニックを「省略されたスケール」として理解することで、「外れない理由」を手に入れます。
座学パート:ペンタトニックとは何か
マイナーペンタは「マイナースケールから2音抜いたもの」
ペンタトニック(Pentatonic)の「ペンタ」はギリシャ語で「5」の意味です。5音スケールのことです。
マイナーペンタトニックは、マイナースケール(7音)から2つの音を取り除いた5音スケールです。
| スケール | 1 | 2 | ♭3 | 4 | 5 | ♭6 | ♭7 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| マイナースケール(7音) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| マイナーペンタ(5音) | ○ | — | ○ | ○ | ○ | — | ○ |
取り除かれた音は「2度」と「♭6度」です。これは偶然ではありません。この2音はコードトーン(コードの構成音)とぶつかりやすい音で、特に意識せずに着地すると不安定に聴こえるリスクがあります。それを省いた結果、残った5音は「どこに着地してもそれなりに安定する」音だけになります。これが「外れない」理由の正体です。
メジャーペンタも同じ原理
メジャーペンタトニックはメジャースケールから「4度」と「7度」を抜いた5音です。
| スケール | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| メジャースケール(7音) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| メジャーペンタ(5音) | ○ | ○ | ○ | — | ○ | ○ | — |
平行調の関係:マイナーペンタとメジャーペンタは同じ音
Aマイナーペンタ(A・C・D・E・G)とCメジャーペンタ(C・D・E・G・A)は全く同じ5音です。「3フレット下がメジャーペンタのルート」という関係があります。
| マイナーペンタ | → | 同じ音のメジャーペンタ |
|---|---|---|
| Aマイナーペンタ | → | Cメジャーペンタ(3フレット上) |
| Eマイナーペンタ | → | Gメジャーペンタ |
| Dマイナーペンタ | → | Fメジャーペンタ |
実用上の意味:メジャーキーの曲を弾く時、「3フレット下のマイナーペンタ」で弾いても外れません。AerosmithやLed Zeppelin系の「メジャーキーなのにブルーズっぽい」ソロの正体は、この平行調でペンタを流用するテクニックです。
ブルーノート:ペンタに色をつける1音
マイナーペンタの4度と5度の間に「♭5度」という音を1つ足すと「ブルーノートスケール」になります。
この♭5(ブルーノートとも呼びます)は止まる音ではなく、通り過ぎる音として使います。「4 → ♭5 → 5」というクロマチックな動きが、ブルース・ロックのリフの「あの感じ」の核です。
Aマイナーペンタトニック ポジション1
指板上でAマイナーペンタを最初に覚えるのは「ポジション1」と呼ばれる形です。6弦5フレット(A)から始まる最も基本的なボックスです。 Aマイナーペンタトニック ポジション1 (5〜8フレット) 1弦 2弦 3弦 4弦 5弦 6弦 5fr 6fr 7fr 8fr R ♭3 4 5 ♭7 R ♭3 4 5 ♭7 R ♭3 R(ルート) スケール音 6弦5フレットがA。ルート(赤)の位置を先に覚えて、残りを埋めていく。
ルート(赤丸)の位置を先に覚えます。6弦・4弦・1弦の5フレットが全部A(ルート)です。まずこの3点を体に覚えさせてから、隣の音を埋めていきます。
実践パート:度数を言いながら弾く
所要時間の目安:15〜20分
STEP 1: ポジション1を「形」として覚える
上の指板図を見ながら、ゆっくりと6弦→1弦の順に上っていきます。音名でも音符でもなく、「形」として指板上のパターンを手に覚えさせます。1往復できたら合格です。
STEP 2: 度数を口で言いながら弾く
今度は「ルート・フラット3・4・5・フラット7・ルート…」と口に出しながら弾きます。最初は表を見ながらでいいです。弾きながら「自分が今何度の音を弾いているか」を意識する習慣をつけます。
STEP 3: Amバッキングの上で自由に弾く
YouTubeで「Am backing track」と検索するとバックトラックが大量に出てきます。そのバックトラックの上で、ポジション1の音を使ってランダムに弾いてみます。「外れない」という感覚を体で確認します。
チェックポイント
「ポジション1を上下できて、バックトラックの上で弾いた時に外れないと感じた」なら次章に進んでください。スラスラ弾けなくても構いません——形が頭に入っていれば十分です。
よくある誤解
「ペンタさえ覚えれば何でも弾ける」
ペンタは「外れにくい」だけであって、「自由に弾ける」ことの保証ではありません。ペンタ1つをひたすら使い続けるソロは単調になりがちで、上手い人はそこにコードトーンやスケールの残り2音を混ぜて「言葉にしています」。その話は次章でやります。
「ポジション1だけ覚えれば十分」
ポジション1は強力ですが、覚えた最初に「ポジション1にこもる」という罠があります。高いポジションに移動したり、他のポジションと繋いだりすることでフレーズの幅が出ます。ポジション全体は第8章で扱います。
次章への接続
ペンタが「外れない」理由は分かりました。でも「外れない」と「音楽的に聴こえる」は別の話です。
第7章では「スケールの中の音は全部同じ重みじゃない」という話をします。コードトーン(着地できる音)と経過音(動きのある音)を区別して意識するだけで、ペンタのフレーズが「言葉」のように聴こえ始めます。
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