
Marshall JTM45は、1963年に製造が始まった、Marshall初のオリジナルギターアンプヘッドです。45WのKT66パワー管と真空管整流を備え、2000年代以降はJTM45 2245 Vintage Reissueとして現行品が入手できます。
Marshall JTM45は、1963年にイギリス・Marshall社が製造を開始した、同社初のオリジナルギターアンプヘッドです。名前の「JTM」は創業者Jim Marshallと息子Terry Marshallの頭文字、「45」はRMS定格45Wを表します。Fender Bassman 5F6-Aの回路をベースにKen BranとDudley Cravenが英国向けに改良し、KT66(または初期は6L6)パワー管と真空管整流(GZ34)を採用した設計が、のちのSuper Lead(1959)やプレキシサウンドの礎となりました。Super Leadよりクリーン寄りで丸みがあり、低域が太い「マジェスティックなクリーン」と、押し込んだ時の甘いオーバードライブが魅力です。ブルースロック、クラシックロック、ブルースなど、「1959ほど攻撃的ではないが、Marshallの原点ともいえる温かみのあるトーン」を求めるプレイヤーに向いています。一言で表すなら、「Marshallのルーツ——真空管整流のサギーとKT66の丸みで、ブルースからロックまで幅広く歌う、最初のマーシャル」です。
「よく見るけど詳しいこと知らないなぁ…」
そんな名機を端的に知って、より楽しむための試みです。
主な特徴とスペック
スペック面の要点は、マスターボリュームを持たない2チャンネル構成と、KT66パワー管・GZ34真空管整流の組み合わせです。
| メーカー | Marshall(イギリス) |
|---|---|
| 製造期間 | 1963年〜1966年頃(リイシューは2000年代以降) |
| 出力 | 45W RMS |
| パワー管 | KT66×2(初期モデルは6L6や5881) |
| プリ管 | ECC83(12AX7)×3 |
| 整流管 | GZ34(真空管整流) |
| チャンネル数 | 2(Normal・Bright。4入力でジャンプ接続可能) |
| コントロール | マスターボリュームなし |
| インピーダンス出力 | 4Ω / 8Ω / 16Ω 切替対応 |
| その他 | エフェクトループ・リバーブなし |
| 形状 | ヘッドアンプ(キャビネット別売り) |
パワー管のKT66は英国製のビームパワー管で、丸みと温かみのあるトーンを持ち、EL34より低域が太く柔らかいのが特徴です。プリ管のECC83は12AX7と同じプリアンプ用真空管です。整流管のGZ34は真空管整流のため、サギーでコンプレッションがかかりやすく、柔らかいレスポンスを生みます。Super Lead 1959のソリッドステート整流と異なり、これがJTM45の「ルーズで歌う」キャラクターの要因です。
コントロールは各チャンネルにVolume、Bass、Middle、Treble、Presenceを備え、エフェクトループとリバーブは搭載していません。回路はFender Bassman 5F6-Aを参考に、ネガティブフィードバック等を改良したものです。製造期間は、オリジナルが1963年〜1966年頃で、JTM45 2245 Vintage Reissueは2000年代以降も継続生産されています。
JTM45はFender Bassman 5F6-Aの回路を英国製部品で再現した設計で、12AX7の採用やネガティブフィードバックの調整、Celestionスピーカーを搭載した閉鎖式キャビネットの使用により、Bassmanとは異なる英国風のトーンを確立しました。真空管整流(GZ34)により、Super Lead 1959に比べてサギーが強く、レスポンスが柔らかくコンプレッションがかかりやすいことが特徴です。Normalチャンネルは低域が太く丸い、Brightチャンネルは明るくカットの効いたトーンです。1959より攻撃的なミッドレンジは控えめで、クリーンが「マジェスティック」と称され、歪みはよりブルージーで甘い傾向があります。
エピソード
1962年、ロンドンの楽器店を営んでいたJim Marshallが、地元のギタリストたちから「Fenderより大きな音が欲しい」という要望を受けたことが、JTM45開発のきっかけとなりました。Ken BranとDudley CravenがFender Bassman 5F6-Aの回路を元に6つのプロトタイプを制作し、6つ目が本番用となって1963年9月にEaling Clubで初のライブ演奏が行われました。JTM45は1964年末までに大ヒットし、Marshallの名前をロック史に刻みました。2×12コンボのModel 1962は、Eric ClaptonがJohn Mayall & The Bluesbreakersで使用したことから「Bluesbreaker」の愛称で呼ばれ、ビーンノアルバム(「Blues Breakers with Eric Clapton」、1966年)のサウンドを生み出しました。Jim Marshallによれば、Claptonが車のトランクに積めるサイズを求めたため、1962コンボが開発されたとされています。
Eric Claptonは、Bluesbreakers時代にJTM45回路のModel 1962「Bluesbreaker」コンボでビーンノアルバムを録音し、「英国ブルースロックを開花させたサウンド」として知られています。Cream時代には100W版のJTM45/100(Super 100)へ移行し、全コントロールをフルにしてフィードバックとサステインを駆使した演奏で、JTM45の可能性を世界に示しました。
Jimi Hendrixは、1966年後半に英国に渡った際にJTM45/100(100W版)を購入し、後に1959 Super Leadへと移行しました。Hendrixの初期サウンドには、JTM45/100と1959の両方が関与していたと言われます。またThe Rolling Stones、David Gilmour(Pink Floyd)、Ritchie Blackmore(Deep Purple)らもJTM45やその派生機を使用したことが知られています。
共に使用される機材
共に使用されるキャビネット
- Marshall 1960(1960A / 1960B等):Celestion G12M-25 Greenback(25Wグリーンバック)×4を搭載します。JTM45と同時代に普及したMarshall 4×12で、Greenbackの甘いミッドと適度なコンプレッションが、JTM45の丸みとサギーと相性が良く、クラシックな組み合わせとして定番です。
- Marshall 1960AX / 1960BX:Celestion G12M-25 Greenback×4を搭載する現行の4×12です。JTM45のヴィンテージリイシューや現代的な使用において、定番のペアリングとされています。
- Marshall 1935 / 1960TV(バスケットウィーブ):Celestion G12M Greenback×4を搭載する、1960年代のヴィンテージMarshallキャビネットです。JTM45が登場した時代のキャビネットに近く、温かみのあるトーンが得られます。
共に使用されるエフェクター
- Ibanez Tube Screamer(TS808 / TS9):アンプの前段で信号を軽く歪ませて押し上げるブースターです。JTM45もマスターボリュームがないため、小音量で歪みを得るにはTube Screamerでプリアンプを押し込む手法が有効で、ミッドブーストがJTM45のミッドと相乗効果を生みます。
- オーバードライブ・ブースター全般(Klon、BB Preampなど):クリーンに軽いゲインを足す用途で使われます。JTM45の「マジェスティックなクリーン」をベースに、ブースターで適度に押し込むと、Eric Clapton風のビーンノ〜Cream期のトーンに近づきます。
- アッテネーター(Fryette Power Station、Ultimate Attenuator等):アンプの出力を減衰させて音量を下げる機材です。45Wでも十分に大音量のため、パワー管の飽和を維持したまま音量のみ下げる用途で、使用が推奨されることがあります。
兄弟機・派生機
Marshall Model 1962「Bluesbreaker」
JTM45回路を使った2×12コンボです。Eric Claptonがビーンノアルバムで使用し、愛称の由来になりました。オープンバックでトレモロが付いています。
Marshall JTM45/100(Super 100)
JTM45の100W版で、KT66を4本使用します。Eric Clapton(Cream期)やJimi Hendrixの初期に使用されました。JTM45よりヘッドルームが広く、大音量でよりパワフルです。
Marshall Super Lead 100(1959)
JTM45の後継にあたり、EL34パワー管とソリッドステート整流を採用しています。より攻撃的でタイトなミッドを持ち、JTM45よりハードロック・メタル寄りです。
Marshall JTM45 2245 Vintage Reissue(2000年代以降)
2000年代以降の公式リイシューです。KT66を採用し、オリジナルに忠実な回路で現行品として入手できます。低音量ではクリーン、大音量では自然なオーバードライブが得られるのが特徴です。
モデリング
モデリングとは、実機アンプの音色や挙動をデジタル技術で忠実に再現したもので、本物のアンプを持ち歩かなくてもそのサウンドを手軽に使えるようにした機能です。Marshall JTM45は、主要なモデリング機器の多くに収録されている代表的なアンプのひとつです。
QUAD CORTEX における収録
| 種別 | モデル名 | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Amp | Brit TM45 Bright | Marshall JTM 45 |
| Amp | Brit TM45 Normal | Marshall JTM 45 |
| Amp | Brit TM45 Patch | Marshall JTM 45 |
| Cabinet | 412 Brit 60B GB ’71 | Marshall 1960B with Celestion Pulsonic Greenback |
| Cabinet | 412 Brit TV GB75Hz ’69 | Marshall 1960TV with Celestion G12M25 |
JTM45専用キャビネットは収録されていないため、相性の良いMarshall 1960系キャビネットを掲載しています。
Fractal Audio Systems における収録
Brit JM45 Jumpは、Treble Driveを最小にするとNormalチャンネル相当になります。
| 種別 | モデル名 | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Amp | Brit JM45 | Marshall JTM 45 |
| Amp | Brit JM45 Jump | Marshall JTM 45(ジャンプ接続時) |
| Cabinet | 4×12 Brit TV | Marshall 1960TV with Celestion G12M-25 Greenback |
Kemper における収録
Kemperはアンプをプロファイリング(実機をそのまま取り込む)する機器のため、ファクトリーリグではアンプとキャビネットが1つのリグにまとめて収録されています。キャビネット単独のエントリは存在しません。
| 種別 | モデル名(RIG NAME) | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Amp | Marshall JTM 45 | Marshall JTM 45 |
| Amp | Marshall JTM 45 4*12 | Marshall JTM 45 |
| Amp | Marshall JTM45 | Marshall JTM 45 |
| Amp | Marshall JTM45 Tribute | Marshall JTM 45 |
LINE6 HELIX における収録
| 種別 | モデル名 | 元となった実機 |
|---|---|---|
| Amp | Brit J45 Nrm | Marshall JTM-45(normal channel) |
| Amp | Brit J45 Brt | Marshall JTM-45(bright channel) |
| Cabinet | 4×12 Greenback 25 | Marshall Basketweave G12M-25 |
JTM45専用キャビネットは収録されていないため、相性の良いキャビネットを掲載しています。
使用アーティスト
海外のアーティスト
- Eric Clapton/ブルースロック:Bluesbreakersでは英国ブルースロックの開花、Creamではハードロックへの発展を担いました。Bluesbreakers時代にModel 1962「Bluesbreaker」でビーンノアルバム(1966)を録音し、Cream時代にJTM45/100を使用しています。関連作は「Blues Breakers with Eric Clapton」「Disraeli Gears」「Wheels of Fire」などです。
- Jimi Hendrix/サイケデリックロック、ブルースロック:革新的なギター演奏で知られます。1966年後半にJTM45/100を購入し、後に1959 Super Leadへ移行しました。「Are You Experienced」など初期にJTM45/100を使用しています。
- The Rolling Stones/ロック、ブルースロック:1960年代British Invasionの代表的なバンドです。1960年代にJTM45を使用したと、Wikipedia、Marshall公式等で言及されています。
- David Gilmour(Pink Floyd)/プログレッシブロック:広大なサウンドスケープと歌うようなリードが持ち味です。JTM45を使用したことが、Wikipedia等で言及されています。
- Ritchie Blackmore(Deep Purple)/ハードロック、ヘヴィメタル:クラシカルなリフとネオクラシカルなソロが特徴です。JTM45の初期顧客で、開発にも影響を与えたと言われます(Wikipedia等で言及)。
日本のアーティスト
Marshall JTM45は、国内のスタジオやロック・ブルースシーンで認知度の高いヴィンテージアンプです。ただし、Marshall JTM45をメインアンプとして使用していることが信頼できる情報源で確認できる著名な邦楽アーティストについては、現時点で裏付けが取れていないため、ここでは記載を省略します。
よくある疑問
Super Lead 100(1959)とはどう違いますか?
JTM45のほうがクリーン寄りで、丸みと低域の太さが特徴です。JTM45はKT66パワー管と真空管整流(GZ34)を使い、サギーで柔らかいレスポンスになります。一方、Super Lead 100(1959)はEL34とソリッドステート整流を採用し、より攻撃的でタイトなミッドを持つため、ハードロック・メタル寄りです。
小音量で歪ませるにはどうすればよいですか?
Tube Screamerなどのブースターでプリアンプを押し込む方法が有効です。JTM45にはマスターボリュームがなく、45Wでも十分に大音量のため、歪みを得るにはアンプをクランクする必要があります。パワー管の飽和を維持したまま音量だけ下げたい場合は、アッテネーターの使用が推奨されることがあります。
QUAD CORTEXでJTM45の音は再現できますか?
QUAD CORTEXにはJTM45系のアンプモデルとして、Brit TM45 Bright、Brit TM45 Normal、Brit TM45 Patchが収録されています。JTM45専用のキャビネットは収録されていないため、Marshall 1960系などの4×12キャビネットを組み合わせます。Fractal Audio、Kemper、LINE6 HELIXにも同系統のモデルが収録されています。
ユーザーの評価と注意点
評価されている点
- 真空管整流(GZ34)によるサギーとコンプレッション:ソリッドステート整流のSuper Lead 1959と違い、JTM45は真空管整流によりアタックが柔らかく、音符が「噛み砕かれる」ような温かみのあるレスポンスを持ちます。Marshall Forumなどでは「sag」「compress」と繰り返し言及され、ブルース〜クラシックロックの「歌う」トーンに寄与しています
- マジェスティックなクリーン:1959よりクリーンが美しく、「absolutely majestic」と評されることが多く、歪みよりクリーンでの使用を好むプレイヤーに人気です。押し込んだ時のオーバードライブも甘く、ビーンノアルバムのようなブルージーなクランチが得られます
- KT66の丸みと低域:EL34を使用する1959より低域が太くルーズで、ミッドレンジもニュートラルです。攻撃的なハイミッドは控えめで、より丸く柔らかいキャラクターです
- ジャンプ接続でのブレンド:NormalとBrightの2チャンネルをジャンプケーブルでつなぐことで、低域の厚みと高域のカットを両立した定番のトーンが得られます
注意点
- マスターボリュームがないため小音量では本領を発揮しない:45Wでも十分に大音量で、オーバードライブを得るにはクランク(フルに近い音量で鳴らす)必要があります。寝室練習や小規模ライブではアッテネーターの使用が推奨され、フォーラムでも「音量が課題」という声が多いです
- 1959よりオーバードライブは控えめ:「overdriven tonesでは1959が好まれる」という評価があり、ハードロックやメタル寄りの攻撃的な歪みを求める場合は、1959やJCM800の方が向いています
- 低域がルーズになりやすい:プッシュしすぎると「mushy」「blooms when pushed hard」と表現されることがあり、ベースを絞ったセッティング(Claptonのビーンノ期など)が定番とされています
まとめ
Marshall JTM45は、Marshallの歴史において「最初の一歩」であり、Super Lead(1959)やプレキシサウンドの前身として重要な位置を占めます。Fender Bassmanを英国風にアレンジした回路と真空管整流、KT66の丸みが、1959とは異なる「マジェスティックなクリーン」と甘いブルージーなクランチを生み出し、Eric Claptonのビーンノアルバムをはじめ、ロック史に名を残すサウンドの基盤となりました。
「Marshallのルーツを体験したい」「1959ほど攻撃的ではない、温かみのあるブリティッシュトーンが欲しい」「ブルースロックやクラシックロックの定番トーンを追求したい」という方には特におすすめです。実機のヴィンテージは高価ですが、2245 Vintage Reissueが現行で入手可能です。QUAD CORTEX、Fractal Audio、Kemper、LINE6 HELIXのいずれにもJTM45系のモデリングが収録されているため、まずはモデリングでJTM45の世界観を体験してみてください。真空管整流のサギーとKT66の丸みが織りなす「歌う」トーンは、今なお多くのプレイヤーを魅了し続けています。






